サンプロを見ていたら、これからは資源戦争の時代で、日本ももっと食料自給率を上げないと資源戦争に勝てないというお話をしていたので、日本が手持ちの資源で食料戦争に勝てる可能性を探ってみた。
まず、国民一人当たりの耕地面積と食料自給率の関係を調べてみた。
|
国
|
人口(人)
|
陸地面積(km2)
|
耕地割合(%)
|
耕地面積(km2)
|
一人当たり耕地面積(m2/人)
|
食料自給率(%)
|
|
オーストラリア
|
20,434,176
|
7,617,930
|
6.15
|
468,503
|
22,927
|
237
|
|
カ ナ ダ
|
33,390,141
|
9,093,507
|
4.57
|
415,573
|
12,446
|
145
|
|
フランス
|
64,057,790
|
640,053
|
33.46
|
214,162
|
3,343
|
122
|
|
ド イ ツ
|
82,400,996
|
349,223
|
33.13
|
115,698
|
1,404
|
84
|
|
イタリア
|
58,147,733
|
294,020
|
26.41
|
77,651
|
1,335
|
62
|
|
オランダ
|
16,570,613
|
33,883
|
21.96
|
7,441
|
449
|
58
|
|
スペイン
|
40,448,191
|
499,542
|
27.18
|
135,776
|
3,357
|
89
|
|
スウェーデン
|
9,031,088
|
410,934
|
5.93
|
24,368
|
2,698
|
84
|
|
ス イ ス
|
7,554,661
|
39,770
|
9.91
|
3,941
|
522
|
49
|
|
英 国
|
60,776,238
|
241,590
|
23.23
|
56,121
|
923
|
70
|
|
アメリカ
|
301,139,947
|
9,161,923
|
18.01
|
1,650,062
|
5,479
|
128
|
|
日 本
|
127,433,494
|
374,744
|
11.64
|
43,620
|
342
|
40
|
人口、陸地面積、耕地割合に関しては、CIA で出してる The World Factbook、食料自給率については、農林水産省の「食料自給率資料室」 からデータを取得した。これらはウェブ上で公開されているので、誰でも検証が可能である。ただし、前者のデータは 2007 年頃のもので、後者のデータは 2003 年のものだが、これは他に資料が見つからなかったためなので勘弁いただきたい。耕地面積と一人当たり耕地面積は、これらのデータから単純に計算したものである。
このデータを見ただけでも、一人当たり耕地面積と食料自給率にはかなりの相関がありそうに見えるが、実際に横軸に一人当たりの耕地面積、縦軸に食料自給率をとって、グラフにしてみるとこうなる。
この直線は回帰直線といって、仮にこの両者が正比例の関係にある(つまりグラフ上では直線で表される)と仮定した場合に、実際のデータとの誤差が最も小さくなるような位置と傾きで引かれた直線である。青い点の方は実際の各国のデータなのだが、どの点もかなり回帰直線の近くにある。つまり、各国の食料自給率の差は、かなりの部分耕地面積の差で説明できるということである。
統計の知識のある人のために書いておくと、この両者の相関係数は 0.95 (有意水準 1% 以下で有意)であり、この回帰式の決定係数(寄与率)は 0.90 である。言い換えれば、 食料自給率の 9 割は一人当たり耕地面積で説明できると言うことだ。
もっとも、回帰式が原点を通らないところはかなり気になる(耕地面積ゼロでも食料自給率がゼロにならないということだから(^^)。でも、水産資源まで考えれば辻褄合うのかも)。ひょっとすると、グラフの右の方にあるオーストラリアやカナダは、まだまだ生産効率を上げる余地があって、各国が生産効率限界まで生産すると、もっと食料自給率が上がるのかもしれない。たぶん、オーストラリアやカナダを外れ値として除外して直線を当てはめれば、傾きはもっと急になって、原点近くを通るようになるだろう。(あるいは、直線よりも限界生産性が逓減するような曲線を当てはめた方が本当はいいのかもしれない)。
言うまでもないが、日本は一番左下にある青い点である。この点は回帰直線より下にあるので、日本は確かに耕地面積が狭いことを割り引いても食料自給率が低いということは言えそうである。ただし、逆にこの回帰直線から予想される日本の食料自給率は、約 64% でしかない。
このままではどう見てもわが国には勝ち目がないので、仮に日本の国土すべてを耕作地にしたらどこまで食料自給率が上げられるかを計算してみた。つまり、一人当たり耕地面積の代わりに、一人当たり陸地面積を横軸にとって、それがこの回帰直線とぶつかる点から食料自給率を予想するわけである。もちろんこれは、山も都市もすべてつぶして農地にするということを意味するが、国家存亡の非常時であるからそんなことはかまっていられない。
|
国
|
人口(人)
|
陸地面積(km2)
|
一人当たり陸地面積(m2/人)
|
予想食料自給率(%)
|
|
オーストラリア
|
20,434,176
|
7,617,930
|
372,803
|
2,966
|
|
カ ナ ダ
|
33,390,141
|
9,093,507
|
272,341
|
2,184
|
|
フランス
|
64,057,790
|
640,053
|
9,992
|
139
|
|
ド イ ツ
|
82,400,996
|
349,223
|
4,238
|
94
|
|
イタリア
|
58,147,733
|
294,020
|
5,056
|
101
|
|
オランダ
|
16,570,613
|
33,883
|
2,045
|
77
|
|
スペイン
|
40,448,191
|
499,542
|
12,350
|
158
|
|
スウェーデン
|
9,031,088
|
410,934
|
45,502
|
416
|
|
ス イ ス
|
7,554,661
|
39,770
|
5,264
|
102
|
|
英 国
|
60,776,238
|
241,590
|
3,975
|
92
|
|
アメリカ
|
301,139,947
|
9,161,923
|
30,424
|
299
|
|
日 本
|
127,433,494
|
374,744
|
2,941
|
84
|
これをグラフにするとこうなる。
どうだろう。来るべき食料戦争に勝てそうな気になれたであろうか。
とまあ、少し思わせぶりに書いてみたが、私の本音は、だから日本は近隣アジア諸国を侵略して領土と資源を増やすべし、というのではもちろんなくて(^^)、そもそもこんな戦争勝てるわけねーだろー! やれ経済大国だのジャパン・アズ・ナンバーワンだのと言われ続けた記憶がいまだに忘れられないのかもしれないが、何を勘違いしとんじゃ、目を覚ませー! ということである(^^)。
どうも日本人は、自分たちの国がいかに資源の少ない狭い国土にたくさんの人が住んでいる特異な国かということを、しばしば忘れがちであるように思える。こんな国が資源戦争に乗り出そうというのは、思想をどうこう言う前に戦略として間違っており、将棋で言うところの「筋悪」な手そのものではないだろうか。
思えば、「あの戦争」も、資源のない日本が無理矢理領土を広げて資源を確保しようとしたのが始まりではなかったか。戦後その過ちに気づいた日本人は、資源を増やすことを諦め、貿易によって富を増やすという戦略に転換することによって、奇跡の復活をとげた。なのに日本人は、かつての教訓を忘れ、ふたたび資源戦争に乗り出そうというのだろうか。
最近、サヨク系の人たちが反グローバリズムのあまりウヨク系の人たちと同じ主張をしだすという傾向が見られるが、思えば、大東亜共栄圏とかなんとかいうのだって、実質はともかく、名目上は反グローバリズムの主張だったわけで、だからこそ多くの国民が騙されたわけであろう。どうもそういうことを思い出して嫌な感じがしてしまうのはぼくだけだろうか。
これはぼくの勝手な歴史観だが、多分、冷戦が崩壊したのは、米ソがにらみ合ってるのを尻目に、アメリカの核の傘を利用して無駄な軍事費を使わず平和な商売に専念して大儲けした日本を見て、米ソがバカバカしくなってしまった(あくまで比喩的にだが)のが一因じゃないかと思っている(^^)。そういう意味で、グローバリズムこそが日本の生み出した世界に誇るべき思想なのであって、日本はこの思想に賭けるしかないと思う。
そもそも、資源のある国が資源を囲い込もうとしたり資源戦争だとか言い出したりするのはわかるが、日本のような資源のない国は、あくまでそれをさせないような外交努力をし、グローバリズムこそが世界を平和にするのだと世界に訴え、実際にグローバリズムを通じて世界の人を幸せにする努力をしていくのが本筋であろう。
仮に、そういう努力も虚しく実際に資源の囲い込みが起こったとしても、そうなれば自然に農産物の価格が上昇するはずだから、国内農業の利益率も上昇して、市場原理によって自然に国内農業生産量も増えるだろう。だからいずれにせよ、先回りして先行投資することにそれほど意味があるとも思えないのだが。
あるいは逆に、少子化対策などやめて、日本の人口を今の半分ぐらいに減らし、名実ともに小国として暮らす道を選ぶという手もあるかもね。まあ、どれぐらいの日本人がそれに賛成するかよくわかりませんが(^^)。