HBO「チェルノブイリ」が科学的に間違っている10の点
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「ハウス・オブ・カード」というのは、Netflix制作の政治ドラマです。詳しい説明は他のサイトに譲りますが、その特徴の一つは、政界の権力闘争のダークな面を強調しているところです。ホワイトハウスの政治を扱ったドラマとしては、「ザ・ホワイトハウス」や「マダム・プレジデント」などもありますが、その点がこういった作品との大きな違いです。
そのようなダークな面の中には、世論誘導やマスコミの操作といった面も含まれるので、この作品では当然マスコミが大きな役割を果たしています。
そして面白いことに、ドラマに登場する活字メディアのほとんどは架空なのですが、映像メディアであるテレビ局は実在で、実在のテレビ局の実在のニュースキャスターが、そのまま本人の役で出演しています。これもいろいろ前例はありますが、ここまで徹底してやった作品はあまりないでしょう。またキャスターの所属する放送局も特定の局に限られておらず、代表的な局はだいたい網羅されています。これも特定の放送局にしばられないNetflixの利点の一つかもしれません。
ですが、国際的にも知名度の高い人も多い俳優にくらべると、報道関係者の知名度は国内に留まる傾向があるので、日本の視聴者にはピンとこない人も多いと思います。そこでこの記事では、このドラマ内本人役で登場したニュースキャスターたちを簡単に紹介してみたいと思います。作品鑑賞の一助になれば幸いです。
紹介の中でも触れますが、こういう番組やキャスターは出鱈目に選ばれているわけではなく、登場するシーンの状況に相応しい番組やキャスターが選ばれています。ですから、番組やキャスターの個性を知っていた方が、より深くドラマを理解できるはずです。
もちろん、こんな政治ネタに詳しくなっても、アニメやアイドルや鉄道に詳しい人より偉くなれるわけではありませんが、そういう知識が鑑賞に役立つ作品もあるのは確かなので。
なお、製作総指揮はあのデヴィット・フィンチャーだそうで、そういわれると、無機的な画作りや突き放した演出などに、なんとなくフィンチャー色が感じられるような気もしますね。
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PBSというのは非営利の公共放送局で、イギリスのBBCや日本のNHKに当たる局です。そこで40年以上続いている平日夜のニュース番組が「PBSニュースアワー」です。これは今のNHKで言えば、「ニュースウォッチ9」のような番組と言えるでしょう。
そのアンカーを務めていたのがグウェン・アイフィル氏で、アフリカ系でしかも女性という不利な立場を乗り越えて活躍し、数々の賞を受賞したものすごい偉い人ですが、残念ながら、つい先日癌で亡くなりました。まだ61歳でした。亡くなったときには、オバマ大統領がコメントし、ミシェル夫人が葬儀に参列しました。
ドラマの中では、フランク&クレア対コンウェイ&ブロックハートの討論会の司会をしています。厳しい質問をするときでも決して礼儀や冷静さを忘れないことが氏の信条だったそうですが、この架空の短い討論の中でもその一端を感じ取ることができます。
この人は、ABCで「グッド・モーニング・アメリカ」や「ワールド・ニュース・ウィズ・チャールズ・ギブソン」などの看板番組のアンカーを長年務めていましたが、5年ぐらい前に引退しました。日本で言えば、筑紫哲也クラスの大御所キャスターでしょう。
画面上に表示されているKBTGというのは、ABC系列の地方局の一つのようです。おそらく、ABC引退後の仕事として地方局のキャスターをやっているという設定なのでしょう。
ドラマの中では、フランクの暗殺未遂事件を報じています。画面上にも「PRESIDENT UNDERWOOD SHOT(アンダーウッド大統領狙撃される)」と表示されていますね。
このシーンでは、大御所キャスターの起用により、大統領暗殺未遂という大事件の報道にふさわしい重みが表現されています。「大統領が撃たれると言う事件は、私も過去に経験したことはありますが…」なんていう台詞は、若い人には言えない台詞ですよね。
この人は、ABCの日曜朝の政治討論番組「ディス・ウィーク」のホストです。この番組は、NBCの「ミート・ザ・プレス」と並んで、日曜朝の二大討論番組と言われています。
ステファノプロス氏は、クリントン政権で報道官を務めた経験もある、ABCの名物キャスターです。氏の司会は、わりと司会者が前に出るスタイルで、日本で言えば、田原総一朗さんが昔やってた「サンデー・プロジェクト」とかに近い感じがします(風貌もどことなく田原氏に似てますよね)。
このドラマには2回出てきます。1回目は、フランクがゾーイに書かせたイスラエルに関する記事を根拠にして、国防長官候補のカーンを追い込む役です。舌鋒鋭く追及するところに彼の個性が生かされています。
2回目は、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会を解説する番組の司会です。この番組には、後述のドナ・ブラジルとマシュー・ダウドもコメンテータとして出演しています。
この人は、ワシントンDCにあるABCの系列局の政治記者の方みたいで、私もよく知らないのですが、エミー賞をとったこともある優秀な方のようです。
ドラマの中では、ウォーカー大統領の弾劾について、サヤド記者にインタビューする役をしています。下のキャプチャ画像の右側にサヤド記者が写っています。
この人も、ワシントンDCのABC系列局でキャスターをしている方のようです。真面目そうな風貌がどことなく渡辺宜嗣さん似という感じがします。
このドラマには2回出てきます。1回目は、ゾーイの死亡を報じる役で、上のキャプチャ画像にもゾーイの写真が表示されていますね。2回目は、法律顧問のビル・ギャリックが聴聞会に召喚されたという地味なニュースを報じています。
この人はABCの政治コメンテータです。政治的には、もともと民主党支持だったのが、ブッシュ政権時代に共和党支持に転向し、その後さらに無党派に転向したちょっと変わった人です。
ドラマの中では、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会の後の、ステファノプロス司会の番組でコメントしています。
この人は、40年以上の歴史を持つCBSの超有名ドキュメンタリー番組「60ミニッツ」の記者です。この番組は、日本でもTBSの深夜にピーター・バラカン氏の解説付きで放送していたので、ご存知の方も多いでしょう。「クローズアップ現代」のような調査報道番組というジャンル自体を切り開いた記念碑的番組です。
セイファー氏自身も、ベトナム戦争関連の大スクープで名を挙げ、エミー賞を12回も獲得した超名物記者でしたが、惜しくもつい先日亡くなりました。
とにかくあまりにも有名な番組ので、このドラマに限らず言及されることは多く、たとえば「ダイ・ハード」の途中で殺されるお調子者のエリスという男が「『60ミニッツ』観てるから」みたいな台詞を言うシーンとかがすぐ思い出されます。
ドラマの中では、ウォーカー大統領弾劾の件でフランクを厳しく問い詰める役をしています。セイファー氏のインタビューは、口調は穏やかながら核心を突く鋭い質問をすることで有名で、その個性がドラマにも生かされています。
フランク自身もこう言っています。
Morley, I've always liked you. You ask the tough questions.
モーリー、私は常にあなたを敬愛してきた。あなたは厳しい質問をする人だ。
この人はベテランの政治記者さんです。CNN、FOX NEWSを経て、今はCBSのホワイトハウス担当記者になっています。
ドラマの中では、ウォーカー大統領が資金洗浄のことを知っていた、とタスクが証言した後の、議員や中国の反応を報じています。
この人は、NBC系列で放送されていた「メレディス・ヴィエイラ・ショー」という番組のホストです。この番組は、ニュース番組や政治討論番組というより、ワイドショーや情報バラエティに近いようです。日本で言うと、「王様のブランチ」とか「メレンゲの気持ち」みたいな感じでしょうか。
ヴィエイラ氏も、「ザ・ビュー」とか「トゥデイ」とか、あるいは、「クイズ・ミリオネラ」のアメリカ版「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」とか、数々の人気番組の司会を務めてきた有名な司会者です。
女性で硬軟両方いけるキャスターというのは、日本にはまだそんなにいない気もしますが、強いて言えば、有働由美子さんとか小野文恵さんみたいな感じでしょうか。
ドラマの中では、大統領予備選への出馬を表明したヘザー・ダンバーにインタビューする役を演じています。下のキャプチャ画像の一番左に座っているのがヘザー・ダンバーです。
この人は、「NBCナイトリーニュース」というニュース番組のアンカーです。これは平日夕方の帯番組で、50年近くの歴史を持つNBCの看板番組の一つです。日本で言えば、「スーパーJチャンネル」のような番組と言えるかもしれません。
ホルト氏も長いキャリアを持つベテランのキャスターで、外連味のない安定した進行をする人です。昨年夏には大統領討論会の司会も務めました。
このドラマにはほんの一瞬登場するだけで、顔もあまりはっきり写っていないのですが、上のキャプチャ画像を見るとホルト氏であることがわかります。
ドラマの中では、予備選の途中でフランクと喧嘩して、一人でワシントンに戻ったクレアが見ているテレビの中で、アイオワ州予備選直前のニュースを報じています。
この人は、NBCの日曜朝の政治討論番組「ミート・ザ・プレス」のホストです。この番組は、ABCの「ディス・ウィーク」と並んで、日曜朝の二大討論番組と呼ばれていますが、こちらの方が歴史は古く、始まったのはなんと70年も前です。現存する最長寿番組としてギネスブックにも載っているそうです。
トッド氏は、ステファノプロス氏の身を乗り出した感じに比べると、少し引いた感じの冷静な司会をする印象があります。
ドラマの中では、フランクがアム・ワークスをワシントンDCだけでなく全米に広げるという発表をした後で、二人の議員にインタビューして、アム・ワークスについて肯定的な発言を引き出す役をしています。
この人は、NBCの中堅ぐらいの政治記者さんです。ドラマの中では、社会保障改革案の決議の際の欠席騒動を報じています。出てくるのは、ほんの一瞬、しかもこんな小さな画面にしか出てこないのですが、それだけのために本物の記者さんを使うこだわりには感心します。
この人もNBCの中堅ぐらいの政治記者さんです。ドラマの中では、負傷療養中のダグ・スタンパーが見ているテレビの中で、フランクのアム・ワークス計画に関する憶測を報じています。
この人のことはあまり情報が見当たりませんが、たぶんNBCの系列局でキャスターをしてる人だと思います。このドラマでは、トマス・イェーツの見ているテレビの中で、アム・ワークスがハリケーンのせいで潰れたことを報じる役をしています。
この人は、MSNBCの「ハードボール」という政治討論番組のホストです。これは平日夕方の帯番組で、日本にはあまり似た番組が見当たらないのですが、強いて言えば、国谷さん時代の「クローズアップ現代」でしょうか。
マシューズ氏はもともと政治家志望だったらしく、議員の秘書やスピーチライターなどを経て、40歳ぐらいになってから活字メディアの記者になり、50歳ぐらいで映像メディアに移って「ハードボール」を始めたという人です。
今ではもう70歳を超えていて、キャリア的には政治メディア界の主みたいな人なんですが、歳に似合わずかなりの早口でがんがん突っ込みを入れる元気なおじいちゃんです。
ドラマの中では、サヤド記者からタスクの資金洗浄疑惑についてインタビューする役をしています。
この人は、MSNBCの「レイチェル・マドー・ショー」というニュース番組のホストです。これは夜の帯番組なので、日本で言えば「報道ステーション」なんかに近い位置づけでしょう。
マドー氏は最近頭角を現した次世代のホープで、ニコニコしながら早口で辛辣なコメントを連発する芸風。ゲイであることをカミングアウトしていて、リベラル派と見られています。
個人的にも、最近のキャスターの中では一番頭の切れる人だと思って見ています。昔で言えば久米宏。最近で言えばマツコ・デラックス(生物学的性別は逆ですが)。若手で頭が切れるという意味では、荻上チキさんぐらいのポジションと言ってもいいかもしれません。
ドラマの中では二回登場しています。1回目は、フランクが副大統領になった直後の、次の選挙までのつなぎでしょう、みたいなコメント、2回目は、タスクの資金洗浄疑惑に関するコメントをしていますが、こういう辛辣なコメントをする役には実にぴったりの人です。
この人は、MSNBCの「オール・イン・ウィズ・クリス・ヘイズ」という番組のホストです。これも平日夜の帯番組ですが、ニュース番組というより討論番組です。この番組は2015年のエミー賞を受賞しています。
この人もまだ30代で冠番組を持っているのですから、期待のホープと言ってよいでしょう。元はリベラル系の「The Nation」などの雑誌で政治関係の時論を書いていたそうですが、レイチェル・マドーが休んでいるときに代打でホストを務めたことがきっかけで、今の仕事に抜擢されたそうです。
三白眼のせいで損しているような気もしますが、逆に言えば、一度見ると忘れられないインパクトの強い容貌が特徴です。
ドラマの中では、ミーガン(クレアと同様にマクギニス将軍にレイプされたことをカミングアウトした人)にインタビューする役をしています。下のキャプチャ画像の左側に写っているのがミーガンです。
これはMSNBCの「ザ・サイクル」という平日午後の帯番組で、男女2人ずつのホストが交代で司会をするというちょっと変わった番組です。
左側に映っているのが、そのホストの一人のアリ・メルバ―氏で、MSNBCの政治担当記者です。右側に映っているのが政治コメンテータのペリー・ベーコン氏で、この人はたまたまこの番組に呼ばれたという設定じゃないかなと思います。
ドラマの中では、レイチェルに岩で殴られて病院送りになったダグ・スタンパーが、病院でたまたま観ていたテレビの中で、フランクは大統領になったはいいが、最初から支持率が低くて先が思いやられるね、みたいなコメントをする役です。
この人は、キャリアの長さから言っても、特徴ある白いお髭の顔から言っても、クリスティアーヌ・アマンプールやアンダーソン・クーバーと並ぶ、CNNの顔と言ってよいでしょう。CNNを観たことのある方なら、たいてい見覚えがあるんじゃないでしょうか。現在は、「ザ・シチュエーション・ルーム」という平日夕方の帯番組を主に担当しています。
お歳や見た目のわりには、飄々としたとぼけたところのあるお爺さんで、クリス・マシューズ氏なんかとはかなり芸風が違います。この人は記者出身のせいか、喋りにはそこまで自信がなさそうな感じで、そういう意味では、「NEWS23」の後藤謙次さんなんかと似たタイプと言えるかもしれません。
このドラマには2回登場しています。1回目は、フランク大統領の暗殺未遂事件を報道する役。2回目は、副大統領候補選挙の特番でジョン・キングと選挙の解説する役です。
この人もCNNのベテランの政治記者さんです。このドラマの放送時は「ステート・オブ・ザ・ユニオン」という日曜朝の政治討論番組のアンカーをしていました。今は報道からは引退されて研究者の道に進んだようです。「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のアンカーは、後述のジェイク・タッパー氏が引き継いでいます。
「ステート・オブ・ザ・ユニオン」は、ABCの「ディス・ウィーク」、NBCの「ミート・ザ・プレス」、CBSの「フェイス・ザ・ネイション」、FOXの「フォックス・ニュース・サンデイ」と並んで、日曜朝の5大討論番組と呼ばれていますが、他はみなネットワーク系で、ケーブル系はこの番組だけです。
クローリー氏はこのドラマに二回登場しています。1回目は、教員組合のスピネラとのテレビ討論で、フランクが言葉に詰まって迷走した事件を報道する役。2回目は、セスがクレアとアダムの不倫の証拠写真を偽造だと主張したときの聞き手の役です。一番下の画像で、左側に立っているのがクレア、テレビ画面の中の左手奥に小さく映り込んでいるのがセスです。
この人はCNNの中堅ぐらいのキャスターで、今は「CNNニュースルーム」という番組のホストの一人を務めています。これはCNNのようなニュース専門局によくある、一日中何回も流れる帯番組です。
このドラマでは、ヨルダン渓谷のPKOに参加していたロシア兵が殺されたというニュースを報じています。
この人もCNNの中堅ぐらいのキャスターです。今は「インサイド・ポリティックス」という番組のアンカーを担当していますが、「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のアンカーだったこともあるし、他にもいろんな番組に顔を出します。
このドラマには、なんと3回も登場しています。1回目は、フランクにはめられて失脚したカーンに代わってデュラントが国務長官候補になったというニュースを報じています。
2回目は、アイオワの民主党予備選のフランク、ジャッキー、ヘザーの討論会の司会をしています。3番目のキャプチャ画像を見ると、3人の候補と一緒にキング氏が写っているのがわかります。非常に重要な役ですが、アメリカでは実際にテレビのキャスターがこのような討論会の司会を任されることは珍しくありません。
3回目は、副大統領候補選挙の特番で、ウルフ・ブリッツァーと一緒に選挙の解説役を務めています。このタッチパネルを使った解説はキング氏の得意技とされていて、実際の番組内でもよくやっています。
この人をCNNの人扱いするのは、あまり適切ではないかもしれません。ハーバード大卒で、30代半ばでNBCの「ウィークエンド・トゥデイ」のアンカーになり、30代後半でCNNの看板番組「アメリカ・モーニング」のアンカーになり、40代でもう「スターティング・ポイント・ウィズ・ソルダッド・オブライエン」という冠番組を持ち、最近ではキャスターだけに飽き足らず、番組制作会社の経営まで手掛けるという才人です。
「スターティング・ポイント」は平日朝の帯番組で、日本で言えば、「とくダネ!」や「スッキリ!!」のような位置づけでしょうか。評論家の評価は高かったようですが、視聴率的には苦戦し、1年後に打ち切られてしまいました。打ち切りに関してはいろんな噂もあったようですが、ここでは割愛します。
このドラマでは、ゾーイのデュラントに関する記事がヘラルドの一面に載った後で、ゾーイにインタビューする役をしていますが、単なるヨイショではなく、結構厳しい質問をしているところに彼女の個性が生かされていると思います。
この人は、まだ40代ですが、CNNの姉妹局HLNで「プライムタイム・ジャスティス・ウィズ・アシュレイ・バーンフィールド」という冠番組を持っています。メガネがトレードマークで、認知度は結構高いようです。
バーンフィールド氏は、2000年頃からMSNBCで働いていて、2001年に9.11のアメリカ同時多発テロ事件に遭遇し、現場で実況中継している最中に、リアルタイムでWTCの7号棟が崩落するという経験をし、それで一気に有名になったようです。
その後はイラク戦争の取材に参加し、メディアの戦争報道を批判するような発言をして、NBCから干されたりした経験もあるそうです。だから、見かけによらすと言っては失礼かもしれませんが、なかなか気骨のある記者さんなんですね。
このドラマでは、クレアから過去のレイプ・中絶体験を聞き出すというかなり重要な役を演じています。相当な長時間自然に会話しているように見えますが、俳優さんじゃなくて、記者さんなんですよね。
(「ハウス・オブ・カード」S3E2「第28章」より)
(「ハウス・オブ・カード」S4E9「第48章」より)
この人、二回も登場しているのにアップの画がないのですが、上のキャプチャ画像の二分割画面の左側にいる、マトリックスのエージェント・スミス似の人がジェイク・タッパー氏です。
この人はキャンディ・クローリー氏から「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のホストを引き継いだ人です。他に「ザ・リード・ウィズ・ジェイク・タッパー」という冠番組のホストもしています。
まだ40代で、CNNの看板番組のホストに抜擢され、過去にもいろんな賞を取り、著作がベストセラーになったりもしているので、今後の活躍が期待されるキャスターの一人ではないかと思います。
このドラマには2回登場しています。1回目は、国連大使候補に指名されたクレアが、上院の聴聞会でメンドーサにはめられて失言した後、クレアを支持する議員が激減したというニュースを伝える役です。ここで出演している番組は、「ステート・オブ・ザ・ユニオン」ではなく「ザ・リード」の方でしょう。
2回目は、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後に、それについて論じる討論の司会役をしています。ここで出演している番組は、たぶん「ステート・オブ・ザ・ユニオン」だと思います。
この人もCNNの中堅ぐらいの政治記者さんで、CNNのいろんな番組に登場します。(余談ですが、プライベートでは、同じCNNのジョン・キング氏と結婚しています。)
このドラマでは、国連大使候補に指名されたクレアが、上院の聴聞会でメンドーサにはめられて失言した後、クレアを支持する議員が激減したというニュースを伝える役として、ジェイク・タッパー氏の「ザ・リード」に出演しています。
この人もCNNの記者さんです。まだ40代になったばかりですが、アフガニスタンの戦争やハイチの地震など、過酷な取材の実績を積んできた人で、エミー賞も受賞しています。
ドラマの中では、アイオワの民主党予備選の討論会直前のニュースを報じる役をしています。
この人は、キャスターと言うより政治コメンテータで、特定の放送局に属しているわけではないのですが、CNNに登場することが多いので、便宜的にCNNに分類しました。
ブラジル氏は民主党員で、今では民主党全国委員会(DNC)の委員長というかなりのお偉いさんになっています。今年の選挙では、質問内容を事前にクリントン陣営にメールで教えていたことを、ウィキリークスで暴露されて問題になりました。
このドラマには2回登場しています。1回目は、フランクにはめられて失脚したカーンに代わってデュラントが国務長官候補になったというニュースにコメントしています。番組は「CNNニュースルーム」ですね。
2回目は、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会にコメントする役として、ABCのステファノプロス司会の番組に出演しています。
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、CNNの番組によく出演しているのでCNN系に分類しました。
ビゲイラ氏はもともと、ビル・クリントンのチーフ・ストラテジストをしていた人で、その後コメンテータになりました。だから、基本的に民主党寄りの人ですね。
ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後の、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。
銃についてコメントして保守派のS・E・カップ氏に突っ込まれているのは、ビゲイラ氏がリベラル派であることを生かした演出ですね。
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、CNNの番組によく出演しているのでCNN系に分類しました。
ジョーンズ氏はイェール大学法学部出身で、人権問題や環境問題などさまざまな政治運動に関わり、プリンストン大学の客員研究員を務め、オバマ政権の特別顧問にもなりました。まだ40代ですが、ベストセラーになった著書もあり、さまざまな賞を受賞しています。
ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後の、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。
この人は経歴からわかるように当然リベラル寄りなので、民主党のフランクを擁護する側に回っているのは、それを生かした演出ですね。
この人も、キャスターと言うより政治コメンテータで、特定の放送局に属しているわけではないのですが、このドラマではCNNの番組に出演しているので、CNN系に分類しました。
ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。
この人は保守寄りなので、民主党のフランクに基本的に批判的だったり、銃についてコメントしたビゲイラ氏に突っ込みを入れたりしているのは、それを生かした演出ですね。
右寄りの報道で有名なケーブル局FOX NEWSの「ハニティ」という政治ニュース番組のホストです。平日夜の帯番組ですが、レイチェル・マドー氏の番組よりは遅い時間帯です。日本で言えば、「NEWS ZERO」や「NEWS 23」の右寄りバージョンといったところでしょうか。
ハニティ氏は、保守派ぞろいのFOX NEWSのアンカーの中でも、ビル・オライリー氏の次ぐらいに有名な人じゃないかなと思います。日本で言うと誰でしょう? 辛坊さんあたりかな?
ドラマの中では、タスクの資金洗浄疑惑に関するコメントをしていますが、その後続けて、リベラル派キャスターの代表であるマドー氏がコメントするシーンも入っています。ですから、アメリカのメディア事情を知っている人なら、これを見ただけで、政権が左右両翼から叩かれているということがわかるというわけです。
この人は、右寄りの報道で有名な(しつこい)ケーブル局FOX NEWSの「ザ・リアル・ストーリー・ウィズ・グレッチェン・カールソン」という報道番組のホストでした。この番組は、平日午後の帯番組でしたが、今年の夏で終了しました。
カールソン氏は、この番組の終了後、FOX NEWSのロジャー・エイルズCEOをセクハラで訴えて辞任に追い込み、和解金20億円相当を獲得して話題となりました。
この人も実は、スタンフォード大卒で、1989年のミス・アメリカに選ばれたというユニークな経歴の持ち主です。
ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであることを(おそらくセスのリークによって知って)報じる役をしています。
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、FOX NEWSの番組によく出演しているので、FOX NEWS系に分類しました。
ウィリアムス氏は、FOX NEWSに出演してますが、れっきとした民主党員で、公民権運動やサーグッド・マーシャル(アフリカ系初の最高裁判事)など、主にアフリカ系アメリカ人を主題にしたいろんな本を書いています。
ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであるというニュースにコメントする役をしています。
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、FOX NEWSの番組によく出演しているので、FOX NEWS系に分類しました。
この人は保守派で、しかも、かなり早い時期からトランプ支持を鮮明にしてました。そのせいかどうか知りませんが、当選後に、トランプ政権の国家安全保障会議(NSC)の上級広報戦略部長(senior director of strategic communications)に指名されました。
ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであるというニュースにコメントする役をしています。
(「ハウス・オブ・カード」S2E13「第26章」より)
(「ハウス・オブ・カード」S3E12「第38章」より)
この人はこのドラマ放映当時は、経済ニュース専門局ブルームバーグの記者でしたが、今はCBSに移籍しています。まだ30代ですが、将来を嘱望されている優秀な記者さんのようです。
このドラマには2回登場しています。1回目は、ウォーカー大統領が資金洗浄のことを知っていた、とタスクが証言した後の反響を報じる役、2回目は、アイオワ州の大統領予備選の直前の世論調査を報じる役です。
ついにAl Jazeeraの人まで出てきました。Al Jazeeraというのは、中東カタールを本拠地とする衛星テレビ局で、アラビア語だけでなく英語でも放送をしています。欧米のテレビ局が優位な英語ニュースの世界にあって、孤軍奮闘でイスラム圏アラブの視点からニュースを送り続けている貴重な局です。
この人はAl Jazeeraのいろんなニュース番組に出ている人のようです。歌舞伎役者みたいな押し出しの強い顔で、高橋英樹とか二谷英明とか、最近の日本には少なくなった昔の二枚目って感じですよね。
このドラマでは、ヨルダン渓谷でロシア兵が殺された後、イスラエル軍がヨルダン渓谷に侵入したというニュースを報じています。中東のニュースに関してはAl Jazeeraをチェックする人が多いので、リアリティを求めればこうなるのはわかりますが、アメリカのテレビ局とはまったく系列の違う局にまで協力を求めるこだわりには感心します。
この人はアメリカではかなり有名なコメディアンです。政治家やセレブをネタにしたコントで悪名高い「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」という番組で頭角を現し、その後は数々の冠番組を担当しています。
「デイリーショー」や「サウスパーク」などを放映したコメディ・セントラルと言うコメディ専門のケーブルテレビ局がありますが、そこで作成した「歴代の偉大なスタンドアップ・コメディアン・ランキング」でも21位にランクされています。
政治的には、若い頃はリベラルだったんですが、最近になって保守派に転向したようです。このドラマに出てくる番組も、おそらく、保守派大物キャスターとして有名なビル・オライリーがFOX NEWSでやっている「ザ・オライリー・ファクター」という番組の中の1コーナーの「Miller Time(ミラーの時間)」ではないかと思います。
ドラマの中では、教員組合のスピネラとのテレビ討論で突然に母音がどうこう言いだして迷走したフランクを嘲笑するようなコメントをしています。
普通のキャスターではなくコメディアンがコメントすることで、フランクの失敗の無様さをより強く印象付けていますね。事情に疎い日本の方は、アメリカのキャスターは皆こんなきついこと言うのかと勘違いしたかもしれませんが、彼はあくまで毒舌が芸風のコメディアンなのです。
この人もアメリカではかなり有名なコメディアンです。年齢やキャリアからして、後述のスティーブン・コルベアやジョン・スチュワートがダウンタウンやとんねるずの世代だとすると、この人やデニス・ミラーは明石家さんまや島田紳助ぐらいの世代に相当します。つまり大御所です。
「デイリーショー」や「サウスパーク」などを放映したコメディ・セントラルと言うコメディ専門のケーブルテレビ局がありますが、そこで作成した「歴代の偉大なスタンドアップ・コメディアン・ランキング」では38位にランクされています。
ドラマに出てくる番組は、HBOの「リアル・タイム・ウィズ・ビル・マー」で間違いないでしょう。これはゲストとの討論が主体の番組です。
後述のコルベアの番組なんかもそうですが、ゲストにはオバマやサンダースやマイケル・ムーアなど錚々たるメンバーが来て、結構ガチで討論しています。日本で言えば「テレビ・タックル」みたいな番組ですが、トークの内容はこちらの方が上だろうと個人的には思っています。
ドラマの中では、デニス・ミラーと同様、教員組合のスピネラとのテレビ討論で突然に母音がどうこう言いだして迷走したフランクを嘲笑するようなコメントをしています。
この人はもう、アメリカでは超有名なコメディアン(のはず)です。彼の評価を決定的にした「ザ・コルベア・レポー」という冠番組は、約10年の歴史の中で7回もエミー賞を獲得しています。個人的にも大好きな芸人で、このブログでも過去何回か取り上げています。
この番組でコルベア氏がやっていたのは、要するに、保守派評論家による保守派向け番組のパロディです。たぶん、メインのモデルはずばり、ビル・オライリー氏の「ザ・オライリー・ファクター」でしょう。つまり、オライリー氏が「ザ・オライリー・ファクター」で言いそうなコメントをマネして言う、というのが彼の芸風です。
この芸はかなり微妙な芸で、どのくらい微妙かというと、ある保守派の評論家が、「自分はコルベアが好きだ。なぜなら、自分が考えているのと同じようなことを言ってくれるからだ」と言ったぐらいです。
それだと、単に本物の保守派評論家を観てるのと変わらないんじゃないのか、と思うかもしれませんが、そこにはやはり微妙な誇張があって、その誇張がおかしみを生んでいるのです。極めて繊細で知的な芸だと思います。
このドラマに出てくる番組も「ザ・コルベア・レポー」です。その中でコルベアは、ゲストのフランクのアム・ワークス計画について、「それって社会主義?」みたいな突っ込みを入れていますが、これもまさに保守派が言いそうな典型的な批判をあえてマネして言っているわけです。
それを見てダグ・スタンパーが笑っていますよね。このシーンをコルベアの芸風を知らない人が見ると、フランクが批判されているのを見て喜んでいるなんて、ダグは本当はフランクが嫌いなのか、と深読みしてしまうかもしれませんが、違います。ダグはアメリカ人で政治にもメディアにも詳しいわけですから、当然コルベアの芸風なんか熟知しているに決まっていて、だから笑っているのです。その意味で、このシーンは実は、とてもハイコンテキストなシーンなのです。
「ザ・コルベア・レポー」は残念ながら2015年で終了し、その後コルベアは、これまた有名なコメディアンであるディビッド・レターマンが20年以上も続けていたCBSの「レイト・ショー」のホストを引き継ぎました。ケーブル局のカルト的な番組からネットワーク局の看板番組に移ったわけで、名実ともに超一流のコメディアンの地位を確立したと言えるでしょう。
このコルベアの「レイト・ショー」には、昨年日本の「BAYBYMETAL」というバンドが出演し、スタジオライブを行ったことが話題となりました。そのせいで、コルベアのことを「BAYBYMETALが出演した番組の司会の人でしょ」みたいに認識している日本の方も多いようです。
まあ、別に間違ってはいませんし、どう認識しようと余計なお世話ですが、コルベアってこんなにすごい芸人なんだよ、ということも少しは認識していただけると、私のようなファンとしては嬉しいです。
この3人は、ロシアの実在のミュージシャンであり政治活動家のグループである「プッシー・ライオット」のメンバーです。上のキャブチャ画像の左から、
彼らの政治的主張は、主に、フェミニズム、LGBTの権利、そして、「独裁者」プーチン大統領の批判です。
「プッシー・ライオット」のメンバーは十数人いると言われていますが、基本的に匿名で、演奏の時も目出し帽で顔を隠しています。そのようなスタイルで、無許可でゲリラライブを行い、その模様を動画にしてネットに公開する、というのが彼らの活動のやり方のようです。
2012年には、救世主ハリストス大聖堂でゲリラライブを行ったことが「フーリガン行為」とされ、メンバー3人が逮捕されました。そのうちの2人が、トロコンニコワとアリョーヒナでした。逮捕され裁判にかけられたために、名前が公になったのでしょう。真ん中の男性のベルジロフは、演奏メンバーではありませんが、トロコンニコワの夫で、バンドのスポークスマン的な役割を務めています。
この事件は、政治弾圧や人権侵害の疑いで国際的な問題となり、彼女たちも国際的な有名人になりました。二人は禁固2年の実刑となりましたが、2013年の末に釈放されました。
ドラマの中では、フランクとペトロフとの晩餐会に招待され、席上でペトロフを真っ向から批判して、乾杯のグラスの中身をぶちまけて退出するという役を演じていますが、これはほとんど、彼らの現実の反プーチン活動そのままなわけです。
だから、彼らをこのように実名で登場させるということは、ペトロフのモデルがプーチンであると言っちゃってるようなもので、いいのかよ、という気もしますが、オバマだってウィキリークスの背後にプーチンがいるとか言っちゃってるわけだから、まあいいんでしょうねえ。
実は、彼らの登場シーンはこれだけではなく、この回(S3E3)のエンディングの作曲と演奏も彼らがしています。この曲はなんと、このドラマのために作った新曲だそうです。しかも、この曲はこの回1回しか使われてないわけで、なんと贅沢な演出かと驚かされます。
一番下のキャプチャ画像のアリョーヒナの周囲には、目出し帽をかぶった人がたくさん写ってますが、これこそ「プッシー・ライオット」の演奏スタイルなのです。ちなみに、この作曲と演奏には、後述の「ル・ティグラ」も参加しています。
このバンドは、エレクトロクラッシュと呼ばれるスタイルで、フェミニズムやLGBTをテーマにした歌詞を歌うバンドで、90年代の「ライオット・ガール(Riot grrrl。girlではない)」というムーブメントの流れを汲んでいるそうです。
上のキャプチャ画像の眼鏡と帽子の人が、JD・サムソン(JD Samson)です。ぱっと見、ジェンダー的には男性に見えますが、生物学的には女性です。つまりトランスジェンダーのゲイの人です。
下のキャプチャ画像の中央でマイクを持っている人が(字幕が被さって顔がわかりにくいですが)ジョアンナ・フェイトマン(Johanna Fateman)です。(ちなみに、この人の父親は、リチャード・フェイトマンというコンピュータ科学者で、知る人ぞ知るMacsymaという数式処理システムの開発者です。)
ドラマの中では、前述のプッシー・ライオットと一緒に、S3E3のエンディングを共作・共演しています。ロシアのLGBT差別は、この後の数回のエピソードのテーマの一つになるわけで、プッシー・ライオットとル・ティグラの共演は、まさにそのテーマにぴったりの演出になっているわけです。
ペトロフとの晩餐会でピアノの弾き語りをしているこの人、「The Birth Of The Blues」なんて古いスタンダードを弾いているので、知らない人から見るとよくいる専属のハコバンに見えるかもしれませんが、実はメジャーでCDを何枚も出しているその筋ではかなり有名なミュージシャンです。
まだ18歳の高校生の頃からマンハッタンのクラブで演奏を始め、ニューヨーク・タイムズ紙には「最も将来を嘱望される次世代の弾き語りアーティスト」と評され、デビュー・アルバムはビルボードのジャズ・チャートで1位になりました。
フランクもペトロフも「シンコッティさん」と名指しで呼びかけていますが、それも当然で、それだけ有名な人なのです。
フランクが実はブルースが好きだという設定は、お気に入りのリブ・ステーキ店の店長フレディの家に行った時(S2E9)なんかにも、ちらっと出てきましたよね。
フランクが始球式を務めた野球の試合でアメリカ国歌を歌っているこの人も、「レイク・ストリート・ダイヴ」というバンドでリード・ボーカルを務めているジャズ・シンガーです。
このバンド、一見すると素朴なカントリーバンドにも見えますが、メンバーは全員がニューイングランド音楽院という名門の卒業生であり、「ビートルズとモータウンを融合したような」ポップでなおかつ渋い音楽を目指しているようです。日本でも知る人ぞ知るという感じで、結構ファンは多いようです。
シンコッティ氏もそうですが、こういうわりと誰がやってもよさそうなところでも「知る人ぞ知る」ミュージシャンを使っているところなんかも、贅沢で洒落た演出になっていますね。
冒頭で活字メディアのほとんどは架空の人物と書きましたが、この人だけは例外で、れっきとしたニューヨーク・タイムズ紙の記者さんです。また現在ヤフー・ニュースにも「マット・バイの政治の世界(Matt Bai's Political World)」というコラムを連載しています。
このドラマには2回登場しますが、2回とも役割は同じで、(クレアと同じようにマクギニス将軍にレイプされたことをカミングアウトした)ミーガンに取材する役です。上のキャプチャ画像は、セスから取材の依頼を受けているところ、下のキャプチャ画像はミーガンに取材しているところです。活字メディアの人にしては自然な演技ですよね。
この人はイェール大学の法学部を出た法律家で、オバマ政権で訟務長官という重要なポジションを務めていた人です。訟務長官というのは、アメリカの連邦政府が裁判で訴えられたときなどに、政府の代理人として最高裁で弁論をする役割の人です。
カティヤル氏はインド系であり、アフリカ系初の最高裁判事であるサーグッド・マーシャルに次いで、最高裁で多くの弁論を行ったマイノリティ系の人と言われています。
ドラマの中では、フランクの命令による無人機の攻撃で兵士が負傷した事件について、最高裁判所に訴える役をしています。上のキャプチャ画像の中央がカティヤル氏で、左隣に座っているのがヘザー・ダンバーです。ダンバーはフランク政権の訟務長官ですから、つまり、カティヤル氏が現実に務めていたのと同じポジションの人を演じているわけです。
この記事、書き始めたときはちょっとした小ネタのつもりで、採り上げるのは10数人か多くても20人ぐらいだろうと思っていたんですが、ちゃんと調べていくと出るわ出るわで、結局は50人近くになってしまいました。
こんなことならやるんじゃなかった、と途中で完全に後悔しましたけど、中途半端で止めるのももったいないので、乗り掛かった舟で最後までやりました。
まあ、アメリカのキャスターの紹介記事を日本語で50人分も書いた人はあまりいないでしょうから、なんかしらの存在価値はあるんじゃないでしょうか。
紹介した人の中には、グウェン・アイフィルやモーリー・セイファーのように歴史的偉人クラスの人や、レイチェル・マドーやビル・マーやスティーブン・コルベアのように個人的にファンでよく見ている人もいましたが、なんとなく見覚えがあるだけの人や、まったく知らない人もいました。
そんなわけですから、半分ぐらいは泥縄式で後から調べて書いています。もし間違った記述があれば、コメントなどで指摘していただければ、できる範囲で対処したいと思います。
あと、Wikipediaの英語版を見ると、MSNBCの「モーニング・ジョー」のホストであるジョー・スカーボロが出ているという記述があるのですが、ドラマを何回見直しても出演シーンを発見できませんでした。そのため、今回は残念ながら割愛しています。もし見つかったら追記する予定です。
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気づいた人たくさんいると思いますが、このプリウスの CM の冒頭部分のロケ地は、完全に「デスパレートな妻たち」のウィステリア通りですね。
ウィステリア通りのロケ地は、ハリウッドのユニバーサルスタジオ内にあります。
以上そんだけ。
追記: よく調べたら、数ヶ月前から TOYOTOWN でシリーズ化されてたんですね。最近あんまりテレビ見ないもので気づきませんでした。すんません。もっと詳しいまとめもありました。
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京都アニメーション製作のアニメ「日常」は、さまざまなネタが雑然と並んでいて、どのネタが第何話でどの DVD に収録されているのか、非常に思い出しにくい。そこで、ネタや登場人物から収録 DVD やエピソードを簡単に検索できるような一覧表を Google Doc で作ってみた。
利用目的上、備考欄には内容を思い出せる程度の説明が書かれており、その一部は完全にネタばれになっている。ご了承の上利用いただきたい。
ちなみに、私の好きなキャラは、阪本さんと長野原よしのである。
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前回のついでに、「SHERLOCK」関係の小ネタ。シーズン1の第1話。犯行現場でスコットランド・ヤードの巡査部長サリー・ドノヴァンや鑑識官アンダーソンに軽いイヤミを言われたシャーロックが、ドノヴァンとアンダーソンの不倫を指摘してやり返す場面で、こんな台詞を言っている。
I'm not implying anything. I'm sure Sally came round for a nice little chat and just happened to stay over. And I assume she scrubbed your floor, going by the state of her knees.
別に深い意味はないさ。サリーがおしゃべりに来てたまたま泊まっただけだろ。膝の状態から見て、床でも磨いてもらったのかな。
この「床磨き」の意味に気がついていない人が意外と多いようだ。
純情な私には説明しにくいので、英語のファンサイトからの回答を紹介しよう。クリックすれば回答が読める(ただし英語)。小中学生のよい子は読んじゃだめよ。
(余談)
このドラマ、「ザ・ウーマン」と「ジ・ウーマン」とか、"friends" と "a friend" (just got one)とか、職業柄どう訳せばいいかつい考えてしまう小洒落た表現が多い。DVD の字幕は「あの女」「比類なき女」、「友達はいない」「一人しか」となっていて、なかなか苦労の跡が偲ばれる訳となっている。
このへんの話、私はあまり義務教育で習った記憶がないので一応解説すると、「ジ・ウーマン」というのは、別にウーマンのWを母音と勘違いしたわけではなくて、一種の強調表現なのだ。定冠詞の意味を強調すると、スペルはそのままで発音だけ「ザ」から「ジ」に変わる。不定冠詞の a でも似た現象があって、強調すると「ア」が「エイ」に変わる。だけどこのニュアンスを日本語に訳すのはなかなか難しい。
「大いなるゲーム」の冒頭には、シャーロックが依頼人の英語の下手さにいらだって、三単現や時制の間違いを訂正しまくるなんてシーンもある。英語好きにはそういう意味でも楽しめるドラマだろう。
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「SHERLOCK」は、イギリス BBC 製作のドラマで、NHK BS などでも放映されたので日本でもご存知の方も少なくないだろう。推理小説の古典中の古典シャーロック・ホームズを、現代のロンドンを舞台としてドラマ化したユニークな作品である。
そのシーズン 2 の第 2 話「バスカヴィルの犬(ハウンド)」の DVD コメンタリーの中で、「SHERLOCK」の脚本家の一人でありマイクロフト・ホームズ役として出演もしているマーク・ゲイティスが以下のようなコメントをしている。
Have you ever seen that Sherlock Holmes Jack Russell series? There’s a series where a little dog investigates with a deerstalker hat on. And actually some of them are quite close to the originals, but with a dog! And one of them is Irene Adler! To Sherlock Holmes, she was always a bitch!
(拙訳)シャーロック・ホームズのジャック・ラッセル・シリーズって観たことある? 小犬が(ホームズのトレードマークの)鹿撃ち帽をかぶって捜査するシリーズがあるんだよ。その何作かはかなり原作に近いんだけど、演じているのは犬なんだよ! そしてその内の一人はアイリーン・アドラー。だからシャーロック・ホームズにとって、彼女は常に雌犬(ビッチ)ってわけさ。
このコメントを聞いた日本人の多くは、直感的に宮崎駿監督のアニメ「名探偵ホームズ」を連想したようで、ネットを検索するとその趣旨の発言がいくつも見つかる。実は私自身も宮崎ファンなので、最初に連想したのはやはり「名探偵ホームズ」であった。
しかし、念のため調べてみると、もう一作品有力な候補があることがわかった。それは、アメリカの PBS で放映されていた「Wishbone」という実写ドラマのシリーズだ。
これは、アニメじゃなくて生身のジャック・ラッセル・テリアが、いろんな名作文学の主人公を演じるというシリーズらしく、その中でホームズも数回取り上げられているのだ。
実際、英語で検索してみると、マーク・ゲイティスが言及したのは「名探偵ホームズ」ではなく「Wishbone」だと思っている人の方が多いようである。
いずれにせよ日本人には馴染みの薄い作品なので、どちらが妥当かこれ以上追求するのは難しいかなあ、と思っていたのだが、YouTube を検索してみたら該当作品の動画を発見することができた(合法か違法かは知らないが)。
(訂正:日本には馴染みがないとか書いてしまったが、さらに調べてみると、「夢見る子犬ウィッシュボーン」というタイトルで NHK 教育で放映されていたらしい。私が知らなかっただけだった。ごめんなさい。)
そこで、この動画を含めてネットから入手できる範囲の情報に基づいて、マーク・ゲイティスの言及した作品が「名探偵ホームズ」と「Wishbone」のどちらである可能性が高いか、シャーロックの向こうを張って「推理」してみたいと思う。
「名探偵ホームズ」の主人公は犬種がはっきりしない。現にマーク・ゲイティスの発言から「名探偵ホームズ」を連想した人の中にも、「あれってジャック・ラッセル・テリアだったっけ」みたいな発言をしている人がいる。絶対にジャック・ラッセル・テリアでないとも言えないが、絶対にジャック・ラッセル・テリアであるとも言い難い。一方、「Wishbone」の主人公はジャック・ラッセル・テリアであることが明記されている。
もしマーク・ゲイティスが観たのが「名探偵ホームズ」だとしたら、「シャーロック・ホームズのジャック・ラッセル・シリーズ」などという言い方をするだろうか? 「シャーロック・ホームズを犬が演じるシリーズ」ぐらいの方が自然ではないだろうか?
この点に関する判定:「Wishbone」の勝ち
「Wishbone」はシャーロック・ホームズだけを題材にしたシリーズではない。もともとトムソーヤーだのシラノだのドン・キホーテだのファウストだの、いろんな文学作品を題材にしたシリーズで、その一部としてシャーロック・ホームズも取り上げられているにすぎない。一方、「名探偵ホームズ」は完全にシャーロック・ホームズだけを題材にしたシリーズである。
もしマーク・ゲイティスが観たのが「Wishbone」だとしたら、「シャーロック・ホームズのジャック・ラッセル・シリーズ」などという言い方をするだろうか? 「犬がいろんな文学作品の主人公を演じるシリーズがあって、その中でシャーロック・ホームズも取り上げられている」ぐらいの方が自然ではないだろうか?
この点に関する判定:「名探偵ホームズ」の勝ち
「名探偵ホームズ」はアニメであり、「Wishbone」は実写である。マーク・ゲイティスは自分が観た作品をアニメとも実写とも明言していない。だがもしアニメだったら、ここまで珍しい話のように紹介するだろうか。動物が探偵役を演じるアニメなどそれほど珍しくもないだろう。一方、実写で生身の犬が探偵を演じる作品がそれほど多くないことも想像がつく。珍しい話として紹介するのだったら、「Wishbone」の方がよりふさわしいのではないだろうか?
この点に関する判定:「Wishbone」の勝ち
アイリーン・アドラーというのは、シャーロック・ホームズ全作品の中で、ホームズが唯一まんまと出し抜かれて以後一目置くようになった女性として有名だ。したがってファンの人気も高く派生作品にもよく登場する。
だが、「名探偵ホームズ」にはどうやらアイリーン・アドラーが登場していないらしいのだ。一方、「Wishbone」の中には、「ボヘミアの醜聞」を原作とする「A Dogged Expose」というエピソードがあって(上の YouTube ビデオがそれ)、アイリーン・アドラーも登場する。
この点に関する判定:「Wishbone」の勝ち
マーク・ゲイティスは、自分が観た作品の中ではアイリーン・アドラーも犬だったような発言をしている。ところが、「Wishbone」に登場するアイリーン・アドラーは犬ではないのだ。「Wishbone」で犬が演じているのは基本的に主人公だけで、他の登場人物はみな人間の俳優が演じている。そのことは、上の YouTube ビデオでも確認できる。
ただ、このマーク・ゲイティスの発言自体別の解釈も可能ではある。彼はアイリーン・アドラーが犬だと断言しているわけではなく、シャーロック・ホームズから見ればアイリーン・アドラーは雌犬(ビッチ)だと言っているにすぎない。だから、犬から見れば人間だろうと犬だろうと女性はみんな雌犬だ、とかそんな意味で言っている可能性もなきにしもあらずだろう。
この点に関する判定:「名探偵ホームズ」の勝ち
結局、入手できる範囲の情報からは、マーク・ゲイティスが言及した作品が「名探偵ホームズ」か「Wishbone」か、はっきりと断定することはできなかった。単純に勝星を計算すれば、2 対 3 ということになるが、そんな機械的な方法で決められる事ではないのは言うまでもない。ただ、あのコメンタリーだけで「名探偵ホームズ」と断定するのは早計かもしれないよ、ぐらいのことは言っておきたいと思う。もちろん、そのことが両作品の質の優劣とはまったく無関係であることは言うまでもない。
(おまけ)
ホームズファンには有名な「バリツ」の元ネタとも言われる「Bartitsu」の解説動画を発見したので、ついでに貼っておく。
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「カイジ」の「破戒録篇」に出てきた 456 サイのアイデアが面白かったので、Google Doc 上でいろんな確率を計算してみた。
Google Doc で公開しただけだと、検索にひっかかり難いみたいなので、このブログからもリンクしておくことにする。
ネット上で似たような計算をしてる人はたくさんいるんだけど、配当の確率分布や期待値まできっちり計算してる人は見当たらなかったので、そのへんに興味のある人はチェックする価値があるんじゃないかと思う。
(前に別の記事でも指摘したことがあるが、一般の統計好きの人は、統計分析というと期待値を計算しただけで満足してしまう傾向がある。でも、期待値というのは、確率分布の数多くの属性の一つでしかない。極めて重要な一つではあるが。だから、できれば標準偏差や確率分布そのものまで計算した方が、現象への理解も深まるということを知っておくとよい。)
このページは計算結果を羅列してあるだけなので、分り難いと感じる人も多いかもしれない。時間があれば、もっとわかりやすく整理して書き直すかもしれない。期待しないでお待ちください。
結論だけ引用しておくと、456 サイと普通のサイで勝負したときの、配当の期待値は、
0.896
確率分布は、
である。そう聞くと「なんだ元本割れかよ」と思う人もいるかもしれないが、もちろん違う。
チンチロリンというのは、博打の中では配当のルールが少し特殊で、倍払いや三倍払いといった、掛け金より損害が多い配当がある。だから、期待値を計算する際にも、他の博打のように倍率で計算すると、マイナスの倍率という見慣れない概念を導入しなければならなくなる。
ここではそれを避けるため、倍率ではなく、所持金の増減量が掛け金の何倍かで期待値を測っている。つまり、引き分けが 0、通常の勝ち負けはそれぞれ ±1、倍付け倍払いはそれぞれ ±2、3 倍付け 3 倍払いはそれぞれ ±3 と評価している。
だから、0.896 というのは、平均して掛け金の 0.896 倍を受け取れるという意味で、通常の倍率で言えば 2 倍弱に相当する。 やはり相当割りのいい博打と言える。
456 サイにはピンゾロがないから、意外と得じゃないのでは? と思った人もいるようだが、上のグラフを見ればわかるように、ピンゾロの確率が低過ぎて期待値にはほとんど影響していない。 むしろ、倍付けでもなんでもない目の大小や目無しで勝つ確率の大きさが、最も期待値に影響していることがわかる。このへんも確率分布を計算してみることの効用である。
あと、この計算では、作中には明記されていない仮定をしていることにも注意してほしい。一般的なチンチロリンのルールでは、親がゾロ目や123・456を出した場合には、子がサイを振ることなく親の総取り・総払いで勝敗が決する。したがって、親と子がゾロ目同士などで対決することはあり得ず、その場合にどちらが勝つかのルールは、特に定まっていない。
「カイジ」の「地下チンチロ」では、親の出した目に関わらず子も必ずサイを振るルールなので、この点のルールも定まっているはずだが、作中では詳細は明記されていない(ピンゾロ同士が引き分けというのは黒崎が明言しているが)。ここでは、一般に配当の多い目の方が強いと仮定している。
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シネフィル・イマジカ改め IMAGICA BS で「幸せの1ページ」を鑑賞。
このタイトルとジョディ・フォスター主演ということで、都会的な恋愛物なのかなと思っていたら、完全にジュブナイルだった。子供向けのちょっとコメディタッチの冒険物というか。そうとわかったら、肩の力を抜いて楽しんで見れた。
ジュブナイルと言っても、ジョディ・フォスター演じる引きこもり作家のキャラクターには大人の視点も入っているので、いわゆる「大人のための童話」的な要素もある。最近亡くなった北杜夫さんの作品に「さびしい王様」という名作があるのだが、ああいうのに近いかも。
その手の作品としては、そう悪くない出来だったと思う。少なくとも最後までチャンネルを変えさせないだけの力はあった。こういう作品ってバランス感覚が大事で、あまりリアリズムになり過ぎてもいけないし、かといってフザけすぎても白けてしまう。そのへんのバランスのとり方も、失礼ながらさほど有名でない監督にしてはなかなかうまかった。
ジョディ・フォスターのコメディというのは初めてみたが、わりと頑張っていたのではないか。フォスターの私生活上のゴシップから来るイメージが、配役のイメージと微妙に共振して、誇張されたキャラクターに人間味を与えていたように思う。将来は室井滋のような方向性もありかも、と思わせた。
もっとも、フォスターの引きこもりキャラは、もう少し掘り下げるとさらに面白くなったかも。「助けに来たはずが、結局助けられたんかい!」あたりはお約束と言っていいオチだが、そのへんの喜劇性ももう少し強調してもよかったかも。まあでも頑張っていたと思うよ。
ただ多くの人が指摘しているように、宣伝には問題があったかも。原題は "Nim's Island" なのだから、素直に「ニムの島」にするか、あるいは、原作邦題の「秘密の島のニム」にして、子供向けの冒険物として宣伝すれば、もっと好意的に評価されたのではないか。
追記: ラストに納得してない人が多いみたいだけど、私はあのラストは結構好き。確かに説明がうまく言ってるとは言い難いので、私の解釈で野暮な解説をすると。
アレクサンドラはニムを助けてヒーローになれば引きこもりを克服できると思ったらしいんだけど、実はそれこそが勘違いなんだよね。本当に彼女に必要なことは、ヒーローになることなんかじゃなくて、自分の弱さを認めて素直に自分を投げ出すことだったんだ。
だからこそ、アレックス・ローバーの幻は途中で消えてしまい、アレクサンドラはニムに助けを求めるしかなくなる。そうやって自分を投げ出した結果、アレクサンドラとニムは心が通じ合うことになる。
こうやって解説しちゃうと図式的すぎるけど、そういう話なんだよ。多分。だから、アレクサンドラは役立たずのままでいい。これが変にヒーローになっちゃったりしたら、その方がよっぽどウソ臭い薄っぺらい話になったことだろう。
なんか最終的にはアレクサンドラが活躍するはず、と思って見てた人が多かったんだろうね。だからこそ、「助けようと思ったのに助けられちゃった」みたいなダメさをもっと強調すべきだったと思うんだけど。
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リドリー・スコットってわりと好きな監督なんだけど、前から一つ気になるところがあった。昨日たまたまザ・シネマで「グラディエーター」を見たら、そのことを改めて感じたので書いておく。とっくに誰かが言ってそうなことではあるが。
端的に言うと、リドリー・スコットの最大の欠点は、何でも美しく撮ってしまうことだ。グラディエーターは殺し合いが商売だから、当然残虐なシーンが頻出する。だけど、リドリー・スコットの手にかかると、そんな残酷な殺し合いですらどこか美しい画になってしまう。
私は本来、この題材を取り上げる以上はこういう面を描かねばならない、みたいな考え方は支持しない。でもこの映画においては、殺し合いを見て喜ぶ大衆の残酷性は重要なモチーフになり得たと思う。それをさらに観て喜んでいるのが映画の視聴者である、ということまで意識させればアイロニーも効いてくる。でもリドリー・スコットの画だと、上品過ぎてあまりそういう残酷性を感じさせないのである。
このことは、たとえば「ブラックホーク・ダウン」と「プライベート・ライアン」を比べればよりはっきりする。どちらも扱っているのは近現代の戦争だが、人体を極めて即物的に描くことにより戦争の非情さ描くことに成功したスピルバーグに対し、リドリー・スコットの戦争はどこか美しすぎるのだ。
だから逆に言うと、スピルバーグの偉さの一つは、わざと汚く撮れることなのである。これは下手で失敗して汚い画になっているのとは違う。たとえば「A.I. 」なんかを観ても、ストーリーにはいろいろ突っ込みどころはあると思うが、映像はどこをとっても美しい映像ばかりだ。それは VFX だけの話ではなくて、日常の風景の中で、ガラスに後ろの景色が映りこむようなお得意のカットを見ても、極めて緻密に計算して画面が作られていることがわかる。だから、やろうと思えばいくらでも美しく撮れる人なのだ。
これは名前の似てるソダーバーグなんかにも言えることだと思う。「セックスと嘘とビデオテープ」や「エリン・ブロコビッチ」なんかを観ると、アメリカ郊外の中産階級家庭の野暮ったさみたいなものを、意図的に描いていることがわかる。
金持ちの華やかな生活を描ける人はたくさんいる。逆に社会派で貧乏なスラムの生活なんかを赤裸々に描く人もいる。でも、貧乏というほどでもない郊外の中産階級の微妙な垢抜けなさをうまく描ける人は、実はハリウッドにはそれほど多くないと思う。これは絵画で言えばエドワード・ホッパーなんかに通じるセンスである。 だから何でも美しく撮りゃいいというわけではないのだ。
もちろん、リドリー・スコットの映像の美しさは、それだけでも十分に賞賛に値する能力である。だがそれは場合によっては題材の持ち味を殺してしまう諸刃の剣でもあると思う。
検索してみると、リドリー・スコットは最近堕落したけど昔はよかったみたいに言ってた人がいたけど、私は昔からじゃないかと思う。だから映像美と題材がうまくハマると、相乗効果で「エイリアン」や「ブレードランナー」のような傑作が生まれるが、 ハマらないと「ブラック・レイン」みたいな「映像は美しいけど…」みたいな作品になっちゃったりするわけである。
なぜか日本語の記事にはあまり見当たらないが、英語圏では周知の事実らしい。
毎度のことだが、教養のない人間がろくにサーベイもしないで思いつきで書いていることなのでご容赦いただきたい。まあ正直「それで金稼いでる学者や評論家じゃねえんだから、そんないちいちサーベイとかしてるヒマあるかボケェ」という気持ちもあるが。
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「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」というのは、ファシズムの危機を喧伝する際にネットでよく引用される警句だが、実はかの「デスパレートな妻たち」にも、この警句をもじって引用しているシーンがある。ちょっと面白いので紹介しよう。
Season 4, Episode 5: "Art Isn't Easy" (邦題「近隣トラブル」)より
Lee: "First they came for the fountains, and I did not speak out because I had no fountain."
Lynette: "What?"
Lee: "Then they came for the lawn gnomes, and I did not speak out because I had no gnome."
Lynette: "You're comparing Katherine to a Nazi?"
Lee: "Then they came for my treehouse, and there was no one left to speak out for me."
(字幕には字数制限があるので、逐語訳を付記する)
リー:「彼らが最初に噴水を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は噴水を持っていなかったから。」
リネット:「はあ?」
リー:「彼らが次にノーム人形を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私はノーム人形を持っていなかったから。」
リネット:「あなたキャサリンをナチスに例えてるの?」
リー:「そして彼らが私のツリーハウスを攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。」
リーは実際には「ナチス」という言葉を使っていないのに、リネットは即座に「ナチスに例えてるの?」と察しているし、それに関して視聴者には何の説明もないことからしても、この "First they came for..." という言い回し自体がアメリカではかなり有名であることがわかる。もっとも、リネットはこのドラマの登場人物の中ではインテリの方だという設定なので、その分少し割り引いて考えた方がいいかもしれないけれど。
この警句にそれほど馴染みのない日本の視聴者には、リーの唐突な語りやリネットの極端な反応に違和感を感じた人もいると思うが、こういう有名な警句があってそれを引用しているのだとわかれば納得だろう。このへんが翻訳の難しいところだ。
シーン中の男性二人は、最近このウィステリア通りに引っ越してきたゲイのカップルで、引越し早々自宅の庭に奇妙な噴水を設置する。ところがこの噴水が、景観を破壊し騒音を撒き散らすということで、近所の大顰蹙を買う。そして町内の保守派の代表格であるキャサリンは、町内会(正確には "homeowner's association")の会長になって噴水を撤去すると言い出す。窮地に立ったゲイカップルの二人は、町内のリベラル派の代表格であるリネットを脅して、自分たちの味方につけようとする。それがこのシーンというわけ。
元の警句では、「噴水」や「ノーム人形」のところに、「共産主義者」や「ユダヤ人」みたいな言葉が入るわけだが、比べるとかなりセコイ話になっているところがミソ。つまりこのエピソードは、保守派とリベラル派の対立を、極端に矮小化・戯画化して表現して見せているわけである。
デス妻をよく知らない人がこの話だけ聞くと、リネットのことを額面通りリベラルな人間だと思ってしまうかも知れないので、念のため書いておくけど、この人、別のエピソードでは、近所に引っ越してきた人間を、決定的な証拠もないのにペドフィリアと決め付けて、ペドファイル追放運動に加担してしまったりする。実はそういう極端なところのあるキャラクターなのだ。
そういう風に、キャラクターの思想と行動の一貫性のグダグダさを意地悪く暴いて見せるのも、このドラマの醍醐味の一つである。
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