「ハウス・オブ・カード」にでてくる実在キャスター一覧

ハウス・オブ・カード」というのは、Netflix制作の政治ドラマです。詳しい説明は他のサイトに譲りますが、その特徴の一つは、政界の権力闘争のダークな面を強調しているところです。ホワイトハウスの政治を扱ったドラマとしては、「ザ・ホワイトハウス」や「マダム・プレジデント」などもありますが、その点がこういった作品との大きな違いです。

そのようなダークな面の中には、世論誘導やマスコミの操作といった面も含まれるので、この作品では当然マスコミが大きな役割を果たしています。

そして面白いことに、ドラマに登場する活字メディアのほとんどは架空なのですが、映像メディアであるテレビ局は実在で、実在のテレビ局の実在のニュースキャスターが、そのまま本人の役で出演しています。これもいろいろ前例はありますが、ここまで徹底してやった作品はあまりないでしょう。またキャスターの所属する放送局も特定の局に限られておらず、代表的な局はだいたい網羅されています。これも特定の放送局にしばられないNetflixの利点の一つかもしれません。

ですが、国際的にも知名度の高い人も多い俳優にくらべると、報道関係者の知名度は国内に留まる傾向があるので、日本の視聴者にはピンとこない人も多いと思います。そこでこの記事では、このドラマ内本人役で登場したニュースキャスターたちを簡単に紹介してみたいと思います。作品鑑賞の一助になれば幸いです。

紹介の中でも触れますが、こういう番組やキャスターは出鱈目に選ばれているわけではなく、登場するシーンの状況に相応しい番組やキャスターが選ばれています。ですから、番組やキャスターの個性を知っていた方が、より深くドラマを理解できるはずです。

もちろん、こんな政治ネタに詳しくなっても、アニメやアイドルや鉄道に詳しい人より偉くなれるわけではありませんが、そういう知識が鑑賞に役立つ作品もあるのは確かなので。

なお、製作総指揮はあのデヴィット・フィンチャーだそうで、そういわれると、無機的な画作りや突き放した演出などに、なんとなくフィンチャー色が感じられるような気もしますね。

索引(分野別)

索引(登場順)

注意:以下の記述にはネタバレが含まれます。

PBS

グウェン・アイフィル(Gwen Ifill)

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HOC-S4E12-Gwen-Ifill-3(「ハウス・オブ・カード」S4E12「第51章」より)

PBSというのは非営利の公共放送局で、イギリスのBBCや日本のNHKに当たる局です。そこで40年以上続いている平日夜のニュース番組が「PBSニュースアワー」です。これは今のNHKで言えば、「ニュースウォッチ9」のような番組と言えるでしょう。

そのアンカーを務めていたのがグウェン・アイフィル氏で、アフリカ系でしかも女性という不利な立場を乗り越えて活躍し、数々の賞を受賞したものすごい偉い人ですが、残念ながら、つい先日癌で亡くなりました。まだ61歳でした。亡くなったときには、オバマ大統領がコメントし、ミシェル夫人が葬儀に参列しました。

ドラマの中では、フランク&クレア対コンウェイ&ブロックハートの討論会の司会をしています。厳しい質問をするときでも決して礼儀や冷静さを忘れないことが氏の信条だったそうですが、この架空の短い討論の中でもその一端を感じ取ることができます。


ABC

チャールズ・ギブソン(Charles Gibson)

HOC-S4E4-Charles-Gibson-8(「ハウス・オブ・カード」S4E4「第43章」より)

この人は、ABCで「グッド・モーニング・アメリカ」や「ワールド・ニュース・ウィズ・チャールズ・ギブソン」などの看板番組のアンカーを長年務めていましたが、5年ぐらい前に引退しました。日本で言えば、筑紫哲也クラスの大御所キャスターでしょう。

画面上に表示されているKBTGというのは、ABC系列の地方局の一つのようです。おそらく、ABC引退後の仕事として地方局のキャスターをやっているという設定なのでしょう。

ドラマの中では、フランクの暗殺未遂事件を報じています。画面上にも「PRESIDENT UNDERWOOD SHOT(アンダーウッド大統領狙撃される)」と表示されていますね。

このシーンでは、大御所キャスターの起用により、大統領暗殺未遂という大事件の報道にふさわしい重みが表現されています。「大統領が撃たれると言う事件は、私も過去に経験したことはありますが…」なんていう台詞は、若い人には言えない台詞ですよね。

ジョージ・ステファノプロス(George Stephanopoulos)

HOC-S1E2-George-Stephanopoulos-1(「ハウス・オブ・カード」S1E2「第2章」より)

HOC-S3E11-George-Stephanopoulos-3(「ハウス・オブ・カード」S3E11「第37章」より)

この人は、ABCの日曜朝の政治討論番組「ディス・ウィーク」のホストです。この番組は、NBCの「ミート・ザ・プレス」と並んで、日曜朝の二大討論番組と言われています。

ステファノプロス氏は、クリントン政権で報道官を務めた経験もある、ABCの名物キャスターです。氏の司会は、わりと司会者が前に出るスタイルで、日本で言えば、田原総一朗さんが昔やってた「サンデー・プロジェクト」とかに近い感じがします(風貌もどことなく田原氏に似てますよね)。

このドラマには2回出てきます。1回目は、フランクがゾーイに書かせたイスラエルに関する記事を根拠にして、国防長官候補のカーンを追い込む役です。舌鋒鋭く追及するところに彼の個性が生かされています。

2回目は、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会を解説する番組の司会です。この番組には、後述のドナ・ブラジルとマシュー・ダウドもコメンテータとして出演しています。

スコット・シューマン(Scott Thuman)

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HOC-S2E13-Scott-Thuman-4(「ハウス・オブ・カード」S2E13「第26章」より)

この人は、ワシントンDCにあるABCの系列局の政治記者の方みたいで、私もよく知らないのですが、エミー賞をとったこともある優秀な方のようです。

ドラマの中では、ウォーカー大統領の弾劾について、サヤド記者にインタビューする役をしています。下のキャプチャ画像の右側にサヤド記者が写っています。

モリス・ジョーンズ(Morris Jones)

HOC-S2E1-Morris-Jones-1(「ハウス・オブ・カード」S2E1「第14章」より)

HOC-S2E12-Morris-Jones-3(「ハウス・オブ・カード」S2E12「第25章」より)

この人も、ワシントンDCのABC系列局でキャスターをしている方のようです。真面目そうな風貌がどことなく渡辺宜嗣さん似という感じがします。

このドラマには2回出てきます。1回目は、ゾーイの死亡を報じる役で、上のキャプチャ画像にもゾーイの写真が表示されていますね。2回目は、法律顧問のビル・ギャリックが聴聞会に召喚されたという地味なニュースを報じています。

マシュー・ダウド(Matthew Dowd)

HOC-S3E11-Matthew-Dowd-1(「ハウス・オブ・カード」S3E11「第37章」より)

この人はABCの政治コメンテータです。政治的には、もともと民主党支持だったのが、ブッシュ政権時代に共和党支持に転向し、その後さらに無党派に転向したちょっと変わった人です。

ドラマの中では、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会の後の、ステファノプロス司会の番組でコメントしています。


CBS

モーリー・セイファー(Morley Safer)

HOC-S2E13-Morley-Safer-6(「ハウス・オブ・カード」S2E13「第26章」より)

この人は、40年以上の歴史を持つCBSの超有名ドキュメンタリー番組「60ミニッツ」の記者です。この番組は、日本でもTBSの深夜にピーター・バラカン氏の解説付きで放送していたので、ご存知の方も多いでしょう。「クローズアップ現代」のような調査報道番組というジャンル自体を切り開いた記念碑的番組です。

セイファー氏自身も、ベトナム戦争関連の大スクープで名を挙げ、エミー賞を12回も獲得した超名物記者でしたが、惜しくもつい先日亡くなりました。

とにかくあまりにも有名な番組ので、このドラマに限らず言及されることは多く、たとえば「ダイ・ハード」の途中で殺されるお調子者のエリスという男が「『60ミニッツ』観てるから」みたいな台詞を言うシーンとかがすぐ思い出されます。

ドラマの中では、ウォーカー大統領弾劾の件でフランクを厳しく問い詰める役をしています。セイファー氏のインタビューは、口調は穏やかながら核心を突く鋭い質問をすることで有名で、その個性がドラマにも生かされています。

フランク自身もこう言っています。

Morley, I've always liked you. You ask the tough questions.
モーリー、私は常にあなたを敬愛してきた。あなたは厳しい質問をする人だ。

メジャー・ガレット(Major Garrett)

HOC-S2E13-Major-Garrett-2(「ハウス・オブ・カード」S2E13「第26章」より)

この人はベテランの政治記者さんです。CNN、FOX NEWSを経て、今はCBSのホワイトハウス担当記者になっています。

ドラマの中では、ウォーカー大統領が資金洗浄のことを知っていた、とタスクが証言した後の、議員や中国の反応を報じています。


NBC

メレディス・ヴィエイラ(Meredith Vieira)

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HOC-S3E5-Meredith-Vieira-2(「ハウス・オブ・カード」S3E5「第31章」より)

この人は、NBC系列で放送されていた「メレディス・ヴィエイラ・ショー」という番組のホストです。この番組は、ニュース番組や政治討論番組というより、ワイドショーや情報バラエティに近いようです。日本で言うと、「王様のブランチ」とか「メレンゲの気持ち」みたいな感じでしょうか。

ヴィエイラ氏も、「ザ・ビュー」とか「トゥデイ」とか、あるいは、「クイズ・ミリオネラ」のアメリカ版「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」とか、数々の人気番組の司会を務めてきた有名な司会者です。

女性で硬軟両方いけるキャスターというのは、日本にはまだそんなにいない気もしますが、強いて言えば、有働由美子さんとか小野文恵さんみたいな感じでしょうか。

ドラマの中では、大統領予備選への出馬を表明したヘザー・ダンバーにインタビューする役を演じています。下のキャプチャ画像の一番左に座っているのがヘザー・ダンバーです。

レスター・ホルト(Lester Holt)

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HOC-S3E13-Lester-Holt-4(「ハウス・オブ・カード」S3E13「第39章」より)

この人は、「NBCナイトリーニュース」というニュース番組のアンカーです。これは平日夕方の帯番組で、50年近くの歴史を持つNBCの看板番組の一つです。日本で言えば、「スーパーJチャンネル」のような番組と言えるかもしれません。

ホルト氏も長いキャリアを持つベテランのキャスターで、外連味のない安定した進行をする人です。昨年夏には大統領討論会の司会も務めました。

このドラマにはほんの一瞬登場するだけで、顔もあまりはっきり写っていないのですが、上のキャプチャ画像を見るとホルト氏であることがわかります。

ドラマの中では、予備選の途中でフランクと喧嘩して、一人でワシントンに戻ったクレアが見ているテレビの中で、アイオワ州予備選直前のニュースを報じています。

チャック・トッド(Chuck Todd)

HOC-S3E7-Chuck-Todd-4(「ハウス・オブ・カード」S3E7「第33章」より)

この人は、NBCの日曜朝の政治討論番組「ミート・ザ・プレス」のホストです。この番組は、ABCの「ディス・ウィーク」と並んで、日曜朝の二大討論番組と呼ばれていますが、こちらの方が歴史は古く、始まったのはなんと70年も前です。現存する最長寿番組としてギネスブックにも載っているそうです。

トッド氏は、ステファノプロス氏の身を乗り出した感じに比べると、少し引いた感じの冷静な司会をする印象があります。

ドラマの中では、フランクがアム・ワークスをワシントンDCだけでなく全米に広げるという発表をした後で、二人の議員にインタビューして、アム・ワークスについて肯定的な発言を引き出す役をしています。

ケリー・オドネル(Kelly O'Donnell)

HOC-S2E3-Kelly-ODonnell-5(「ハウス・オブ・カード」S2E3「第16章」より)

この人は、NBCの中堅ぐらいの政治記者さんです。ドラマの中では、社会保障改革案の決議の際の欠席騒動を報じています。出てくるのは、ほんの一瞬、しかもこんな小さな画面にしか出てこないのですが、それだけのために本物の記者さんを使うこだわりには感心します。

クリステン・ウェルカー(Kristen Welker)

HOC-S3E2-Kristen-Welker-1(「ハウス・オブ・カード」S3E2「第28章」より)

この人もNBCの中堅ぐらいの政治記者さんです。ドラマの中では、負傷療養中のダグ・スタンパーが見ているテレビの中で、フランクのアム・ワークス計画に関する憶測を報じています。

・クリス・ローレンス(Chris Lawrence)

HOC-S3E8-Chris-Lawrence-2(「ハウス・オブ・カード」S3E8「第34章」より)

この人のことはあまり情報が見当たりませんが、たぶんNBCの系列局でキャスターをしてる人だと思います。このドラマでは、トマス・イェーツの見ているテレビの中で、アム・ワークスがハリケーンのせいで潰れたことを報じる役をしています。


MSNBC

クリス・マシューズ(Chris Matthews)

HOC-S2E10-Chris-Matthews-1(「ハウス・オブ・カード」S2E10「第23章」より)

この人は、MSNBCの「ハードボール」という政治討論番組のホストです。これは平日夕方の帯番組で、日本にはあまり似た番組が見当たらないのですが、強いて言えば、国谷さん時代の「クローズアップ現代」でしょうか。

マシューズ氏はもともと政治家志望だったらしく、議員の秘書やスピーチライターなどを経て、40歳ぐらいになってから活字メディアの記者になり、50歳ぐらいで映像メディアに移って「ハードボール」を始めたという人です。

今ではもう70歳を超えていて、キャリア的には政治メディア界の主みたいな人なんですが、歳に似合わずかなりの早口でがんがん突っ込みを入れる元気なおじいちゃんです。

ドラマの中では、サヤド記者からタスクの資金洗浄疑惑についてインタビューする役をしています。

レイチェル・マドー(Rachel Maddow)

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HOC-S2E2-Rachel-Maddow-5(「ハウス・オブ・カード」S2E2「第15章」より)

HOC-S2E10-Rachel-Maddow-6(「ハウス・オブ・カード」S2E10「第23章」より)

この人は、MSNBCの「レイチェル・マドー・ショー」というニュース番組のホストです。これは夜の帯番組なので、日本で言えば「報道ステーション」なんかに近い位置づけでしょう。

マドー氏は最近頭角を現した次世代のホープで、ニコニコしながら早口で辛辣なコメントを連発する芸風。ゲイであることをカミングアウトしていて、リベラル派と見られています。

個人的にも、最近のキャスターの中では一番頭の切れる人だと思って見ています。昔で言えば久米宏。最近で言えばマツコ・デラックス(生物学的性別は逆ですが)。若手で頭が切れるという意味では、荻上チキさんぐらいのポジションと言ってもいいかもしれません。

ドラマの中では二回登場しています。1回目は、フランクが副大統領になった直後の、次の選挙までのつなぎでしょう、みたいなコメント、2回目は、タスクの資金洗浄疑惑に関するコメントをしていますが、こういう辛辣なコメントをする役には実にぴったりの人です。

クリス・ヘイズ(Chris Hayes )

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HOC-S2E12-Chris-Hayes-3(「ハウス・オブ・カード」S2E12「第25章」より)

この人は、MSNBCの「オール・イン・ウィズ・クリス・ヘイズ」という番組のホストです。これも平日夜の帯番組ですが、ニュース番組というより討論番組です。この番組は2015年のエミー賞を受賞しています。

この人もまだ30代で冠番組を持っているのですから、期待のホープと言ってよいでしょう。元はリベラル系の「The Nation」などの雑誌で政治関係の時論を書いていたそうですが、レイチェル・マドーが休んでいるときに代打でホストを務めたことがきっかけで、今の仕事に抜擢されたそうです。

三白眼のせいで損しているような気もしますが、逆に言えば、一度見ると忘れられないインパクトの強い容貌が特徴です。

ドラマの中では、ミーガン(クレアと同様にマクギニス将軍にレイプされたことをカミングアウトした人)にインタビューする役をしています。下のキャプチャ画像の左側に写っているのがミーガンです。

アリ・メルバ―&ペリー・ベーコン(Ari Melber & Perry Bacon)

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HOC-S3E1-Ari-Melber-and-Perry-Bacon-4(「ハウス・オブ・カード」S3E1「第27章」より)

これはMSNBCの「ザ・サイクル」という平日午後の帯番組で、男女2人ずつのホストが交代で司会をするというちょっと変わった番組です。

左側に映っているのが、そのホストの一人のアリ・メルバ―氏で、MSNBCの政治担当記者です。右側に映っているのが政治コメンテータのペリー・ベーコン氏で、この人はたまたまこの番組に呼ばれたという設定じゃないかなと思います。

ドラマの中では、レイチェルに岩で殴られて病院送りになったダグ・スタンパーが、病院でたまたま観ていたテレビの中で、フランクは大統領になったはいいが、最初から支持率が低くて先が思いやられるね、みたいなコメントをする役です。


CNN

ウルフ・ブリッツァー(Wolf Blitzer)

HOC-S4E4-Wolf-Blitzer-4(「ハウス・オブ・カード」S4E4「第43章」より)

HOC-S4E10-Wolf-Blitzer-1(「ハウス・オブ・カード」S4E10「第49章」より)

この人は、キャリアの長さから言っても、特徴ある白いお髭の顔から言っても、クリスティアーヌ・アマンプールアンダーソン・クーバーと並ぶ、CNNの顔と言ってよいでしょう。CNNを観たことのある方なら、たいてい見覚えがあるんじゃないでしょうか。現在は、「ザ・シチュエーション・ルーム」という平日夕方の帯番組を主に担当しています。

お歳や見た目のわりには、飄々としたとぼけたところのあるお爺さんで、クリス・マシューズ氏なんかとはかなり芸風が違います。この人は記者出身のせいか、喋りにはそこまで自信がなさそうな感じで、そういう意味では、「NEWS23」の後藤謙次さんなんかと似たタイプと言えるかもしれません。

このドラマには2回登場しています。1回目は、フランク大統領の暗殺未遂事件を報道する役。2回目は、副大統領候補選挙の特番でジョン・キングと選挙の解説する役です。

キャンディ・クローリー(Candy Crowley

HOC-S1E6-Candy-Crowley-5(「ハウス・オブ・カード」S1E6「第6章」より)

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HOC-S2E9-Candy-Crowley-5(「ハウス・オブ・カード」S2E9「第22章」より)

この人もCNNのベテランの政治記者さんです。このドラマの放送時は「ステート・オブ・ザ・ユニオン」という日曜朝の政治討論番組のアンカーをしていました。今は報道からは引退されて研究者の道に進んだようです。「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のアンカーは、後述のジェイク・タッパー氏が引き継いでいます。

ステート・オブ・ザ・ユニオン」は、ABCの「ディス・ウィーク」、NBCの「ミート・ザ・プレス」、CBSの「フェイス・ザ・ネイション」、FOXの「フォックス・ニュース・サンデイ」と並んで、日曜朝の5大討論番組と呼ばれていますが、他はみなネットワーク系で、ケーブル系はこの番組だけです。

クローリー氏はこのドラマに二回登場しています。1回目は、教員組合のスピネラとのテレビ討論で、フランクが言葉に詰まって迷走した事件を報道する役。2回目は、セスがクレアとアダムの不倫の証拠写真を偽造だと主張したときの聞き手の役です。一番下の画像で、左側に立っているのがクレア、テレビ画面の中の左手奥に小さく映り込んでいるのがセスです。

キャロル・コステロ(Carol Costello)

HOC-S3E9-Carol-Costello-3(「ハウス・オブ・カード」S3E9「第35章」より)

この人はCNNの中堅ぐらいのキャスターで、今は「CNNニュースルーム」という番組のホストの一人を務めています。これはCNNのようなニュース専門局によくある、一日中何回も流れる帯番組です。

このドラマでは、ヨルダン渓谷のPKOに参加していたロシア兵が殺されたというニュースを報じています。

ジョン・キング(John King)

HOC-S1E2-John-King-2(「ハウス・オブ・カード」S1E2「第2章」より)

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HOC-S3E11-John-King-6(「ハウス・オブ・カード」S3E11「第37章」より)

HOC-S4E10-John-King-3(「ハウス・オブ・カード」S4E10「第49章」より)

この人もCNNの中堅ぐらいのキャスターです。今は「インサイド・ポリティックス」という番組のアンカーを担当していますが、「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のアンカーだったこともあるし、他にもいろんな番組に顔を出します。

このドラマには、なんと3回も登場しています。1回目は、フランクにはめられて失脚したカーンに代わってデュラントが国務長官候補になったというニュースを報じています。

2回目は、アイオワの民主党予備選のフランク、ジャッキー、ヘザーの討論会の司会をしています。3番目のキャプチャ画像を見ると、3人の候補と一緒にキング氏が写っているのがわかります。非常に重要な役ですが、アメリカでは実際にテレビのキャスターがこのような討論会の司会を任されることは珍しくありません。

3回目は、副大統領候補選挙の特番で、ウルフ・ブリッツァーと一緒に選挙の解説役を務めています。このタッチパネルを使った解説はキング氏の得意技とされていて、実際の番組内でもよくやっています。

ソルダッド・オブライエン(Soledad O'Brien)

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HOC-S1E3-Soledad-OBrien-5(「ハウス・オブ・カード」S1E3「第3章」より)

この人をCNNの人扱いするのは、あまり適切ではないかもしれません。ハーバード大卒で、30代半ばでNBCの「ウィークエンド・トゥデイ」のアンカーになり、30代後半でCNNの看板番組「アメリカ・モーニング」のアンカーになり、40代でもう「スターティング・ポイント・ウィズ・ソルダッド・オブライエン」という冠番組を持ち、最近ではキャスターだけに飽き足らず、番組制作会社の経営まで手掛けるという才人です。

スターティング・ポイント」は平日朝の帯番組で、日本で言えば、「とくダネ!」や「スッキリ!!」のような位置づけでしょうか。評論家の評価は高かったようですが、視聴率的には苦戦し、1年後に打ち切られてしまいました。打ち切りに関してはいろんな噂もあったようですが、ここでは割愛します。

このドラマでは、ゾーイのデュラントに関する記事がヘラルドの一面に載った後で、ゾーイにインタビューする役をしていますが、単なるヨイショではなく、結構厳しい質問をしているところに彼女の個性が生かされていると思います。

アシュレイ・バーンフィールド(Ashleigh Banfield)

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HOC-S2E4-Ashleigh-Banfield-3(「ハウス・オブ・カード」S2E4「第17章」より)

この人は、まだ40代ですが、CNNの姉妹局HLNで「プライムタイム・ジャスティス・ウィズ・アシュレイ・バーンフィールド」という冠番組を持っています。メガネがトレードマークで、認知度は結構高いようです。

バーンフィールド氏は、2000年頃からMSNBCで働いていて、2001年に9.11のアメリカ同時多発テロ事件に遭遇し、現場で実況中継している最中に、リアルタイムでWTCの7号棟が崩落するという経験をし、それで一気に有名になったようです。

その後はイラク戦争の取材に参加し、メディアの戦争報道を批判するような発言をして、NBCから干されたりした経験もあるそうです。だから、見かけによらすと言っては失礼かもしれませんが、なかなか気骨のある記者さんなんですね。

このドラマでは、クレアから過去のレイプ・中絶体験を聞き出すというかなり重要な役を演じています。相当な長時間自然に会話しているように見えますが、俳優さんじゃなくて、記者さんなんですよね。

ジェイク・タッパー(Jake Tapper)

HOC-S3E2-Dana-Bash-and-Jake-Tapper-3(「ハウス・オブ・カード」S3E2「第28章」より)HOC-S4E9-Jake-Tapper-Paul-Begala-Van-Jones-S-E-Cupp-2(「ハウス・オブ・カード」S4E9「第48章」より)

この人、二回も登場しているのにアップの画がないのですが、上のキャプチャ画像の二分割画面の左側にいる、マトリックスのエージェント・スミス似の人がジェイク・タッパー氏です。

この人はキャンディ・クローリー氏から「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のホストを引き継いだ人です。他に「ザ・リード・ウィズ・ジェイク・タッパー」という冠番組のホストもしています。

まだ40代で、CNNの看板番組のホストに抜擢され、過去にもいろんな賞を取り、著作がベストセラーになったりもしているので、今後の活躍が期待されるキャスターの一人ではないかと思います。

このドラマには2回登場しています。1回目は、国連大使候補に指名されたクレアが、上院の聴聞会でメンドーサにはめられて失言した後、クレアを支持する議員が激減したというニュースを伝える役です。ここで出演している番組は、「ステート・オブ・ザ・ユニオン」ではなく「ザ・リード」の方でしょう。

2回目は、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後に、それについて論じる討論の司会役をしています。ここで出演している番組は、たぶん「ステート・オブ・ザ・ユニオン」だと思います。

デイナ・バッシュ(Dana Bash)

HOC-S3E2-Dana-Bash-4(「ハウス・オブ・カード」S3E2「第28章」より)

この人もCNNの中堅ぐらいの政治記者さんで、CNNのいろんな番組に登場します。(余談ですが、プライベートでは、同じCNNのジョン・キング氏と結婚しています。)

このドラマでは、国連大使候補に指名されたクレアが、上院の聴聞会でメンドーサにはめられて失言した後、クレアを支持する議員が激減したというニュースを伝える役として、ジェイク・タッパー氏の「ザ・リード」に出演しています。

ミシェル・コシンスキ―(Michelle Kosinski)

HOC-S3E11-Michelle-Kosinski-1(「ハウス・オブ・カード」S3E11「第37章」より)

この人もCNNの記者さんです。まだ40代になったばかりですが、アフガニスタンの戦争やハイチの地震など、過酷な取材の実績を積んできた人で、エミー賞も受賞しています。

ドラマの中では、アイオワの民主党予備選の討論会直前のニュースを報じる役をしています。

ドナ・ブラジル(Donna Brazile)

HOC-S1E2-Donna-Brazile-1(「ハウス・オブ・カード」S1E2「第2章」より)

HOC-S3E11-Donna-Brazile-1(「ハウス・オブ・カード」S3E11「第37章」より)

この人は、キャスターと言うより政治コメンテータで、特定の放送局に属しているわけではないのですが、CNNに登場することが多いので、便宜的にCNNに分類しました。

ブラジル氏は民主党員で、今では民主党全国委員会(DNC)の委員長というかなりのお偉いさんになっています。今年の選挙では、質問内容を事前にクリントン陣営にメールで教えていたことを、ウィキリークスで暴露されて問題になりました。

このドラマには2回登場しています。1回目は、フランクにはめられて失脚したカーンに代わってデュラントが国務長官候補になったというニュースにコメントしています。番組は「CNNニュースルーム」ですね。

2回目は、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会にコメントする役として、ABCのステファノプロス司会の番組に出演しています。

ポール・ビゲイラ(Paul Begala)

HOC-S4E9-Paul-Begala(「ハウス・オブ・カード」S4E9「第48章」より)

この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、CNNの番組によく出演しているのでCNN系に分類しました。

ビゲイラ氏はもともと、ビル・クリントンのチーフ・ストラテジストをしていた人で、その後コメンテータになりました。だから、基本的に民主党寄りの人ですね。

ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後の、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。

銃についてコメントして保守派のS・E・カップ氏に突っ込まれているのは、ビゲイラ氏がリベラル派であることを生かした演出ですね。

ヴァン・ジョーンズ(Van Jones)

HOC-S4E9-Van-Jones-1(「ハウス・オブ・カード」S4E9「第48章」より)

この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、CNNの番組によく出演しているのでCNN系に分類しました。

ジョーンズ氏はイェール大学法学部出身で、人権問題や環境問題などさまざまな政治運動に関わり、プリンストン大学の客員研究員を務め、オバマ政権の特別顧問にもなりました。まだ40代ですが、ベストセラーになった著書もあり、さまざまな賞を受賞しています。

ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後の、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。

この人は経歴からわかるように当然リベラル寄りなので、民主党のフランクを擁護する側に回っているのは、それを生かした演出ですね。

S・E・カップ(S. E. Cupp)

HOC-S4E9-S-E-Cupp-4(「ハウス・オブ・カード」S4E9「第48章」より)

この人も、キャスターと言うより政治コメンテータで、特定の放送局に属しているわけではないのですが、このドラマではCNNの番組に出演しているので、CNN系に分類しました。

ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。

この人は保守寄りなので、民主党のフランクに基本的に批判的だったり、銃についてコメントしたビゲイラ氏に突っ込みを入れたりしているのは、それを生かした演出ですね。


FOX NEWS

ショーン・ハニティ(Sean Hannity)

HOC-S2E10-Sean-Hannity-5(「ハウス・オブ・カード」S2E10「第23章」より)

右寄りの報道で有名なケーブル局FOX NEWSの「ハニティ」という政治ニュース番組のホストです。平日夜の帯番組ですが、レイチェル・マドー氏の番組よりは遅い時間帯です。日本で言えば、「NEWS ZERO」や「NEWS 23」の右寄りバージョンといったところでしょうか。

ハニティ氏は、保守派ぞろいのFOX NEWSのアンカーの中でも、ビル・オライリー氏の次ぐらいに有名な人じゃないかなと思います。日本で言うと誰でしょう? 辛坊さんあたりかな?

ドラマの中では、タスクの資金洗浄疑惑に関するコメントをしていますが、その後続けて、リベラル派キャスターの代表であるマドー氏がコメントするシーンも入っています。ですから、アメリカのメディア事情を知っている人なら、これを見ただけで、政権が左右両翼から叩かれているということがわかるというわけです。

グレッチェン・カールソン(Gretchen Carlson)

HOC-S4E1-Gretchen-Carlson-4(「ハウス・オブ・カード」S4E1「第40章」より)

この人は、右寄りの報道で有名な(しつこい)ケーブル局FOX NEWSの「ザ・リアル・ストーリー・ウィズ・グレッチェン・カールソン」という報道番組のホストでした。この番組は、平日午後の帯番組でしたが、今年の夏で終了しました。

カールソン氏は、この番組の終了後、FOX NEWSのロジャー・エイルズCEOをセクハラで訴えて辞任に追い込み、和解金20億円相当を獲得して話題となりました。

この人も実は、スタンフォード大卒で、1989年のミス・アメリカに選ばれたというユニークな経歴の持ち主です。

ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであることを(おそらくセスのリークによって知って)報じる役をしています。

ホワン・ウィリアムス(Juan Williams)

HOC-S4E1-Juan-Williams-1(「ハウス・オブ・カード」S4E1「第40章」より)

この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、FOX NEWSの番組によく出演しているので、FOX NEWS系に分類しました。

ウィリアムス氏は、FOX NEWSに出演してますが、れっきとした民主党員で、公民権運動やサーグッド・マーシャル(アフリカ系初の最高裁判事)など、主にアフリカ系アメリカ人を主題にしたいろんな本を書いています。

ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであるというニュースにコメントする役をしています。

モニカ・クローリー(Monica Crowley)

HOC-S4E1-Monica-Crowley-2(「ハウス・オブ・カード」S4E1「第40章」より)

この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、FOX NEWSの番組によく出演しているので、FOX NEWS系に分類しました。

この人は保守派で、しかも、かなり早い時期からトランプ支持を鮮明にしてました。そのせいかどうか知りませんが、当選後に、トランプ政権の国家安全保障会議(NSC)の上級広報戦略部長(senior director of strategic communications)に指名されました。

ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであるというニュースにコメントする役をしています。


Bloomberg

ジュリアナ・ゴールドマン(Julianna Goldman )

HOC-S2E13-Julianna-Goldman-3(「ハウス・オブ・カード」S2E13「第26章」より)HOC-S3E12-Julianna-Goldman-3(「ハウス・オブ・カード」S3E12「第38章」より)

この人はこのドラマ放映当時は、経済ニュース専門局ブルームバーグの記者でしたが、今はCBSに移籍しています。まだ30代ですが、将来を嘱望されている優秀な記者さんのようです。

このドラマには2回登場しています。1回目は、ウォーカー大統領が資金洗浄のことを知っていた、とタスクが証言した後の反響を報じる役、2回目は、アイオワ州の大統領予備選の直前の世論調査を報じる役です。


Al Jazeera

シハブ・ラッタンシ(Shihab Rattansi)

HOC-S3E9-Shihab-Rattansi-2(「ハウス・オブ・カード」S3E9「第35章」より)

ついにAl Jazeeraの人まで出てきました。Al Jazeeraというのは、中東カタールを本拠地とする衛星テレビ局で、アラビア語だけでなく英語でも放送をしています。欧米のテレビ局が優位な英語ニュースの世界にあって、孤軍奮闘でイスラム圏アラブの視点からニュースを送り続けている貴重な局です。

この人はAl Jazeeraのいろんなニュース番組に出ている人のようです。歌舞伎役者みたいな押し出しの強い顔で、高橋英樹とか二谷英明とか、最近の日本には少なくなった昔の二枚目って感じですよね。

このドラマでは、ヨルダン渓谷でロシア兵が殺された後、イスラエル軍がヨルダン渓谷に侵入したというニュースを報じています。中東のニュースに関してはAl Jazeeraをチェックする人が多いので、リアリティを求めればこうなるのはわかりますが、アメリカのテレビ局とはまったく系列の違う局にまで協力を求めるこだわりには感心します。


コメディアン系

デニス・ミラー(Dennis Miller)

HOC-S1E6-Dennis-Miller-6(「ハウス・オブ・カード」S1E6「第6章」より)

この人はアメリカではかなり有名なコメディアンです。政治家やセレブをネタにしたコントで悪名高い「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」という番組で頭角を現し、その後は数々の冠番組を担当しています。

デイリーショー」や「サウスパーク」などを放映したコメディ・セントラルと言うコメディ専門のケーブルテレビ局がありますが、そこで作成した「歴代の偉大なスタンドアップ・コメディアン・ランキング」でも21位にランクされています。

政治的には、若い頃はリベラルだったんですが、最近になって保守派に転向したようです。このドラマに出てくる番組も、おそらく、保守派大物キャスターとして有名なビル・オライリーがFOX NEWSでやっている「ザ・オライリー・ファクター」という番組の中の1コーナーの「Miller Time(ミラーの時間)」ではないかと思います。

ドラマの中では、教員組合のスピネラとのテレビ討論で突然に母音がどうこう言いだして迷走したフランクを嘲笑するようなコメントをしています。

普通のキャスターではなくコメディアンがコメントすることで、フランクの失敗の無様さをより強く印象付けていますね。事情に疎い日本の方は、アメリカのキャスターは皆こんなきついこと言うのかと勘違いしたかもしれませんが、彼はあくまで毒舌が芸風のコメディアンなのです。

ビル・マー(Bill Maher)

HOC-S1E6-Bill-Maher-1(「ハウス・オブ・カード」S1E6「第6章」より)

この人もアメリカではかなり有名なコメディアンです。年齢やキャリアからして、後述のスティーブン・コルベアやジョン・スチュワートがダウンタウンやとんねるずの世代だとすると、この人やデニス・ミラーは明石家さんまや島田紳助ぐらいの世代に相当します。つまり大御所です。

デイリーショー」や「サウスパーク」などを放映したコメディ・セントラルと言うコメディ専門のケーブルテレビ局がありますが、そこで作成した「歴代の偉大なスタンドアップ・コメディアン・ランキング」では38位にランクされています。

ドラマに出てくる番組は、HBOの「リアル・タイム・ウィズ・ビル・マー」で間違いないでしょう。これはゲストとの討論が主体の番組です。

後述のコルベアの番組なんかもそうですが、ゲストにはオバマやサンダースやマイケル・ムーアなど錚々たるメンバーが来て、結構ガチで討論しています。日本で言えば「テレビ・タックル」みたいな番組ですが、トークの内容はこちらの方が上だろうと個人的には思っています。

ドラマの中では、デニス・ミラーと同様、教員組合のスピネラとのテレビ討論で突然に母音がどうこう言いだして迷走したフランクを嘲笑するようなコメントをしています。

スティーブン・コルベア(Stephen Colbert)

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HOC-S3E11-Stephen-Colbert-7(「ハウス・オブ・カード」S3E1「第27章」より)

この人はもう、アメリカでは超有名なコメディアン(のはず)です。彼の評価を決定的にした「ザ・コルベア・レポー」という冠番組は、約10年の歴史の中で7回もエミー賞を獲得しています。個人的にも大好きな芸人で、このブログでも過去何回か取り上げています。

この番組でコルベア氏がやっていたのは、要するに、保守派評論家による保守派向け番組のパロディです。たぶん、メインのモデルはずばり、ビル・オライリー氏の「ザ・オライリー・ファクター」でしょう。つまり、オライリー氏が「ザ・オライリー・ファクター」で言いそうなコメントをマネして言う、というのが彼の芸風です。

この芸はかなり微妙な芸で、どのくらい微妙かというと、ある保守派の評論家が、「自分はコルベアが好きだ。なぜなら、自分が考えているのと同じようなことを言ってくれるからだ」と言ったぐらいです。

それだと、単に本物の保守派評論家を観てるのと変わらないんじゃないのか、と思うかもしれませんが、そこにはやはり微妙な誇張があって、その誇張がおかしみを生んでいるのです。極めて繊細で知的な芸だと思います。

このドラマに出てくる番組も「ザ・コルベア・レポー」です。その中でコルベアは、ゲストのフランクのアム・ワークス計画について、「それって社会主義?」みたいな突っ込みを入れていますが、これもまさに保守派が言いそうな典型的な批判をあえてマネして言っているわけです。

それを見てダグ・スタンパーが笑っていますよね。このシーンをコルベアの芸風を知らない人が見ると、フランクが批判されているのを見て喜んでいるなんて、ダグは本当はフランクが嫌いなのか、と深読みしてしまうかもしれませんが、違います。ダグはアメリカ人で政治にもメディアにも詳しいわけですから、当然コルベアの芸風なんか熟知しているに決まっていて、だから笑っているのです。その意味で、このシーンは実は、とてもハイコンテキストなシーンなのです。

ザ・コルベア・レポー」は残念ながら2015年で終了し、その後コルベアは、これまた有名なコメディアンであるディビッド・レターマンが20年以上も続けていたCBSの「レイト・ショー」のホストを引き継ぎました。ケーブル局のカルト的な番組からネットワーク局の看板番組に移ったわけで、名実ともに超一流のコメディアンの地位を確立したと言えるでしょう。

このコルベアの「レイト・ショー」には、昨年日本の「BAYBYMETAL」というバンドが出演し、スタジオライブを行ったことが話題となりました。そのせいで、コルベアのことを「BAYBYMETALが出演した番組の司会の人でしょ」みたいに認識している日本の方も多いようです。

まあ、別に間違ってはいませんし、どう認識しようと余計なお世話ですが、コルベアってこんなにすごい芸人なんだよ、ということも少しは認識していただけると、私のようなファンとしては嬉しいです。


ミュージシャン系

プッシー・ライオット(Pussy Riot)

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HOC-S3E3-Pussy-Riot-18(「ハウス・オブ・カード」S3E3「第29章」より)

この3人は、ロシアの実在のミュージシャンであり政治活動家のグループである「プッシー・ライオット」のメンバーです。上のキャブチャ画像の左から、

彼らの政治的主張は、主に、フェミニズム、LGBTの権利、そして、「独裁者」プーチン大統領の批判です。

「プッシー・ライオット」のメンバーは十数人いると言われていますが、基本的に匿名で、演奏の時も目出し帽で顔を隠しています。そのようなスタイルで、無許可でゲリラライブを行い、その模様を動画にしてネットに公開する、というのが彼らの活動のやり方のようです。

2012年には、救世主ハリストス大聖堂でゲリラライブを行ったことが「フーリガン行為」とされ、メンバー3人が逮捕されました。そのうちの2人が、トロコンニコワとアリョーヒナでした。逮捕され裁判にかけられたために、名前が公になったのでしょう。真ん中の男性のベルジロフは、演奏メンバーではありませんが、トロコンニコワの夫で、バンドのスポークスマン的な役割を務めています。

この事件は、政治弾圧や人権侵害の疑いで国際的な問題となり、彼女たちも国際的な有名人になりました。二人は禁固2年の実刑となりましたが、2013年の末に釈放されました。

ドラマの中では、フランクとペトロフとの晩餐会に招待され、席上でペトロフを真っ向から批判して、乾杯のグラスの中身をぶちまけて退出するという役を演じていますが、これはほとんど、彼らの現実の反プーチン活動そのままなわけです。

だから、彼らをこのように実名で登場させるということは、ペトロフのモデルがプーチンであると言っちゃってるようなもので、いいのかよ、という気もしますが、オバマだってウィキリークスの背後にプーチンがいるとか言っちゃってるわけだから、まあいいんでしょうねえ。

実は、彼らの登場シーンはこれだけではなく、この回(S3E3)のエンディングの作曲と演奏も彼らがしています。この曲はなんと、このドラマのために作った新曲だそうです。しかも、この曲はこの回1回しか使われてないわけで、なんと贅沢な演出かと驚かされます。

一番下のキャプチャ画像のアリョーヒナの周囲には、目出し帽をかぶった人がたくさん写ってますが、これこそ「プッシー・ライオット」の演奏スタイルなのです。ちなみに、この作曲と演奏には、後述の「ル・ティグラ」も参加しています。

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HOC-S3E3-Maria-Alyokhina-1(「ハウス・オブ・カード」S3E3「第29章」より)

ル・ティグラ(Le Tigre)

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HOC-S3E3-Johanna-Fateman-1(「ハウス・オブ・カード」S3E3「第29章」より)

このバンドは、エレクトロクラッシュと呼ばれるスタイルで、フェミニズムやLGBTをテーマにした歌詞を歌うバンドで、90年代の「ライオット・ガール(Riot grrrl。girlではない)」というムーブメントの流れを汲んでいるそうです。

上のキャプチャ画像の眼鏡と帽子の人が、JD・サムソン(JD Samson)です。ぱっと見、ジェンダー的には男性に見えますが、生物学的には女性です。つまりトランスジェンダーのゲイの人です。

下のキャプチャ画像の中央でマイクを持っている人が(字幕が被さって顔がわかりにくいですが)ジョアンナ・フェイトマン(Johanna Fateman)です。(ちなみに、この人の父親は、リチャード・フェイトマンというコンピュータ科学者で、知る人ぞ知るMacsymaという数式処理システムの開発者です。)

ドラマの中では、前述のプッシー・ライオットと一緒に、S3E3のエンディングを共作・共演しています。ロシアのLGBT差別は、この後の数回のエピソードのテーマの一つになるわけで、プッシー・ライオットとル・ティグラの共演は、まさにそのテーマにぴったりの演出になっているわけです。

ピーター・シンコッティ(Peter Cincotti)

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HOC-S3E3-Peter-Cincotti-7(「ハウス・オブ・カード」S3E3「第29章」より)

ペトロフとの晩餐会でピアノの弾き語りをしているこの人、「The Birth Of The Blues」なんて古いスタンダードを弾いているので、知らない人から見るとよくいる専属のハコバンに見えるかもしれませんが、実はメジャーでCDを何枚も出しているその筋ではかなり有名なミュージシャンです。

まだ18歳の高校生の頃からマンハッタンのクラブで演奏を始め、ニューヨーク・タイムズ紙には「最も将来を嘱望される次世代の弾き語りアーティスト」と評され、デビュー・アルバムはビルボードのジャズ・チャートで1位になりました。

フランクもペトロフも「シンコッティさん」と名指しで呼びかけていますが、それも当然で、それだけ有名な人なのです。

フランクが実はブルースが好きだという設定は、お気に入りのリブ・ステーキ店の店長フレディの家に行った時(S2E9)なんかにも、ちらっと出てきましたよね。

レイチェル・プライス(Rachael Price)

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HOC-S2E6-Rachael-Price-9(「ハウス・オブ・カード」S2E6「第19章」より)

フランクが始球式を務めた野球の試合でアメリカ国歌を歌っているこの人も、「レイク・ストリート・ダイヴ」というバンドでリード・ボーカルを務めているジャズ・シンガーです。

このバンド、一見すると素朴なカントリーバンドにも見えますが、メンバーは全員がニューイングランド音楽院という名門の卒業生であり、「ビートルズとモータウンを融合したような」ポップでなおかつ渋い音楽を目指しているようです。日本でも知る人ぞ知るという感じで、結構ファンは多いようです。

シンコッティ氏もそうですが、こういうわりと誰がやってもよさそうなところでも「知る人ぞ知る」ミュージシャンを使っているところなんかも、贅沢で洒落た演出になっていますね。


新聞系

マット・バイ(Matt Bai)

HOC-S2E8-Matt-Bai-6(「ハウス・オブ・カード」S2E8「第21章」より)

HOC-S2E11-Matt-Bai-1(「ハウス・オブ・カード」S2E11「第24章」より)

冒頭で活字メディアのほとんどは架空の人物と書きましたが、この人だけは例外で、れっきとしたニューヨーク・タイムズ紙の記者さんです。また現在ヤフー・ニュースにも「マット・バイの政治の世界(Matt Bai's Political World)」というコラムを連載しています。

このドラマには2回登場しますが、2回とも役割は同じで、(クレアと同じようにマクギニス将軍にレイプされたことをカミングアウトした)ミーガンに取材する役です。上のキャプチャ画像は、セスから取材の依頼を受けているところ、下のキャプチャ画像はミーガンに取材しているところです。活字メディアの人にしては自然な演技ですよね。


法曹系

ニール・カティヤル(Neal Katyal)

HOC-S3E4-Neal-Katyal-1(「ハウス・オブ・カード」S3E4「第30章」より)

この人はイェール大学の法学部を出た法律家で、オバマ政権で訟務長官という重要なポジションを務めていた人です。訟務長官というのは、アメリカの連邦政府が裁判で訴えられたときなどに、政府の代理人として最高裁で弁論をする役割の人です。

カティヤル氏はインド系であり、アフリカ系初の最高裁判事であるサーグッド・マーシャルに次いで、最高裁で多くの弁論を行ったマイノリティ系の人と言われています。

ドラマの中では、フランクの命令による無人機の攻撃で兵士が負傷した事件について、最高裁判所に訴える役をしています。上のキャプチャ画像の中央がカティヤル氏で、左隣に座っているのがヘザー・ダンバーです。ダンバーはフランク政権の訟務長官ですから、つまり、カティヤル氏が現実に務めていたのと同じポジションの人を演じているわけです。


後記

この記事、書き始めたときはちょっとした小ネタのつもりで、採り上げるのは10数人か多くても20人ぐらいだろうと思っていたんですが、ちゃんと調べていくと出るわ出るわで、結局は50人近くになってしまいました。

こんなことならやるんじゃなかった、と途中で完全に後悔しましたけど、中途半端で止めるのももったいないので、乗り掛かった舟で最後までやりました。

まあ、アメリカのキャスターの紹介記事を日本語で50人分も書いた人はあまりいないでしょうから、なんかしらの存在価値はあるんじゃないでしょうか。

紹介した人の中には、グウェン・アイフィルやモーリー・セイファーのように歴史的偉人クラスの人や、レイチェル・マドーやビル・マーやスティーブン・コルベアのように個人的にファンでよく見ている人もいましたが、なんとなく見覚えがあるだけの人や、まったく知らない人もいました。

そんなわけですから、半分ぐらいは泥縄式で後から調べて書いています。もし間違った記述があれば、コメントなどで指摘していただければ、できる範囲で対処したいと思います。

あと、Wikipediaの英語版を見ると、MSNBCの「モーニング・ジョー」のホストであるジョー・スカーボロが出ているという記述があるのですが、ドラマを何回見直しても出演シーンを発見できませんでした。そのため、今回は残念ながら割愛しています。もし見つかったら追記する予定です。

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大統領令「ジョン・スチュワートは番組を辞めてはいけない」

 降板が決まっているジョン・スチュアートの「ザ・デイリー・ショー」に、オバマ大統領が登場(なんと7回目の出演とのこと)。開口一番こう切り出します。

Obama: You know, I can't believe that you're leaving before me.

オバマ: あなたが私より先に辞めるなんて、信じられないよ。

Obama: In fact, I'm issuing a new executive order that Jon Stewart cannot leave the show. It's being challenged in the courts.

オバマ: 実は、「ジョン・スチュワートは番組を辞めてはいけない」という大統領令を出したんだが、最高裁に反対されててね。

Stewart: Yes, I have to say for me, this is a states' rights issue.

スチュワート: そうですね。それは州の権限の問題といわねばなりませんね。

(「州の権限」っていうのは、大統領令が反対されるときに使われる決まり文句)

 こういうときに、ジョン・スチュワートはよく感動したフリをするんだけど、今回はなんかホントにちょっと泣きそうになってるように見えませんか? 気のせいかなあ。。。

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統一球大喜利

 統一球問題について、Twitter で親切な方々が解説してくださっているのだが…

 何がすごいって、一つも意味がわからん。一つたりとも意味がわからん。何の分野かすらようわからん。

 自分でも考えてみたけど、何も思いつかなかった。みんなすごいな。

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内なるキリスト教徒

 市川森一が亡くなった。私は氏の大ファンとまでは言えないが、気になる脚本家の一人であったのは間違いない。

 もちろん、氏がウルトラシリーズの脚本家であることは、子供の頃は知らなかった。子供という生き物は、バイトの兄ちゃんがやってる着ぐるみの特撮ヒーローと握手できただけで死ぬほど感激したりするくせに、作品の作り手にはほとんど関心がないものだ。そういうことを意識しだすのは、だいたい思春期に入ってからだろう。

 大河ドラマ「黄金の日日」が放映されたのは、私が中学一年生のときだから、少しは市川森一という名前も意識していたと思う。しかし、このときはまだ、思い入れはほとんどなかった。

 市川森一という名前が私の中に決定的に刻み込まれたのは、ウルトラセブンに関するあるムック本を友達から借りて読んだときだ。記憶を元に検索すると、おそらく朝日ソノラマのファンタスティック・コレクションというシリーズの中の「SF ヒーローのすばらしき世界 ウルトラセブン」だろう。

 この本はおそらく、ウルトラセブンを大人の視点で再評価するというムーブメントのきっかけになった本の一つではないかと思う。インターネットなどもちろんなく、ビデオもまだ入手しにくい時代に、全エピソード(例の12話は除く)のあらすじが再現されている上に、今や伝説となった「ノンマルトの使者」のほぼ完全なシナリオや満田かずほ氏の自筆原稿なども収録された、今考えても質の高いムックだった。(おそらく池田憲章氏の功績であろう)

 この本を読んで、「ひとりぼっちの地球人」と「盗まれたウルトラアイ」の脚本を書いたのが、「黄金の日日」と同じ人物であるということに気づいたとき、市川森一の名前は私にとって永遠に忘れられない名前となったのだった。

 氏の作品には独特の肌合いがある。ロマンティックなのだけれど、感情的にドロドロベタベタしたところはあまりなく、どこか突き放したようなドライな距離感がある。氏がキリスト教徒であるという事は、後になって知ったのだが、そう考えると腑に落ちるところは多い。

 氏の作品は「裏切り」がテーマになることが多い、というのは前にもちらっと書いた。しかし考えてみると、その裏切りの動機が問われることはほとんどない。マゼラン星人はなぜマヤを裏切ったのか。説明は何もない。「他の星を侵略するような星の倫理観なんてそんなもの」とかいくらでも理由はつけられると思うのだが。あるいは、秀吉はなぜ助左を裏切ったのか。権力の魔力というような解釈が多いが、劇中ではっきりした説明はない。

 氏の作品において、「裏切り」は不条理な運命のように現れ、その動機が問われることはない。問われるのは常に、裏切られた側の意思であり倫理なのだ。これは、善人にも悪人にもそれぞれ事情があるんだから、お互い話せばわかるはず、みたいな日本的義理人情の世界とは明らかに異質であり、ここに、キリスト教的世界観の影響を見出すのはあながち深読みではないと思う。

 これも前にちらっと書いたが、私の通っていた幼稚園はプロテスタントの教会が経営していた。そのため、クリスマスが来るとキリスト生誕の劇をやり、イースターが来ると卵に色を塗って飾り、週末には日曜学校に通い、暇さえあれば福音館書店の絵本を読み、というような環境で幼年時代を過ごした。

 今では無神論者で世俗的ヒューマニストを自称しているが、身体化され無意識的反射的に表れる倫理観には、拭いがたくキリスト教的な倫理観が刻印されているという自覚がある。もちろん、正規の宗教教育を受け意識的にキリスト教徒になった人と同一視はできないだろうが。私が市川森一氏の作品を好きなのは、私の中に潜むキリスト教徒を刺激されるせいもあるんだと思う。

 実相寺昭雄も去り、市川森一も去った。自分の幼年期を豊かにしてくれた方々が避けようもなくこの世を去っていく歳になり、彼らから渡されたバトンの重さを意識せざるおえない今日この頃。

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愛国心の欠如の自覚

 ぼくは「3.11」という言葉があまり好きではない。もちろん、いちいち「東日本大震災」と言うのは面倒なのでなんらかの略称が必要なのはわかるが、ことさらに「9.11」になぞらえた「3.11」という言葉を使うのが嫌いだ。

 もっと正確に言うと、そういう言葉を嬉々として使いたがる人たちが嫌いなのである。そういう人たちに限って、震災に自分勝手な歴史的・政治的な意味づけをして、自分の主張の道具として使おうとしている人だったりする。だからぼくは、単に「震災」とか「今回の震災」とか「東北の震災」と呼びたい。

 おっと冒頭からいきなり話がずれたが、今回の震災で強く自覚させられたことが一つある。それは、ぼくには「愛国心」がない、ということだ。

 震災についての言説でぼくが最も違和感を感じたのは、震災を「日本の悲劇」として捉えようとする人が多いことだった。もちろん、東北の震災が人類史上でもそう多くない規模の悲劇であることに異論はないが、ぼくはどうしてもヒューマニズムの観点から見てしまう。つまり「人類の悲劇」だと思ってしまうのだ。

 たとえば、インドネシアやハイチや四川で巨大な地震や津波があり、死者数だけで言えば東北の震災をはるかに超える(参照)被害があったのはつい数年前のことだ。ぼくはどうしても、このような震災も東北の震災と同じかそれ以上の悲劇だと感じてしまう。

 もちろん放射線や停電の問題に関しては、自分自身や身近な人間が直接的な被害を被っているので、その点では海外の災害より身近に感じるのは当然だ。またぼくは、日本という国に税金を納めたりいろんなサービスを受けたりしており、その点では他国人より日本人との間に強い利害関係を持っているのは間違いない。

 しかしそういう主体的なコミットメントを除いて素朴にどう感じるかを考えると、東北の人もハイチの人もインドネシアの人も同じぐらい可哀想だと感じている自分に気づく。

(余談だが、これはぼくが平均的な日本人よりは多少英語メディアに触れる機会が多いせいもあると思う。英語メディアでは東北の震災も大々的に報道したが、インドネシアやハイチや四川もそれと同じぐらい大々的に報道していたので、自然とシンパシーを抱いてしまうのである。これはダルフール問題などにも同じことが言えるだろう。)

 これは、ぼくが国家主義者でないため理屈で無理矢理そう思い込もうとしているわけではないし、こういう感じ方が正しい感じ方であり、日本人はみなそう感じるべきだと主張したいわけでもない。もちろんだからと言って自分の感じ方が間違いだとも思わない。ただ、自分がわりと自然にそういう感じ方をしてしまうのだということを、自分で再認識しただけのことである。

 このブログにも何度か書いたはずだが、ぼくは昔のサヨクの人みたいに愛国心が悪だとはまったく思っていない。人間には愛国心を持つ自由があるし、それにことさらケチをつける気もない。でも、愛国心を国家が個人に強制したり、国民が他の国民に強制したりする権利はないとも思っているのだ。

 そういう意味で、震災後の日本人が精神的に団結するのが当然だ、みたいな言説の氾濫には多少の不安を覚えている。もちろん節電とか募金とかできる範囲の協力はしているのだが、感情的な一体感を人間性の評価に直結されたりしそうなのが嫌なのである。

 「日の君」などは、単なる形式だから強制されてもいいと思っているが、そこに心が籠もっているかを問わるのはまっぴらだ。だって実際、心なんかこれっぽっちも籠めていないからね。だから、リベラル派だと思っていた小田嶋隆までが「形式よりも心が大事」みたいなことを書いているのを読んだときはかなりゾッとした。

(ちなみに、ぼくの小田嶋隆に対する評価は、内田樹などとは比べ物にならないほど高い。特に、彼の文章を書く手つきに感じられる距離感のとり方みたいなものは、極めて高度な技術であり、内田樹などにはまったくないものである。)

 ぼくは自分の政治的立場をはっきりさせること自体あまりいいことだとは思っていない「旗色不鮮明主義者」なのだけれど、ぼく以外にも同じような肩身の狭さを感じている人がいるかもしれないので、そういう人間の存在も許されるはずだということをここに明記しておきたい。

(前にも説明したような気がするけど、記事が見当たらないので一応補足する。旗色を鮮明にするのが正義だと思っている人が多いようだが、ぼくは逆だと思う。一般庶民にとって、旗色を鮮明にするのは自分のためであり、社会のためにはむしろ害になると思う。だから社会のためにあえて旗色を不鮮明にするのが「旗色不鮮明主義」である。なお、旗色不鮮明主義は日和見主義ともまったく違う。日和見主義は信念自体を周囲に合わせて変えることだが、旗色不鮮明主義は、信念はしっかり持ちつつ、それを右・左とか保守・革新とかの単純化された分類として自ら表現しないことである。だからわざわざ「旗色」とか「不鮮明」とかいう言葉を使っているのだ。言い換えれば、自分の信念を素直に表現して、それが他人から左右保守革新どのように分類されようと知ったことではないということ。ああ長くなった。機会があれば改めて説明することにしよう。)

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rei harakami の思い出

 昨日からずっとハラカミさんの音楽を聴いているが、これほどワン・アンド・オンリーという言葉の似合う音楽家も珍しいと思う。

 普通のアーティストの音楽は、誰のどんな音楽の影響を受けているか、だいたい見えるものだ。これとこれを組み合わせて、さらにこれをプラスしたんだな、とか。もちろんそれが悪いというわけじゃないけど、虚仮威しの新しさに興醒めさすることもある。

 ハラカミさんの音楽には、そういう虚仮威しの下品さはまったくない。一聴しただけでは、むしろ懐かしい音という感じさえする。しかしよくよく聴いているうちに、これまでまったく聴いたことのない音楽であることがわかって慄然とするのである。

 これは多分ぼくのような音楽ずれした人間ほどそう思うのだが、だからと言って小難しい難解な音楽というわけでは決してなく、カジュアルなリスナーでもすっと入っていける親しみやすさがある。そこが彼の音楽のなんとも不思議なところだ。

 ぼくは以前ハラカミさんのことをエリック・サティに見立てたことがある。その時は単なる思いつきに過ぎなかったのだが、今考えるとこの見立ては案外うまい見立てのような気がしてきた。

 サティも、一聴すると親しみやすいが実はすごく捻った音楽を作った人であり、世俗的評価から超然としていたところも、音楽理論なんて知らないとか言っちゃうところも、ユーモアと諧謔を好んだところもレイ・ハラカミに似ている。

 もちろん、大作曲家サティに似ているからレイ・ハラカミも偉い、なんてアホなことを言いたいわけじゃない。レイ・ハラカミはレイ・ハラカミだから偉いのである。

 でも、訃報を聴いてレイ・ハラカミの名前を知ったけれど、彼の偉大さが今ひとつわからないというような人は、エリック・サティという補助線を引いて考えると多少は想像がつくかもしれない。余計なおせっかいではあるけれど。

 生前のハラカミさんは、決して「有名」とまでは言えなかったと思うけど、Twitter を眺めた限りでは、ぼくが思っていた以上に多くの人に愛されていたようだ。

 その割に「有名」ではなかったのはたぶん、ぼくも含めてファンはみんな、ハラカミ君を独り占めしておきたかったのだと思う。いやもっと正確に言えば、「有名」とか「商業的成功」とか、そういうものとは関係のない場所に、ハラカミ君をそっと置いておきたかったのだと思う。

 でもぼくは今それを少し後悔している。その巨大な才能からすれば、レイ・ハラカミはもっと世の中に知られてしかるべき音楽家だった。もしぼくらが彼をもっと有名にして、常に取り巻きがいるような地位に押し上げていたら、彼は死ななくてすんだかも…、なんてね。なにより彼自身がそんなことを望んでいないことを、みんな知っているのにね。

 普通は人が死ぬと可哀想だと思うものだが、不思議なことに、レイ・ハラカミの場合は悲しくはあっても可哀想だとは思わない。むしろ、彼はぼくのような愚か者がひしめく世界を見捨てて美しい世界に旅立ったのであって、彼に捨てられたぼくらの方が可哀想なんじゃないかと思えてくるのである。なぜ彼がいてもいいかなと思えるような世界にするために、もっと努力しなかったんだろう、なんてね。

 U-zhaan 氏の弔辞。

 最後に、いつも愛らしいハラカミさんの人柄の中で、僕がとっても好きだった一部分をハラカミさんに伝えておきたいです。

  ハラカミさんは、絶対に人を損得で判断しない方ですよね。誰もがつい反射的にしてしまいがらな「彼は役に立ちそうだから」 とか「知名度があるから」などというような考えを、一切持ち合わせていませんでした。地位も何もない若い僕にも、どんなアシスタントにも、たまたまそこにいた僕の友達にも、全くわけへだてなく尊敬を持って付き合っていました。

  「そんなの普通じゃん」ときっとハラカミさんは言うでしょう。ですが、ハラカミさんほど徹底してナチュラルにそれをできている 人を、僕は見たことがありません。人側関係の基準が本当にシンプルで、だからこそハラカミさんの周りにはハラカミさんのこと を好きで好きで仕方ない人が、老若男女関わらずいつも溢れていました。みんながハラカミさんを愛していました。

 ぼくは、美しい音楽を作る人は美しい心を持っている、なんて御伽噺はまったく信じていないし、他人の弔辞を額面通り真に受けるほど若くもないが、レイ・ハラカミに関しては、きっとこういう人だろうと、音楽を聴いただけで決め付けていたことに今気がついた。


追記: 過去の記事を検索してみたら、「Lust」がリリースされたときにもほとんど同じことを書いていたのに気づいた。ぼくはいつもそうで、自分でも言った事を忘れているのにまた同じことを言うのである。

 ハラカミさんの音楽は、決して俗っぽくない。超俗的である。にもかかわらず、決して難解でも高踏的でもない。極めて親しみやすい響きがある。そこが不思議なところ。

 そういう意味では、ちょっとサティに似てるかもしれませんね。ポップスはサティから始まったみたいなことを言ってた人がたしかいたけど、ハラカミさんは、制度化してしまったポップスの世界に現れた現代のサティ、なのかも知れません(^^)。

Red Curb」を聴いて興奮して Amazon のレビューを投稿したのは、もう 7 年も前なんだね。たった 7 年という気もするが。。。

レイハラカミという名前はずっと気になっていたのですが、不覚にも最近まで聴くのをサボっていて、先日、これまたずっと気になっていた某日立の CM の「あなた」のメチャメチャ格好いいアレンジをやったのが彼だと知って、あわててまとめて聴いた次第です。

彼の場合、エレクトロニカと言っても、生楽器でも成立するような音楽を単に電子音でやっているだけではもちろんないし、かと言って、極端な不協和音があったり、調性がひたすら拡散していったり、単調なミニマルフレーズが延々続くわけでもありません。ただ、彼の音楽は、コード進行にしてもリズムにしても、聴き手の「次はこう来るだろうな」という瞬間瞬間の予想を、常に微妙に裏切っていくのです。

ですから、確かに「癒し系」的な要素もあるのですが、他の癒し系作品のように、作品の持つヒーリング世界にリスナーを引き込んでいくのではなく、むしろ、リスナーの感情のさざなみを打ち消し中和していくことによって、結果的に頭の中を真っ白にしていく感じなのです。脳ミソの関節を全部はずされてグニャグニャにされてしまった感じ、と言っては言いすぎでしょうか。

ハラカミさんの音楽は、半野喜弘さんの重厚な和音とも、竹村延和さんのジャジーな感じとも違い、一見ポップでとっつきやすい音楽ですが、その奥には、まるで整体やマッサージにはまったときのような不思議な中毒性を秘めています。ぜひ一度おためしあれ。

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絶句

 小松左京や顔デカおばちゃんの訃報だけでも十分ショックだというのに、あのレイ・ハラカミまで亡くなったとは。なんという日だ。  Red Curb

 「Red Curb」は、エレクトロニカという狭いジャンルの話ではなく、日本のポップス史上に残る名盤だと思う。やはり天才過ぎたがゆえに、天国の神様からお呼びがかかったのであろうか。無神論者だけどそう思いたい。

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お中元大作戦

 例の風評被害の件だが。自分で食べるのは平気でも、人に贈るのは失礼みたいに考える人が多いみたいだけど、気にせずどんどん送りつければいいのではないか。

 別に食べる食べないは本人の勝手で、食べなくても生産者の利益は変わらないわけだし。

 相手が機嫌を損ねたらどうするかって? これは当人のキャラとか相手との関係にもよるが、「ぼく世間知らずでニュースとか見てないんでよくわかりません」「どうでした? 福島の桃。美味しかったでしょう!」みたいな顔して知らんぷりしてれば、面と向かって文句は言えないだろう。

 それでも文句を言ってくる奴がいたら、いい機会とばかりに小一時間説教し、それでも納得しない奴とは、いい機会とばかりに絶交してしまえばよい。

 ぼくは例年、贈答とかまったくしない人間なのだが、今年はなんか無性に贈りたくなってきた。やっぱ天邪鬼かな。

 CS 局で偶然聞いて妙に気に入ってしまった曲。アレンジが Portishead に似すぎてるのがちょっと…だけど、でもいい曲。90 年代にこんなの出してたのね。知らんかった。

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幻の誤報

 毎日新聞のウェブサイトにこんな記事が。

西武:フェルナンデス4号3ラン 中日5割に逆戻り

 ○西武5-4中日●(20日、西武ドーム)

 西武が今季2度目の4連勝。一回にフェルナンデスの4号3ランで先制し、五回に栗山、八回に中村の適時打で差を広げた。牧田は完投は逃したが2勝目。中日は九回に1点差に迫るも及ばず、勝率5割に逆戻り。

 あれ、他のサイトの記事と正反対の結果になってるぞ、と思って再表示すると、

中日:6-5で西武に勝利

 ○中日6-5西武●(20日、西武ドーム)

 あれ、さっきのは見間違いか、と思ったが、キャッシュに記録が残っていた。見間違いじゃない。

 見込みで書いた予定稿が間違って出ちゃったのかな。 

 ちきしょー、魚拓取り損ねた。 (と思ったら魚拓が落ちていた。)

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偶然に影響されすぎてはいけない

 博打打ちが一番やってはいけないことは、結果によって打ち手を変えることである。博打において結果は偶然にすぎない。偶然には理由はないのだから、結果に応じた対策というものは基本的に存在しない。ゆえに結果に振り回されずに決めた戦略を貫くことが、博打において安定した結果を残すための原則である。

 麻雀で負け組になりやすいのは、いつもは危険牌を平気で切っている癖に、大きい手に振り込んだ後に限って妙にガードが固くなる人や、逆に、いつもは安全牌ばかり切っている癖に、大きい手に振り込んだ後に限って大物手を狙ってガードが甘くなる人であることは、麻雀をやる人ならよくご存知だろう。「強い博打打ちは長時間打ってもフォームが変わらない」と雀聖・阿佐田哲也氏もよく言っていた。

 博打以外の堅気の仕事の結果は、博打ほど運だけでは決まらない。運と実力の両方に左右される。したがって、堅気の仕事の場合には、結果よって打ち手を変えたほうがよいと思いがちだが、実はここにも落とし穴がある。

 なぜかというと、打ち手を変えたことによって、結果が改善・改悪されたとしても、その原因が本当に打ち手を変えたことかどうかは、それだけでは判断できないからだ。実力だけでは決まらないということは、どんな結果も何割かは運だということだ。もし結果が運だった場合、それに応じて打ち手を変えれば、結果はむしろ改悪される可能性がある。

 運と実力の両方に左右される仕事の典型にプロ・スポーツがあるが、スポーツではよく「好調の後ほどスランプになりやすい」と言われる。その理由もおそらく同じだ。好調の何割かは運なのだが、そのどこまでが運でどこまでが実力なのか、厳密に判別することは難しい。そのため、逆にフォームを崩してしまうのだろう。

 うろ覚えだが、かのイチローは、何試合か不調が続いた後で突然固め打ちしたときに、「昨日から一日しかたっていないのに、技術的にそんなに大きく変わるはずないんですよね」と言っていた。その真意を想像するに、「これは実力ではなく運なので、その結果に振り回されてしまっては、かえってバッティングを崩すことになる」ということではなかったろうか。

 さて、わが国は何百年に一度という規模の地震に見舞われたわけだが、この地震による災害の中にも、偶然と必然・運と実力が入り混じっているはずだ。したがって今大事なのは、反省すべきことを反省すること以上に、反省すべきでないことを間違っても反省しないことだと思う。

 同じように 9.11 という悲劇に見舞われたアメリカは、その進路を大きく変えた。その中には、本当は変えるべきでない事も含まれていた(かもしれない)ことはご存知の通りだ。ぼくは当時、アメリカが変わらなければならない必然性を必ずしも理解していなかった。むしろその後のアメリカの行動から逆算して、アメリカの受けた衝撃の大きさを推し量っていたぐらいだ。

 でも今ならわかる。身近に大きな不幸を経験した人間は、何か行動を起こさずにはいられないのだということを。そして、その行動が必ずしもよい結果をもたらすとは限らないということも。

 もちろん、ぼくらが被災者に共感すること自体は、微塵も間違ってはいない。しかし正しい共感から生まれた行動がすべて正しい行動であるという保証はないのだ。したがって、共感が熱ければ熱いほど、それに溺れないだけの強靭な冷静さが必要なのだと思う。

 震災後、マスメディアやネットで喧伝される言説の中には、警戒すべきものが多々あるように感じる。特に警戒すべきは、被災者側に立つことによって善のお墨付きを得て、反対する者に悪のレッテルを貼るような言説や、震災に勝手に歴史的な意義を見出して、日本の進路を自分の望む方向に誘導するような言説だろう。

 たとえば、復興を口実にした増税であるとか、節電を口実にした特定の業界や文化に対する規制であるとか、それが本当に日本のために必要なことなのか、ぼくらはもう一度冷静になって検討する必要があると思う。

 こんな時ほど、次の言葉を肝に銘じておきたい。

- The road to hell is paved with good intentions (地獄への道は善意で舗装されている)

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