最近の研究に脚光:B型大動脈解離の長期的生存率に対するTEVARの影響
翻訳はGoogle+から転載
「 The Annals of Thoracic Surgery (胸部外科年鑑)」に最近発表された研究では、下降胸部大動脈や胸腹部大動脈の解離の治療結果を遡って比較している。B型大動脈解離(TBAD)の現在の標準的な治療は、患者に潅流障害や破裂のような合併症があるかどうかによって異なる。合併症のあるTBADの患者には急性期の修復が示されるが、合併症のないTBADの一次治療は、至適薬物治療(OMT)と呼ばれる積極的な高血圧のコントロールである。合併症のないTBADの患者には、解離の修復を必要としないかもしれない患者の不要なコストや外科合併症を避けるため、解離の修復は推奨されない。このやり方の短期的な結果は素晴らしいが、無介入生存率は5年でたった63%、6年で41%と報告されている。同じように全生存率も期待外れなもので、3年で75%、5年で60~80%の範囲である。このような残念な長期的結果は、TBADに合併症がない限り解離の修復を遅らせるという判断に疑問符を突き付ける。
TBADの結果の自然歴をよりよく理解するため、ルーとその同僚は、急性TBADの患者398名の16年分のデータを見直した。合併症のある急性TBADの患者は、初期診断時に胸部大動脈の血管内修復(TEVAR)を受けたが、合併症のないTBADの患者は当初OMTを受けた。合併症のないTBADの患者は、最終的な治療戦略に基づいて、観血的な外科修復、TEVAR、OMTの継続群に分類された。著者たちは、合併症のないTBAD患者は、すべて長期的な結果がよくないことを発見した。10年後の全生存率は58.9%、無介入生存率は30.9%だった。この研究の上席著者であるブラッドリー・レシュノワー博士は、「最も驚くべき発見は、合併症のないTBAD患者の長期的結果のひどさと、合併症のあるTBAD患者の長期的結果のすばらしさでした…初期診療時にTEVARで治療された(合併症のあるTBAD)患者は、ハイリスクなコホートであるにも関わらず、10年後の生存率は84.1%でした。」
ルーとその同僚により16年間以上にわたって遡って研究されたTBADの血管内治療は、エンドグラフトのカバー範囲が左鎖骨下動脈から腹腔動脈まで日常的に拡張されるより積極的な治療戦略へと進化した。レシュノワー医師は、この治療戦略の変化は、初期の血管内修復の長期的結果の改善の観察を緩和するものではないと強調した。「私たちの研究から「学ぶべきメッセージ」は2つあります」とレシュノワー医師は語る。「1番目は、合併症のない急性TBADに対するOMTは、長期的には悪い結果を生むということ。2番目は、TBADの急性期にTEVARで治療された患者は、OMT限定で治療されTEVARが遅れた患者に比べると、長期的な生存率が改善されたということです。(私たちの)研究や他の研究結果に基づくと、合併症のないTBADの管理は、将来より積極的なものになり、大多数の患者で、血管内治療がOMTに取って代わるものになるでしょう。」
この研究は、近年のTBAD治療の試験から得られた知見を補うものである。ADSORB試験は、OMTとTEVARの1年後の死亡率に差を見出せなかったが、ルーとその同僚のデータは、より長い追跡期間だと、初期のTEVARの方が長期的な生存率が改善されることを示唆している。INSTEAD試験は、慢性TBADの結果がOMTよりTEVARの方がよいことを実証し、著者たちの研究は、急性期のTEVAR介入は慢性期のTEVAR介入にくらべてTBADの結果がよいことを示唆することにより、このような発見を補足している。著者たちはこの分野の研究を続けており、注目の対象を、OMTが失敗し易い場合やTBADの大動脈拡張を示しやすい主亀裂の特性を判定するのに役立つ可能性のある、予測因子に移している。そのような予測因子は、積極的な治療戦略の対象が、そこから最も恩恵を受ける患者であることを確実にするために、重要な検討対象になるだろう。
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