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大動脈解離を生き延びた者の新たな希望

ソース: https://www.news-medical.net/news/2007/07/26/28064.aspx

翻訳はGoogle+より転載

大動脈解離はしばしば誤診され、直ちに治療を受けないと死ぬ可能性がある。俳優のジョン・リッターは2003年に大動脈解離で亡くなった。

より優れた医用画像と投薬・外科手術・カテーテルベースの手法のおかげで、この大動脈解離と呼ばれる危機を患者が生き延びる確率は増えた。だが、退院した患者は、4分の1の確率で数年以内に死ぬ。そして、誰が最も死ぬリスクが高いのか、誰がもっとも外科手術その他の治療の恩恵を受ける可能性があるのか、を医者が予測するための信頼性の高い方法がなかった。

研究者の国際チームが7月26日に「New England Journal of Medicine」に発表した研究は、大動脈解離を生き延びた患者に希望を与え、医者にガイダンスを与えるかもしれない。ミシガン大学の循環器病センターの専門家に率いられた研究者たちは、大動脈解離の患者の退院後の死亡リスクを予測する新たな方法、および、そのリスクの背後にあるメカニズムの新たなモデルを提案した。

彼らのモデルは、現代の医用画像スキャンで容易に観察できる現象に着目した。それは、大動脈の血管層が玉ねぎのように2つの層に分かれたときに作られたチャンネル内の血栓だ。この「偽腔」と呼ばれるチャンネルは、「真の」腔に沿って走っている。「真の」腔は、大動脈の中央にある空洞で、心臓から腹部を通って下に流れる血流のパイプラインとして働く。

大動脈先端の亀裂から偽腔に血が流れ込むと、この新たなチャンネルの中に囚われてしまう。その血は、新たに形成されたチャンネルの下方にある小さな開口部から、流れだせるようになっていることが多い。だが、この開口部が大きくないと、偽腔内の血流は遅くなり、血圧が高くなり、血栓が形成される。

この研究の示すところによれば、退院後の死亡のリスクは、偽腔の部分的な血液凝固(血栓)を経験した患者の方が、偽腔に血栓のない「開存型」の患者よりも2.5倍も高い。偽腔が凝固した血で完全に塞がった(あまり例は多くないが)患者の死のリスクは、その中間である。

「これは、どの患者がもっとも危険かに関する新たな予測因子になり得ます。この知識は、いつより積極的な治療に進み、いつ自重するかの決断に役立つ可能性があります」と筆頭著者の、ミシガン大学心臓血管医学部の研究員である、医学博士・理学修士のトーマス・ツァイは語る。

この研究では、急性大動脈解離国際レジストリ(IRAD)の一部である、下降大動脈に大動脈解離を持ち、生きたまま退院し、最高3年、もしくは、死ぬまでの追跡調査を受けた患者201名のデータを利用している。

IRADの本部はミシガン大学循環器病センターにあり、ミシガン大学医学大学院、マーディガン財団、バーべディアン大動脈研究基金の部分的な支援を受けており、11カ国の22の大病院のデータを保持している。IRADはこの比較的まれな容態の治療と患者の結果に関するデータを集めて、研究者が、1病院で収集できるものよりも大量のデータに基づいて、より科学的な結論を導き出すことを可能にしている。

上席著者のキム・イーグル医学博士は、IRADの主要研究員だ。イーグル博士は言う。「ミシガン大学やIRADでは、大動脈疾患の科学的発見において新たな時代を切り開きつつあると信じています。画像解析や大動脈疾患相関の遺伝的関連の進歩を利用して、このケア領域全体が様変わりするでしょう。」イーグルは、ミシガン大学の心臓血管医学のAlbion Walter Hewlett教授であり、ミシガン大学循環器病センターのセンター長だ。

ツァイとミシガン大学医用生体工学部の同僚は、IRADのデータに加えて、大動脈内の状況をシミュレートした人工材料を利用して、大動脈解離の偽腔モデルを研究している。

偽腔内の血圧や裂けた大動脈壁の物性や応答は、すべて、部分的血栓に関連すると見られる高い死亡リスクに一定の役割を果たしている可能性がある。データの示唆するところによれば、部分的に血栓化した偽腔内の収縮期血圧は、大動脈内の収縮期血圧よりは低いが、拡張期血圧は偽腔内の方が高い。このことが、(部分的に血栓化した)偽腔内の平均血圧が、開存型や完全に血栓化した偽腔を持つ患者の偽腔内の平均血圧より高いことにつながっている。

またツァイは、ミシガン大学のIVRのデビット・ウィリアムズ医学博士が偽腔を研究したことや、ミシガン大学の血管外科医のラモン・バーガー医学博士が、ステントグラフトで治療した腹部大動脈瘤に類似のモデルにおいて、エンドリークのダイナミクスを研究したことや、この研究や他の世界中の研究者の研究が、新たなデータから提案されたモデルにさらなる説得力を与えることを指摘した。だが、この偽腔モデルが正確かどうかは、先見的研究や他の検証努力によってしかわからない、と彼は言う。

このNEJMの論文は、IRADの病院への入院を認められた、開存型の偽腔を持つ患者114名、部分血栓化した偽腔を持つ患者68名、そして完全に血栓化した偽腔を持つ患者19名の遡及的な臨床データに基づいている。

3年の追跡期間が終わったとき、25パーセント近くの患者が死亡した。だが、死亡リスクの差は衝撃的だった。 開存型の偽腔を持つ患者の13.7パーセントが死亡したのに対し、部分的に血栓化した患者は31.6パーセント、完全に血栓化した患者は22.6パーセントが死亡した。この差は、他の因子を補正した後でも維持された。

この研究者たちは、偽腔の重要性に加えて、アテローム性動脈硬化症や大動脈瘤の既往症を持つ患者の方が、追跡期間中に死亡する確率が高いことも発見した。大動脈瘤と大動脈解離が違うのは、大動脈瘤は血管の弱くなった部分に形成された大動脈の隆起を伴うが、血管壁の層ははがれないままであることだ。

患者の大多数は60代の男性であった。患者のほぼ全員が、病院到着後1日以内に、CT、MRI、経食道心エコー(TEE)などの断層撮影技術を使って診断を受けていた。患者が最初に治療を受けたのは、全員1996~2003年の間だった。近年、医用画像はさらに進歩し、高速走査により、(後述の3つの状態のどれでも起こり得る症状である)突然の胸痛や背部痛を訴える患者の大動脈解離、肺塞栓症、心臓発作を区別することが可能になっている。

病院では、どの患者も血圧や心拍数を正常化する薬を服薬しており、患者の73パーセントは、受けた治療が投薬だけだった。

18パーセント近くは、亀裂を修復する手術を受け、9.5パーセントは、血液が偽腔に侵入するのを防ぐステントグラフト、もしくは、偽腔下部の開口部を増やす造窓術のどちらかまたは両方の血管内手術を受けた。

大動脈解離における血管内ステントグラフトの利用増加の現在の傾向は、偽腔への血流を防ぐと完全な凝固につながり、それによってチャンネル内の圧力を減らし、段階的な治癒につながる可能性がある、という信念に基づいている、とツァイは指摘する。

だが、このような患者に対しては、血管内治療も外科治療も無リスクではない。麻痺や他の問題のリスクを伴う。そして、ステントグラフトを大動脈解離の最善の内科的治療と比較する臨床実験は、どちらも似たような結果であり、軽々しく踏み込んではならないことを示唆している。

偽腔の血栓化リスクモデルが、医師にとって役に立つツールであることが明らかになった場合、大動脈解離の患者に対する通常のアドバイスに、診察後6~12カ月ごとの通常のMRスキャンやCTスキャンに加えて、特殊な画像プロトコルによって血栓化の範囲を調べることが、推奨されるかもしれない。

ミシガン大学では現在、循環器病センターの大動脈疾患の領域横断型のプログラムの一環として、大動脈解離の患者の偽腔がどのように変化するかを長期的に追跡するという前向きな研究を実施している。この研究では、解離の経過初期や後期のより早い診断を可能にするかもしれない血液マーカーの特定を追求し、長期的なリスク予測をさらに精密にするために働いている、とイーグルは語る。ミシガン大学の外科医、G・マイケル・ディーブ医学博士、ヒマシュ・パテル医学博士、ギルバート・アプチャーチ医学博士たちは、観血的手術やステントグラフトの改良が、どのように生存率を向上させ合併症を減らすかを研究している。

この学会誌では、提案された偽腔血栓化のモデルと偽腔内の圧力の影響をアニメーション化したものを準備した。このアニメーションはhttp://www.nejm.orgでオンラインで利用するか、この学会誌のメディアリレーションオフィス(mediasupport@nejm.org)にリクエストして入手することができる。

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