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B型解離:わかっていること、わかっていないこと

ソース: http://evtoday.com/2016/11/type-b-dissections-what-we-know-and-what-we-dont/

翻訳はGoogle+より転載

B型大動脈解離(TBAD)は、病理や患者個人固有の特性の厳密な理解が必要となる、複雑な病態である。大動脈解離は、一般に、時系列の情報(急性、準急性、慢性)や臨床所見情報(合併症あり、合併症なし)に加えて、解剖学的基準によって分類される。解剖学的には、解離は、上行大動脈または大動脈弓が関与する近位部解離(スタンフォードA型、ドゥベイキーI型、II型)と、上行大動脈が関与しない遠位部解離(スタンフォードB型、ドゥベイキーIII型)に分類される。

スタンフォードおよびドゥベイキーの分類は十分に確立されており、観血的再建術と内科的治療のどちらがよいかなど、臨床意志決定のガイダンスを与えてくれるが、大動脈解離の血管内治療の時代において、これらにはさらなる臨床的支援が必要だ。
デイク等が提案したニーモニックベースのアプローチでは、胸部血管内大動脈再建術(TEVAR)を検討する際に、TBADの侵襲的治療の意思決定に影響を与える6つの要因を評価した:(1)症状発症後の持続期間、(2)主エントリ亀裂の位置、(3)大動脈のサイズ、(4)大動脈の関与する部分の範囲、(5)解離の合併症、(6)偽腔。

わかっていること

TBADのあらゆる患者にとって、よい内科的治療が不可欠

大動脈解離の患者の内科的治療は、高血圧・高心拍数・心室収縮による大動脈壁の応力を軽減することにより、TBADの進行を遅らせる。したがって、胸部大動脈疾患の患者の診断や管理に関するマルチソサエティ診療ガイドラインの示唆するこのような要因に取り組むためには、内科的治療を施すべきであり、大動脈解離の治療においては、β阻害薬が第一選択肢を代表する。急性解離の場合、このガイドラインでは、心拍数を60bpm未満に調整し、収縮期血圧を100~120 mmHgにして、低血圧と臓器潅流の間のバランスを達成することを推奨している。

急性の併発TBADの最善の管理はTEVARで実現されることが多い

急性併発B型解離の侵襲的管理は、過去20年で著しく変化し、耐久性に関する長期的なエビデンスはまだないものの、血管内再建術が治療の選択肢となっている(図1)。観血的手術による再建に比べると、TEVARには、手術死亡率や初期死亡率といった好ましい結果の意味で明瞭な利点がある。さらにTEVARは観血的手術に比較しよりすぐれたQOLを提供し、1年間のコストもより低い。したがって、併発TBADの症例の治療法の第一選択肢としては、TEVARを提供すべきである。観血的再建術は、結合組織系の障害を持つ患者にとっておくべきである。このような患者では以前、観血的再建術を使って素晴らしい結果が報告されている。

急性併発TBADのTEVAR治療の目標は、主エントリ亀裂をステントグラフトで塞ぎ、偽腔の血流を真腔に導くことにより、減圧を図ることである。真腔の圧縮や崩壊による臓器灌流不全や肢虚血の場合、血流を真腔に流すことは、影響を受けた臓器や腎臓側枝、あるいは腸骨動脈の再灌流にもっとも効果的である。

TBADを初期にTEVARで治療した際の、長期的な大動脈の組織修復はより優れている

「大動脈解離におけるステントグラフトの調査・長期間追跡を含む(INSTEAD-XL )」という研究において、TEVARは、最適な内科的治療のみと比べて、5年間の追跡期間の全死因死亡率(7% vs 19%; P < .05)および総直径の変化(27% vs 46%; P < .05)の抑制を実現することができた。INSTEAD-XLとIRADの両方が示唆しているのは、最適な内科治療単独にくらべて、TBADにおける好ましい組織修復が実現されているということだ。

わかっていないこと

合併症のないTBADとは

ここ数年間のいくつかの発表が示唆したのは、典型的なパラメータ以外に、合併症を伴うTBADを示す、破裂、55 mm以上の動脈瘤、臓器潅流不全などの解剖学的要因が、動脈瘤性拡張や後期の有害転帰を予測する、ということだ。TBADの後期合併症の予測因子は、胸部大動脈の40 mmを超える早期拡張、22 mmを超える偽腔の存在、サイズ10 mmを超える近位部のエントリ亀裂、および、大動脈内側の湾曲部における位置や左鎖骨下動脈との近さなどである。さらに、特に内科的に管理された場合、周期的な痛みや治療抵抗性の高血圧が、院内死亡率の増加に関係する臨床兆候として表れる。

急性TBADの治療に関係する、臓器潅流障害の正確な定義とは

コンセンサス論文やガイドラインでは、TBAD後の腎臓臓器潅流障害はただちにTEVARで治療すべきであることに合意しているが、臓器潅流障害の厳密な定義はまだ確立されていない。潅流は、全腎動脈の約20~30%の偽腔で発生し、CTスキャン中のdelayed uptake of contrast(コントラストの遅延吸収?)に結び付く。だが、腎臓臓器潅流障害のX線学的兆候のない患者の一部は、インデックス事象の後腎機能の悪化を経験する(図3)。腎動脈の超音波は有用な情報を提供するが、そこには、慢性の臓器潅流障害による腎機能の「静かな」悪化は含まれない。どの患者がTBAD後に慢性の腎臓臓器潅流障害を引き起こすかを、より正確に判断することが、最適な治療戦略を判断するうえで、重要な要因になってくる可能性が高い。

PETTICOAT技法は、大動脈の組織修復を促進する上で効果的か?

エントリ亀裂を覆う近位部のステントグラフトと、非被覆ステントとの組み合わせ(PETTICOAT技法)は、持続的な臓器潅流障害や真腔の崩壊を伴う患者に対する治療選択肢であり続けている。真腔の臓器潅流は、大多数の場合、メインの被服付きのステントグラフト部分を留置した後に達成されるが、あらゆる腎臓臓器血管の適切な血流を回復するために、追加の処置を必要とする患者もいる。
臓器潅流不全を減らすための臓器部分の被覆ステントグラフトより遠位部に自己拡張型非被覆ステントを移植するというコンセプトは正しいと見なされている。けれども、この技法はまだ比較研究で確認されていない。非被覆ステントを利用する可能な最適な臨床的状況に関する議論はまだ解決されていない。けれども、PETTICOAT技法は、胸部や腹部の大動脈にある偽腔の容積を有意に減らすことなく、真腔のより速い拡張を促進する。これこそが、後記の再介入のもっとも一般的な理由である。

逆行性の大動脈弓の関与を伴う急性B型解離をどのように治療すべきか

解離した大動脈の近位部にエントリのある急性TBADは、逆行性の壁内血種のため、大動脈弓(あるいは上行大動脈にすら)に影響を与えることがある。このような患者は、左頸動脈のoverstentingを伴う標準のTEVARの着陸ゾーンは大動脈の健康な部分には相当しないことを考えると、血管内手術と大動脈弓の観血的手術との間のグレーゾーンにある。最近のIRADの出版物では、大動脈弓の関与の存在は、血管内手術で治療された患者の早期・後期の結果に有意な影響を与えないことを示唆している。ただし、このコホートの患者でステント・グラフトで治療された者は少ないが。心臓血管外科医は、上行大動脈の壁内血種を、観血的手術の適応症と見なしている。それには上行大動脈の上冠状・部分弓部置換術も含まれる。この推奨は、主エントリ亀裂の位置によって変わることはなく、逆行性の大動脈弓や上行大動脈の関与の症例もTEVARで十分治療できる。逆行性のA型解離のリスクを減らすためには、このような患者を標準のTEVARで治療すべきか、それとも、観血性の大動脈弓の修復を推奨するべきか、と言う疑問に答えるための十分な証拠は現在まだない。

ステントグラフトに誘発された新たなエントリ亀裂を避けるためには、

大動脈近位部の左鎖骨下動脈の高さでの直径は、通常、遠位部のランディングゾーンの高さでの大動脈直径よりも大きい。大動脈遠位部の真腔の直径はより小さいことを考慮に入れずに、グラフトのサイズを近位部の直径に合わせたときの、真腔内の半径方向力を仮定するリスクは、ステントグラフトの遠心端における解離フラップの亀裂につながる可能性がある。ステントグラフトに誘発された新たなエントリ亀裂(SINE)は、偽腔を再加圧して、偽腔の拡大につながる可能性がある。この問題を解決するために、先細りの部品を使うと、遠位部のSINEの比率を減らし、長期的な結果の改善につながる可能性がある。スピア等は、クロワッサン型の真腔の長い側を利用して、ステントグラフトの遠心端のサイズを、大きすぎないように調節することを提案している。これは、筆者たちがSINEを避けるために従った推奨である。

TBADに介入する最善のタイミングは?

合併症のないTBADへのステント留置術に対する抵抗は、「INSTEAD XL」研究の結果によっておおむね減少したが、急性期(0~14日)におけるステント留置術が、最善の内科的治療に比べて、より否定的な結果に結びつくかどうかは、まだはっきりしていない。逆行性のA型解離はよりリスクが高いとみなされており、解離膜はより易損性があり、したがって再建もより複雑になるかもしれない。手術者のほとんどは、TBADに対するTEVARの時間枠を15~90日にすることを好んでいる。

慢性解離の治療における、偽腔閉塞療法および開窓型/分岐付きステントグラフトの役割とは

TEVARを施術した患者の3分の1では、解離した大動脈の動脈瘤性拡張が進行する。もっとも一般的に関与する部分は、胸部大動脈であり、その次は、腹部大動脈である。胸腹部大動脈の偽腔の潅流を完全に排除するために、胸腹部の開窓型/分岐付きステントグラフトに直接進むことは可能だが、この処置には熟練した血管内手術の技術が必要であり、高いエンドリーク率や脊髄虚血のリスクに結びついている。胸部大動脈だけが動脈瘤であり、偽腔の腹部だけが拡張している症例の大多数では、胸部を腹部から隔離することにより、再建を胸部大動脈だけに制限することは可能なように見える。これは、キャンディ・プラグ法やニッカーボッカー法のような偽腔閉塞技法を利用することにより実現できるが、コイルとプラグのような標準的な血管塞栓材によっても実現できる(図4)。

結論

急性期か慢性期かに関わらず、この複雑な疾患をよりよく理解する必要があるのは論じるまでもなく、これは依然として、医者が答えのない疑問に直面することの多い、物議を醸す話題であり続けている。

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