「ハウス・オブ・カード」にでてくる実在キャスター一覧
「ハウス・オブ・カード」というのは、Netflix制作の政治ドラマです。詳しい説明は他のサイトに譲りますが、その特徴の一つは、政界の権力闘争のダークな面を強調しているところです。ホワイトハウスの政治を扱ったドラマとしては、「ザ・ホワイトハウス」や「マダム・プレジデント」などもありますが、その点がこういった作品との大きな違いです。
そのようなダークな面の中には、世論誘導やマスコミの操作といった面も含まれるので、この作品では当然マスコミが大きな役割を果たしています。
そして面白いことに、ドラマに登場する活字メディアのほとんどは架空なのですが、映像メディアであるテレビ局は実在で、実在のテレビ局の実在のニュースキャスターが、そのまま本人の役で出演しています。これもいろいろ前例はありますが、ここまで徹底してやった作品はあまりないでしょう。またキャスターの所属する放送局も特定の局に限られておらず、代表的な局はだいたい網羅されています。これも特定の放送局にしばられないNetflixの利点の一つかもしれません。
ですが、国際的にも知名度の高い人も多い俳優にくらべると、報道関係者の知名度は国内に留まる傾向があるので、日本の視聴者にはピンとこない人も多いと思います。そこでこの記事では、このドラマ内本人役で登場したニュースキャスターたちを簡単に紹介してみたいと思います。作品鑑賞の一助になれば幸いです。
紹介の中でも触れますが、こういう番組やキャスターは出鱈目に選ばれているわけではなく、登場するシーンの状況に相応しい番組やキャスターが選ばれています。ですから、番組やキャスターの個性を知っていた方が、より深くドラマを理解できるはずです。
もちろん、こんな政治ネタに詳しくなっても、アニメやアイドルや鉄道に詳しい人より偉くなれるわけではありませんが、そういう知識が鑑賞に役立つ作品もあるのは確かなので。
なお、製作総指揮はあのデヴィット・フィンチャーだそうで、そういわれると、無機的な画作りや突き放した演出などに、なんとなくフィンチャー色が感じられるような気もしますね。
索引(分野別)
索引(登場順)
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PBS系
・グウェン・アイフィル(Gwen Ifill)
PBSというのは非営利の公共放送局で、イギリスのBBCや日本のNHKに当たる局です。そこで40年以上続いている平日夜のニュース番組が「PBSニュースアワー」です。これは今のNHKで言えば、「ニュースウォッチ9」のような番組と言えるでしょう。
そのアンカーを務めていたのがグウェン・アイフィル氏で、アフリカ系でしかも女性という不利な立場を乗り越えて活躍し、数々の賞を受賞したものすごい偉い人ですが、残念ながら、つい先日癌で亡くなりました。まだ61歳でした。亡くなったときには、オバマ大統領がコメントし、ミシェル夫人が葬儀に参列しました。
ドラマの中では、フランク&クレア対コンウェイ&ブロックハートの討論会の司会をしています。厳しい質問をするときでも決して礼儀や冷静さを忘れないことが氏の信条だったそうですが、この架空の短い討論の中でもその一端を感じ取ることができます。
ABC系
・チャールズ・ギブソン(Charles Gibson)
この人は、ABCで「グッド・モーニング・アメリカ」や「ワールド・ニュース・ウィズ・チャールズ・ギブソン」などの看板番組のアンカーを長年務めていましたが、5年ぐらい前に引退しました。日本で言えば、筑紫哲也クラスの大御所キャスターでしょう。
画面上に表示されているKBTGというのは、ABC系列の地方局の一つのようです。おそらく、ABC引退後の仕事として地方局のキャスターをやっているという設定なのでしょう。
ドラマの中では、フランクの暗殺未遂事件を報じています。画面上にも「PRESIDENT UNDERWOOD SHOT(アンダーウッド大統領狙撃される)」と表示されていますね。
このシーンでは、大御所キャスターの起用により、大統領暗殺未遂という大事件の報道にふさわしい重みが表現されています。「大統領が撃たれると言う事件は、私も過去に経験したことはありますが…」なんていう台詞は、若い人には言えない台詞ですよね。
・ジョージ・ステファノプロス(George Stephanopoulos)
この人は、ABCの日曜朝の政治討論番組「ディス・ウィーク」のホストです。この番組は、NBCの「ミート・ザ・プレス」と並んで、日曜朝の二大討論番組と言われています。
ステファノプロス氏は、クリントン政権で報道官を務めた経験もある、ABCの名物キャスターです。氏の司会は、わりと司会者が前に出るスタイルで、日本で言えば、田原総一朗さんが昔やってた「サンデー・プロジェクト」とかに近い感じがします(風貌もどことなく田原氏に似てますよね)。
このドラマには2回出てきます。1回目は、フランクがゾーイに書かせたイスラエルに関する記事を根拠にして、国防長官候補のカーンを追い込む役です。舌鋒鋭く追及するところに彼の個性が生かされています。
2回目は、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会を解説する番組の司会です。この番組には、後述のドナ・ブラジルとマシュー・ダウドもコメンテータとして出演しています。
・スコット・シューマン(Scott Thuman)
この人は、ワシントンDCにあるABCの系列局の政治記者の方みたいで、私もよく知らないのですが、エミー賞をとったこともある優秀な方のようです。
ドラマの中では、ウォーカー大統領の弾劾について、サヤド記者にインタビューする役をしています。下のキャプチャ画像の右側にサヤド記者が写っています。
・モリス・ジョーンズ(Morris Jones)
この人も、ワシントンDCのABC系列局でキャスターをしている方のようです。真面目そうな風貌がどことなく渡辺宜嗣さん似という感じがします。
このドラマには2回出てきます。1回目は、ゾーイの死亡を報じる役で、上のキャプチャ画像にもゾーイの写真が表示されていますね。2回目は、法律顧問のビル・ギャリックが聴聞会に召喚されたという地味なニュースを報じています。
・マシュー・ダウド(Matthew Dowd)
この人はABCの政治コメンテータです。政治的には、もともと民主党支持だったのが、ブッシュ政権時代に共和党支持に転向し、その後さらに無党派に転向したちょっと変わった人です。
ドラマの中では、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会の後の、ステファノプロス司会の番組でコメントしています。
CBS系
・モーリー・セイファー(Morley Safer)
この人は、40年以上の歴史を持つCBSの超有名ドキュメンタリー番組「60ミニッツ」の記者です。この番組は、日本でもTBSの深夜にピーター・バラカン氏の解説付きで放送していたので、ご存知の方も多いでしょう。「クローズアップ現代」のような調査報道番組というジャンル自体を切り開いた記念碑的番組です。
セイファー氏自身も、ベトナム戦争関連の大スクープで名を挙げ、エミー賞を12回も獲得した超名物記者でしたが、惜しくもつい先日亡くなりました。
とにかくあまりにも有名な番組ので、このドラマに限らず言及されることは多く、たとえば「ダイ・ハード」の途中で殺されるお調子者のエリスという男が「『60ミニッツ』観てるから」みたいな台詞を言うシーンとかがすぐ思い出されます。
ドラマの中では、ウォーカー大統領弾劾の件でフランクを厳しく問い詰める役をしています。セイファー氏のインタビューは、口調は穏やかながら核心を突く鋭い質問をすることで有名で、その個性がドラマにも生かされています。
フランク自身もこう言っています。
Morley, I've always liked you. You ask the tough questions.
モーリー、私は常にあなたを敬愛してきた。あなたは厳しい質問をする人だ。
・メジャー・ガレット(Major Garrett)
この人はベテランの政治記者さんです。CNN、FOX NEWSを経て、今はCBSのホワイトハウス担当記者になっています。
ドラマの中では、ウォーカー大統領が資金洗浄のことを知っていた、とタスクが証言した後の、議員や中国の反応を報じています。
NBC系
・メレディス・ヴィエイラ(Meredith Vieira)
この人は、NBC系列で放送されていた「メレディス・ヴィエイラ・ショー」という番組のホストです。この番組は、ニュース番組や政治討論番組というより、ワイドショーや情報バラエティに近いようです。日本で言うと、「王様のブランチ」とか「メレンゲの気持ち」みたいな感じでしょうか。
ヴィエイラ氏も、「ザ・ビュー」とか「トゥデイ」とか、あるいは、「クイズ・ミリオネラ」のアメリカ版「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」とか、数々の人気番組の司会を務めてきた有名な司会者です。
女性で硬軟両方いけるキャスターというのは、日本にはまだそんなにいない気もしますが、強いて言えば、有働由美子さんとか小野文恵さんみたいな感じでしょうか。
ドラマの中では、大統領予備選への出馬を表明したヘザー・ダンバーにインタビューする役を演じています。下のキャプチャ画像の一番左に座っているのがヘザー・ダンバーです。
・レスター・ホルト(Lester Holt)
この人は、「NBCナイトリーニュース」というニュース番組のアンカーです。これは平日夕方の帯番組で、50年近くの歴史を持つNBCの看板番組の一つです。日本で言えば、「スーパーJチャンネル」のような番組と言えるかもしれません。
ホルト氏も長いキャリアを持つベテランのキャスターで、外連味のない安定した進行をする人です。昨年夏には大統領討論会の司会も務めました。
このドラマにはほんの一瞬登場するだけで、顔もあまりはっきり写っていないのですが、上のキャプチャ画像を見るとホルト氏であることがわかります。
ドラマの中では、予備選の途中でフランクと喧嘩して、一人でワシントンに戻ったクレアが見ているテレビの中で、アイオワ州予備選直前のニュースを報じています。
・チャック・トッド(Chuck Todd)
この人は、NBCの日曜朝の政治討論番組「ミート・ザ・プレス」のホストです。この番組は、ABCの「ディス・ウィーク」と並んで、日曜朝の二大討論番組と呼ばれていますが、こちらの方が歴史は古く、始まったのはなんと70年も前です。現存する最長寿番組としてギネスブックにも載っているそうです。
トッド氏は、ステファノプロス氏の身を乗り出した感じに比べると、少し引いた感じの冷静な司会をする印象があります。
ドラマの中では、フランクがアム・ワークスをワシントンDCだけでなく全米に広げるという発表をした後で、二人の議員にインタビューして、アム・ワークスについて肯定的な発言を引き出す役をしています。
・ケリー・オドネル(Kelly O'Donnell)
この人は、NBCの中堅ぐらいの政治記者さんです。ドラマの中では、社会保障改革案の決議の際の欠席騒動を報じています。出てくるのは、ほんの一瞬、しかもこんな小さな画面にしか出てこないのですが、それだけのために本物の記者さんを使うこだわりには感心します。
・クリステン・ウェルカー(Kristen Welker)
この人もNBCの中堅ぐらいの政治記者さんです。ドラマの中では、負傷療養中のダグ・スタンパーが見ているテレビの中で、フランクのアム・ワークス計画に関する憶測を報じています。
・クリス・ローレンス(Chris Lawrence)
この人のことはあまり情報が見当たりませんが、たぶんNBCの系列局でキャスターをしてる人だと思います。このドラマでは、トマス・イェーツの見ているテレビの中で、アム・ワークスがハリケーンのせいで潰れたことを報じる役をしています。
MSNBC系
・クリス・マシューズ(Chris Matthews)
この人は、MSNBCの「ハードボール」という政治討論番組のホストです。これは平日夕方の帯番組で、日本にはあまり似た番組が見当たらないのですが、強いて言えば、国谷さん時代の「クローズアップ現代」でしょうか。
マシューズ氏はもともと政治家志望だったらしく、議員の秘書やスピーチライターなどを経て、40歳ぐらいになってから活字メディアの記者になり、50歳ぐらいで映像メディアに移って「ハードボール」を始めたという人です。
今ではもう70歳を超えていて、キャリア的には政治メディア界の主みたいな人なんですが、歳に似合わずかなりの早口でがんがん突っ込みを入れる元気なおじいちゃんです。
ドラマの中では、サヤド記者からタスクの資金洗浄疑惑についてインタビューする役をしています。
・レイチェル・マドー(Rachel Maddow)
この人は、MSNBCの「レイチェル・マドー・ショー」というニュース番組のホストです。これは夜の帯番組なので、日本で言えば「報道ステーション」なんかに近い位置づけでしょう。
マドー氏は最近頭角を現した次世代のホープで、ニコニコしながら早口で辛辣なコメントを連発する芸風。ゲイであることをカミングアウトしていて、リベラル派と見られています。
個人的にも、最近のキャスターの中では一番頭の切れる人だと思って見ています。昔で言えば久米宏。最近で言えばマツコ・デラックス(生物学的性別は逆ですが)。若手で頭が切れるという意味では、荻上チキさんぐらいのポジションと言ってもいいかもしれません。
ドラマの中では二回登場しています。1回目は、フランクが副大統領になった直後の、次の選挙までのつなぎでしょう、みたいなコメント、2回目は、タスクの資金洗浄疑惑に関するコメントをしていますが、こういう辛辣なコメントをする役には実にぴったりの人です。
・クリス・ヘイズ(Chris Hayes )
この人は、MSNBCの「オール・イン・ウィズ・クリス・ヘイズ」という番組のホストです。これも平日夜の帯番組ですが、ニュース番組というより討論番組です。この番組は2015年のエミー賞を受賞しています。
この人もまだ30代で冠番組を持っているのですから、期待のホープと言ってよいでしょう。元はリベラル系の「The Nation」などの雑誌で政治関係の時論を書いていたそうですが、レイチェル・マドーが休んでいるときに代打でホストを務めたことがきっかけで、今の仕事に抜擢されたそうです。
三白眼のせいで損しているような気もしますが、逆に言えば、一度見ると忘れられないインパクトの強い容貌が特徴です。
ドラマの中では、ミーガン(クレアと同様にマクギニス将軍にレイプされたことをカミングアウトした人)にインタビューする役をしています。下のキャプチャ画像の左側に写っているのがミーガンです。
・アリ・メルバ―&ペリー・ベーコン(Ari Melber & Perry Bacon)
これはMSNBCの「ザ・サイクル」という平日午後の帯番組で、男女2人ずつのホストが交代で司会をするというちょっと変わった番組です。
左側に映っているのが、そのホストの一人のアリ・メルバ―氏で、MSNBCの政治担当記者です。右側に映っているのが政治コメンテータのペリー・ベーコン氏で、この人はたまたまこの番組に呼ばれたという設定じゃないかなと思います。
ドラマの中では、レイチェルに岩で殴られて病院送りになったダグ・スタンパーが、病院でたまたま観ていたテレビの中で、フランクは大統領になったはいいが、最初から支持率が低くて先が思いやられるね、みたいなコメントをする役です。
CNN系
・ウルフ・ブリッツァー(Wolf Blitzer)
この人は、キャリアの長さから言っても、特徴ある白いお髭の顔から言っても、クリスティアーヌ・アマンプールやアンダーソン・クーバーと並ぶ、CNNの顔と言ってよいでしょう。CNNを観たことのある方なら、たいてい見覚えがあるんじゃないでしょうか。現在は、「ザ・シチュエーション・ルーム」という平日夕方の帯番組を主に担当しています。
お歳や見た目のわりには、飄々としたとぼけたところのあるお爺さんで、クリス・マシューズ氏なんかとはかなり芸風が違います。この人は記者出身のせいか、喋りにはそこまで自信がなさそうな感じで、そういう意味では、「NEWS23」の後藤謙次さんなんかと似たタイプと言えるかもしれません。
このドラマには2回登場しています。1回目は、フランク大統領の暗殺未遂事件を報道する役。2回目は、副大統領候補選挙の特番でジョン・キングと選挙の解説する役です。
・キャンディ・クローリー(Candy Crowley)
この人もCNNのベテランの政治記者さんです。このドラマの放送時は「ステート・オブ・ザ・ユニオン」という日曜朝の政治討論番組のアンカーをしていました。今は報道からは引退されて研究者の道に進んだようです。「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のアンカーは、後述のジェイク・タッパー氏が引き継いでいます。
「ステート・オブ・ザ・ユニオン」は、ABCの「ディス・ウィーク」、NBCの「ミート・ザ・プレス」、CBSの「フェイス・ザ・ネイション」、FOXの「フォックス・ニュース・サンデイ」と並んで、日曜朝の5大討論番組と呼ばれていますが、他はみなネットワーク系で、ケーブル系はこの番組だけです。
クローリー氏はこのドラマに二回登場しています。1回目は、教員組合のスピネラとのテレビ討論で、フランクが言葉に詰まって迷走した事件を報道する役。2回目は、セスがクレアとアダムの不倫の証拠写真を偽造だと主張したときの聞き手の役です。一番下の画像で、左側に立っているのがクレア、テレビ画面の中の左手奥に小さく映り込んでいるのがセスです。
・キャロル・コステロ(Carol Costello)
この人はCNNの中堅ぐらいのキャスターで、今は「CNNニュースルーム」という番組のホストの一人を務めています。これはCNNのようなニュース専門局によくある、一日中何回も流れる帯番組です。
このドラマでは、ヨルダン渓谷のPKOに参加していたロシア兵が殺されたというニュースを報じています。
・ジョン・キング(John King)
この人もCNNの中堅ぐらいのキャスターです。今は「インサイド・ポリティックス」という番組のアンカーを担当していますが、「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のアンカーだったこともあるし、他にもいろんな番組に顔を出します。
このドラマには、なんと3回も登場しています。1回目は、フランクにはめられて失脚したカーンに代わってデュラントが国務長官候補になったというニュースを報じています。
2回目は、アイオワの民主党予備選のフランク、ジャッキー、ヘザーの討論会の司会をしています。3番目のキャプチャ画像を見ると、3人の候補と一緒にキング氏が写っているのがわかります。非常に重要な役ですが、アメリカでは実際にテレビのキャスターがこのような討論会の司会を任されることは珍しくありません。
3回目は、副大統領候補選挙の特番で、ウルフ・ブリッツァーと一緒に選挙の解説役を務めています。このタッチパネルを使った解説はキング氏の得意技とされていて、実際の番組内でもよくやっています。
・ソルダッド・オブライエン(Soledad O'Brien)
この人をCNNの人扱いするのは、あまり適切ではないかもしれません。ハーバード大卒で、30代半ばでNBCの「ウィークエンド・トゥデイ」のアンカーになり、30代後半でCNNの看板番組「アメリカ・モーニング」のアンカーになり、40代でもう「スターティング・ポイント・ウィズ・ソルダッド・オブライエン」という冠番組を持ち、最近ではキャスターだけに飽き足らず、番組制作会社の経営まで手掛けるという才人です。
「スターティング・ポイント」は平日朝の帯番組で、日本で言えば、「とくダネ!」や「スッキリ!!」のような位置づけでしょうか。評論家の評価は高かったようですが、視聴率的には苦戦し、1年後に打ち切られてしまいました。打ち切りに関してはいろんな噂もあったようですが、ここでは割愛します。
このドラマでは、ゾーイのデュラントに関する記事がヘラルドの一面に載った後で、ゾーイにインタビューする役をしていますが、単なるヨイショではなく、結構厳しい質問をしているところに彼女の個性が生かされていると思います。
・アシュレイ・バーンフィールド(Ashleigh Banfield)
この人は、まだ40代ですが、CNNの姉妹局HLNで「プライムタイム・ジャスティス・ウィズ・アシュレイ・バーンフィールド」という冠番組を持っています。メガネがトレードマークで、認知度は結構高いようです。
バーンフィールド氏は、2000年頃からMSNBCで働いていて、2001年に9.11のアメリカ同時多発テロ事件に遭遇し、現場で実況中継している最中に、リアルタイムでWTCの7号棟が崩落するという経験をし、それで一気に有名になったようです。
その後はイラク戦争の取材に参加し、メディアの戦争報道を批判するような発言をして、NBCから干されたりした経験もあるそうです。だから、見かけによらすと言っては失礼かもしれませんが、なかなか気骨のある記者さんなんですね。
このドラマでは、クレアから過去のレイプ・中絶体験を聞き出すというかなり重要な役を演じています。相当な長時間自然に会話しているように見えますが、俳優さんじゃなくて、記者さんなんですよね。
・ジェイク・タッパー(Jake Tapper)
(「ハウス・オブ・カード」S3E2「第28章」より)
(「ハウス・オブ・カード」S4E9「第48章」より)
この人、二回も登場しているのにアップの画がないのですが、上のキャプチャ画像の二分割画面の左側にいる、マトリックスのエージェント・スミス似の人がジェイク・タッパー氏です。
この人はキャンディ・クローリー氏から「ステート・オブ・ザ・ユニオン」のホストを引き継いだ人です。他に「ザ・リード・ウィズ・ジェイク・タッパー」という冠番組のホストもしています。
まだ40代で、CNNの看板番組のホストに抜擢され、過去にもいろんな賞を取り、著作がベストセラーになったりもしているので、今後の活躍が期待されるキャスターの一人ではないかと思います。
このドラマには2回登場しています。1回目は、国連大使候補に指名されたクレアが、上院の聴聞会でメンドーサにはめられて失言した後、クレアを支持する議員が激減したというニュースを伝える役です。ここで出演している番組は、「ステート・オブ・ザ・ユニオン」ではなく「ザ・リード」の方でしょう。
2回目は、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後に、それについて論じる討論の司会役をしています。ここで出演している番組は、たぶん「ステート・オブ・ザ・ユニオン」だと思います。
・デイナ・バッシュ(Dana Bash)
この人もCNNの中堅ぐらいの政治記者さんで、CNNのいろんな番組に登場します。(余談ですが、プライベートでは、同じCNNのジョン・キング氏と結婚しています。)
このドラマでは、国連大使候補に指名されたクレアが、上院の聴聞会でメンドーサにはめられて失言した後、クレアを支持する議員が激減したというニュースを伝える役として、ジェイク・タッパー氏の「ザ・リード」に出演しています。
・ミシェル・コシンスキ―(Michelle Kosinski)
この人もCNNの記者さんです。まだ40代になったばかりですが、アフガニスタンの戦争やハイチの地震など、過酷な取材の実績を積んできた人で、エミー賞も受賞しています。
ドラマの中では、アイオワの民主党予備選の討論会直前のニュースを報じる役をしています。
・ドナ・ブラジル(Donna Brazile)
この人は、キャスターと言うより政治コメンテータで、特定の放送局に属しているわけではないのですが、CNNに登場することが多いので、便宜的にCNNに分類しました。
ブラジル氏は民主党員で、今では民主党全国委員会(DNC)の委員長というかなりのお偉いさんになっています。今年の選挙では、質問内容を事前にクリントン陣営にメールで教えていたことを、ウィキリークスで暴露されて問題になりました。
このドラマには2回登場しています。1回目は、フランクにはめられて失脚したカーンに代わってデュラントが国務長官候補になったというニュースにコメントしています。番組は「CNNニュースルーム」ですね。
2回目は、アイオワで行われた民主党予備選のフランクとジャッキーとヘザーの討論会にコメントする役として、ABCのステファノプロス司会の番組に出演しています。
・ポール・ビゲイラ(Paul Begala)
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、CNNの番組によく出演しているのでCNN系に分類しました。
ビゲイラ氏はもともと、ビル・クリントンのチーフ・ストラテジストをしていた人で、その後コメンテータになりました。だから、基本的に民主党寄りの人ですね。
ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後の、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。
銃についてコメントして保守派のS・E・カップ氏に突っ込まれているのは、ビゲイラ氏がリベラル派であることを生かした演出ですね。
・ヴァン・ジョーンズ(Van Jones)
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、CNNの番組によく出演しているのでCNN系に分類しました。
ジョーンズ氏はイェール大学法学部出身で、人権問題や環境問題などさまざまな政治運動に関わり、プリンストン大学の客員研究員を務め、オバマ政権の特別顧問にもなりました。まだ40代ですが、ベストセラーになった著書もあり、さまざまな賞を受賞しています。
ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後の、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。
この人は経歴からわかるように当然リベラル寄りなので、民主党のフランクを擁護する側に回っているのは、それを生かした演出ですね。
・S・E・カップ(S. E. Cupp)
この人も、キャスターと言うより政治コメンテータで、特定の放送局に属しているわけではないのですが、このドラマではCNNの番組に出演しているので、CNN系に分類しました。
ドラマの中では、フランクが副代表候補を党大会の選挙で決めると発表した後、ジェイク・タッパー司会の討論番組の中でそのニュースについてコメントしています。
この人は保守寄りなので、民主党のフランクに基本的に批判的だったり、銃についてコメントしたビゲイラ氏に突っ込みを入れたりしているのは、それを生かした演出ですね。
FOX NEWS系
・ショーン・ハニティ(Sean Hannity)
右寄りの報道で有名なケーブル局FOX NEWSの「ハニティ」という政治ニュース番組のホストです。平日夜の帯番組ですが、レイチェル・マドー氏の番組よりは遅い時間帯です。日本で言えば、「NEWS ZERO」や「NEWS 23」の右寄りバージョンといったところでしょうか。
ハニティ氏は、保守派ぞろいのFOX NEWSのアンカーの中でも、ビル・オライリー氏の次ぐらいに有名な人じゃないかなと思います。日本で言うと誰でしょう? 辛坊さんあたりかな?
ドラマの中では、タスクの資金洗浄疑惑に関するコメントをしていますが、その後続けて、リベラル派キャスターの代表であるマドー氏がコメントするシーンも入っています。ですから、アメリカのメディア事情を知っている人なら、これを見ただけで、政権が左右両翼から叩かれているということがわかるというわけです。
・グレッチェン・カールソン(Gretchen Carlson)
この人は、右寄りの報道で有名な(しつこい)ケーブル局FOX NEWSの「ザ・リアル・ストーリー・ウィズ・グレッチェン・カールソン」という報道番組のホストでした。この番組は、平日午後の帯番組でしたが、今年の夏で終了しました。
カールソン氏は、この番組の終了後、FOX NEWSのロジャー・エイルズCEOをセクハラで訴えて辞任に追い込み、和解金20億円相当を獲得して話題となりました。
この人も実は、スタンフォード大卒で、1989年のミス・アメリカに選ばれたというユニークな経歴の持ち主です。
ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであることを(おそらくセスのリークによって知って)報じる役をしています。
・ホワン・ウィリアムス(Juan Williams)
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、FOX NEWSの番組によく出演しているので、FOX NEWS系に分類しました。
ウィリアムス氏は、FOX NEWSに出演してますが、れっきとした民主党員で、公民権運動やサーグッド・マーシャル(アフリカ系初の最高裁判事)など、主にアフリカ系アメリカ人を主題にしたいろんな本を書いています。
ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであるというニュースにコメントする役をしています。
・モニカ・クローリー(Monica Crowley)
この人も、キャスターではなく政治コメンテータですが、FOX NEWSの番組によく出演しているので、FOX NEWS系に分類しました。
この人は保守派で、しかも、かなり早い時期からトランプ支持を鮮明にしてました。そのせいかどうか知りませんが、当選後に、トランプ政権の国家安全保障会議(NSC)の上級広報戦略部長(senior director of strategic communications)に指名されました。
ドラマの中では、クレアが単身でテキサスに乗り込んだ理由がフランクとの仲違いであるというニュースにコメントする役をしています。
Bloomberg
・ジュリアナ・ゴールドマン(Julianna Goldman )
(「ハウス・オブ・カード」S2E13「第26章」より)
(「ハウス・オブ・カード」S3E12「第38章」より)
この人はこのドラマ放映当時は、経済ニュース専門局ブルームバーグの記者でしたが、今はCBSに移籍しています。まだ30代ですが、将来を嘱望されている優秀な記者さんのようです。
このドラマには2回登場しています。1回目は、ウォーカー大統領が資金洗浄のことを知っていた、とタスクが証言した後の反響を報じる役、2回目は、アイオワ州の大統領予備選の直前の世論調査を報じる役です。
Al Jazeera系
・シハブ・ラッタンシ(Shihab Rattansi)
ついにAl Jazeeraの人まで出てきました。Al Jazeeraというのは、中東カタールを本拠地とする衛星テレビ局で、アラビア語だけでなく英語でも放送をしています。欧米のテレビ局が優位な英語ニュースの世界にあって、孤軍奮闘でイスラム圏アラブの視点からニュースを送り続けている貴重な局です。
この人はAl Jazeeraのいろんなニュース番組に出ている人のようです。歌舞伎役者みたいな押し出しの強い顔で、高橋英樹とか二谷英明とか、最近の日本には少なくなった昔の二枚目って感じですよね。
このドラマでは、ヨルダン渓谷でロシア兵が殺された後、イスラエル軍がヨルダン渓谷に侵入したというニュースを報じています。中東のニュースに関してはAl Jazeeraをチェックする人が多いので、リアリティを求めればこうなるのはわかりますが、アメリカのテレビ局とはまったく系列の違う局にまで協力を求めるこだわりには感心します。
コメディアン系
・デニス・ミラー(Dennis Miller)
この人はアメリカではかなり有名なコメディアンです。政治家やセレブをネタにしたコントで悪名高い「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」という番組で頭角を現し、その後は数々の冠番組を担当しています。
「デイリーショー」や「サウスパーク」などを放映したコメディ・セントラルと言うコメディ専門のケーブルテレビ局がありますが、そこで作成した「歴代の偉大なスタンドアップ・コメディアン・ランキング」でも21位にランクされています。
政治的には、若い頃はリベラルだったんですが、最近になって保守派に転向したようです。このドラマに出てくる番組も、おそらく、保守派大物キャスターとして有名なビル・オライリーがFOX NEWSでやっている「ザ・オライリー・ファクター」という番組の中の1コーナーの「Miller Time(ミラーの時間)」ではないかと思います。
ドラマの中では、教員組合のスピネラとのテレビ討論で突然に母音がどうこう言いだして迷走したフランクを嘲笑するようなコメントをしています。
普通のキャスターではなくコメディアンがコメントすることで、フランクの失敗の無様さをより強く印象付けていますね。事情に疎い日本の方は、アメリカのキャスターは皆こんなきついこと言うのかと勘違いしたかもしれませんが、彼はあくまで毒舌が芸風のコメディアンなのです。
・ビル・マー(Bill Maher)
この人もアメリカではかなり有名なコメディアンです。年齢やキャリアからして、後述のスティーブン・コルベアやジョン・スチュワートがダウンタウンやとんねるずの世代だとすると、この人やデニス・ミラーは明石家さんまや島田紳助ぐらいの世代に相当します。つまり大御所です。
「デイリーショー」や「サウスパーク」などを放映したコメディ・セントラルと言うコメディ専門のケーブルテレビ局がありますが、そこで作成した「歴代の偉大なスタンドアップ・コメディアン・ランキング」では38位にランクされています。
ドラマに出てくる番組は、HBOの「リアル・タイム・ウィズ・ビル・マー」で間違いないでしょう。これはゲストとの討論が主体の番組です。
後述のコルベアの番組なんかもそうですが、ゲストにはオバマやサンダースやマイケル・ムーアなど錚々たるメンバーが来て、結構ガチで討論しています。日本で言えば「テレビ・タックル」みたいな番組ですが、トークの内容はこちらの方が上だろうと個人的には思っています。
ドラマの中では、デニス・ミラーと同様、教員組合のスピネラとのテレビ討論で突然に母音がどうこう言いだして迷走したフランクを嘲笑するようなコメントをしています。
・スティーブン・コルベア(Stephen Colbert)
この人はもう、アメリカでは超有名なコメディアン(のはず)です。彼の評価を決定的にした「ザ・コルベア・レポー」という冠番組は、約10年の歴史の中で7回もエミー賞を獲得しています。個人的にも大好きな芸人で、このブログでも過去何回か取り上げています。
この番組でコルベア氏がやっていたのは、要するに、保守派評論家による保守派向け番組のパロディです。たぶん、メインのモデルはずばり、ビル・オライリー氏の「ザ・オライリー・ファクター」でしょう。つまり、オライリー氏が「ザ・オライリー・ファクター」で言いそうなコメントをマネして言う、というのが彼の芸風です。
この芸はかなり微妙な芸で、どのくらい微妙かというと、ある保守派の評論家が、「自分はコルベアが好きだ。なぜなら、自分が考えているのと同じようなことを言ってくれるからだ」と言ったぐらいです。
それだと、単に本物の保守派評論家を観てるのと変わらないんじゃないのか、と思うかもしれませんが、そこにはやはり微妙な誇張があって、その誇張がおかしみを生んでいるのです。極めて繊細で知的な芸だと思います。
このドラマに出てくる番組も「ザ・コルベア・レポー」です。その中でコルベアは、ゲストのフランクのアム・ワークス計画について、「それって社会主義?」みたいな突っ込みを入れていますが、これもまさに保守派が言いそうな典型的な批判をあえてマネして言っているわけです。
それを見てダグ・スタンパーが笑っていますよね。このシーンをコルベアの芸風を知らない人が見ると、フランクが批判されているのを見て喜んでいるなんて、ダグは本当はフランクが嫌いなのか、と深読みしてしまうかもしれませんが、違います。ダグはアメリカ人で政治にもメディアにも詳しいわけですから、当然コルベアの芸風なんか熟知しているに決まっていて、だから笑っているのです。その意味で、このシーンは実は、とてもハイコンテキストなシーンなのです。
「ザ・コルベア・レポー」は残念ながら2015年で終了し、その後コルベアは、これまた有名なコメディアンであるディビッド・レターマンが20年以上も続けていたCBSの「レイト・ショー」のホストを引き継ぎました。ケーブル局のカルト的な番組からネットワーク局の看板番組に移ったわけで、名実ともに超一流のコメディアンの地位を確立したと言えるでしょう。
このコルベアの「レイト・ショー」には、昨年日本の「BAYBYMETAL」というバンドが出演し、スタジオライブを行ったことが話題となりました。そのせいで、コルベアのことを「BAYBYMETALが出演した番組の司会の人でしょ」みたいに認識している日本の方も多いようです。
まあ、別に間違ってはいませんし、どう認識しようと余計なお世話ですが、コルベアってこんなにすごい芸人なんだよ、ということも少しは認識していただけると、私のようなファンとしては嬉しいです。
ミュージシャン系
・プッシー・ライオット(Pussy Riot)
この3人は、ロシアの実在のミュージシャンであり政治活動家のグループである「プッシー・ライオット」のメンバーです。上のキャブチャ画像の左から、
- ナジェージダ・トロコンニコワ(Nadezhda Tolokonnikova)
- ピョートル・ベルジロフ(Pyotr Verzilov)
- マリア・アリョーヒナ(Maria Alyokhina)
彼らの政治的主張は、主に、フェミニズム、LGBTの権利、そして、「独裁者」プーチン大統領の批判です。
「プッシー・ライオット」のメンバーは十数人いると言われていますが、基本的に匿名で、演奏の時も目出し帽で顔を隠しています。そのようなスタイルで、無許可でゲリラライブを行い、その模様を動画にしてネットに公開する、というのが彼らの活動のやり方のようです。
2012年には、救世主ハリストス大聖堂でゲリラライブを行ったことが「フーリガン行為」とされ、メンバー3人が逮捕されました。そのうちの2人が、トロコンニコワとアリョーヒナでした。逮捕され裁判にかけられたために、名前が公になったのでしょう。真ん中の男性のベルジロフは、演奏メンバーではありませんが、トロコンニコワの夫で、バンドのスポークスマン的な役割を務めています。
この事件は、政治弾圧や人権侵害の疑いで国際的な問題となり、彼女たちも国際的な有名人になりました。二人は禁固2年の実刑となりましたが、2013年の末に釈放されました。
ドラマの中では、フランクとペトロフとの晩餐会に招待され、席上でペトロフを真っ向から批判して、乾杯のグラスの中身をぶちまけて退出するという役を演じていますが、これはほとんど、彼らの現実の反プーチン活動そのままなわけです。
だから、彼らをこのように実名で登場させるということは、ペトロフのモデルがプーチンであると言っちゃってるようなもので、いいのかよ、という気もしますが、オバマだってウィキリークスの背後にプーチンがいるとか言っちゃってるわけだから、まあいいんでしょうねえ。
実は、彼らの登場シーンはこれだけではなく、この回(S3E3)のエンディングの作曲と演奏も彼らがしています。この曲はなんと、このドラマのために作った新曲だそうです。しかも、この曲はこの回1回しか使われてないわけで、なんと贅沢な演出かと驚かされます。
一番下のキャプチャ画像のアリョーヒナの周囲には、目出し帽をかぶった人がたくさん写ってますが、これこそ「プッシー・ライオット」の演奏スタイルなのです。ちなみに、この作曲と演奏には、後述の「ル・ティグラ」も参加しています。
・ル・ティグラ(Le Tigre)
このバンドは、エレクトロクラッシュと呼ばれるスタイルで、フェミニズムやLGBTをテーマにした歌詞を歌うバンドで、90年代の「ライオット・ガール(Riot grrrl。girlではない)」というムーブメントの流れを汲んでいるそうです。
上のキャプチャ画像の眼鏡と帽子の人が、JD・サムソン(JD Samson)です。ぱっと見、ジェンダー的には男性に見えますが、生物学的には女性です。つまりトランスジェンダーのゲイの人です。
下のキャプチャ画像の中央でマイクを持っている人が(字幕が被さって顔がわかりにくいですが)ジョアンナ・フェイトマン(Johanna Fateman)です。(ちなみに、この人の父親は、リチャード・フェイトマンというコンピュータ科学者で、知る人ぞ知るMacsymaという数式処理システムの開発者です。)
ドラマの中では、前述のプッシー・ライオットと一緒に、S3E3のエンディングを共作・共演しています。ロシアのLGBT差別は、この後の数回のエピソードのテーマの一つになるわけで、プッシー・ライオットとル・ティグラの共演は、まさにそのテーマにぴったりの演出になっているわけです。
・ピーター・シンコッティ(Peter Cincotti)
ペトロフとの晩餐会でピアノの弾き語りをしているこの人、「The Birth Of The Blues」なんて古いスタンダードを弾いているので、知らない人から見るとよくいる専属のハコバンに見えるかもしれませんが、実はメジャーでCDを何枚も出しているその筋ではかなり有名なミュージシャンです。
まだ18歳の高校生の頃からマンハッタンのクラブで演奏を始め、ニューヨーク・タイムズ紙には「最も将来を嘱望される次世代の弾き語りアーティスト」と評され、デビュー・アルバムはビルボードのジャズ・チャートで1位になりました。
フランクもペトロフも「シンコッティさん」と名指しで呼びかけていますが、それも当然で、それだけ有名な人なのです。
フランクが実はブルースが好きだという設定は、お気に入りのリブ・ステーキ店の店長フレディの家に行った時(S2E9)なんかにも、ちらっと出てきましたよね。
・レイチェル・プライス(Rachael Price)
フランクが始球式を務めた野球の試合でアメリカ国歌を歌っているこの人も、「レイク・ストリート・ダイヴ」というバンドでリード・ボーカルを務めているジャズ・シンガーです。
このバンド、一見すると素朴なカントリーバンドにも見えますが、メンバーは全員がニューイングランド音楽院という名門の卒業生であり、「ビートルズとモータウンを融合したような」ポップでなおかつ渋い音楽を目指しているようです。日本でも知る人ぞ知るという感じで、結構ファンは多いようです。
シンコッティ氏もそうですが、こういうわりと誰がやってもよさそうなところでも「知る人ぞ知る」ミュージシャンを使っているところなんかも、贅沢で洒落た演出になっていますね。
新聞系
・マット・バイ(Matt Bai)
冒頭で活字メディアのほとんどは架空の人物と書きましたが、この人だけは例外で、れっきとしたニューヨーク・タイムズ紙の記者さんです。また現在ヤフー・ニュースにも「マット・バイの政治の世界(Matt Bai's Political World)」というコラムを連載しています。
このドラマには2回登場しますが、2回とも役割は同じで、(クレアと同じようにマクギニス将軍にレイプされたことをカミングアウトした)ミーガンに取材する役です。上のキャプチャ画像は、セスから取材の依頼を受けているところ、下のキャプチャ画像はミーガンに取材しているところです。活字メディアの人にしては自然な演技ですよね。
法曹系
・ニール・カティヤル(Neal Katyal)
この人はイェール大学の法学部を出た法律家で、オバマ政権で訟務長官という重要なポジションを務めていた人です。訟務長官というのは、アメリカの連邦政府が裁判で訴えられたときなどに、政府の代理人として最高裁で弁論をする役割の人です。
カティヤル氏はインド系であり、アフリカ系初の最高裁判事であるサーグッド・マーシャルに次いで、最高裁で多くの弁論を行ったマイノリティ系の人と言われています。
ドラマの中では、フランクの命令による無人機の攻撃で兵士が負傷した事件について、最高裁判所に訴える役をしています。上のキャプチャ画像の中央がカティヤル氏で、左隣に座っているのがヘザー・ダンバーです。ダンバーはフランク政権の訟務長官ですから、つまり、カティヤル氏が現実に務めていたのと同じポジションの人を演じているわけです。
後記
この記事、書き始めたときはちょっとした小ネタのつもりで、採り上げるのは10数人か多くても20人ぐらいだろうと思っていたんですが、ちゃんと調べていくと出るわ出るわで、結局は50人近くになってしまいました。
こんなことならやるんじゃなかった、と途中で完全に後悔しましたけど、中途半端で止めるのももったいないので、乗り掛かった舟で最後までやりました。
まあ、アメリカのキャスターの紹介記事を日本語で50人分も書いた人はあまりいないでしょうから、なんかしらの存在価値はあるんじゃないでしょうか。
紹介した人の中には、グウェン・アイフィルやモーリー・セイファーのように歴史的偉人クラスの人や、レイチェル・マドーやビル・マーやスティーブン・コルベアのように個人的にファンでよく見ている人もいましたが、なんとなく見覚えがあるだけの人や、まったく知らない人もいました。
そんなわけですから、半分ぐらいは泥縄式で後から調べて書いています。もし間違った記述があれば、コメントなどで指摘していただければ、できる範囲で対処したいと思います。
あと、Wikipediaの英語版を見ると、MSNBCの「モーニング・ジョー」のホストであるジョー・スカーボロが出ているという記述があるのですが、ドラマを何回見直しても出演シーンを発見できませんでした。そのため、今回は残念ながら割愛しています。もし見つかったら追記する予定です。
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