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「SHERLOCK」の作者は「名探偵ホームズ」を観たか?

SHERLOCK/シャーロック シーズン2 [DVD]  「SHERLOCK」は、イギリス BBC 製作のドラマで、NHK BS などでも放映されたので日本でもご存知の方も少なくないだろう。推理小説の古典中の古典シャーロック・ホームズを、現代のロンドンを舞台としてドラマ化したユニークな作品である。

 そのシーズン 2 の第 2 話「バスカヴィルの犬(ハウンド)」の DVD コメンタリーの中で、「SHERLOCK」の脚本家の一人でありマイクロフト・ホームズ役として出演もしているマーク・ゲイティスが以下のようなコメントをしている。

Have you ever seen that Sherlock Holmes Jack Russell series? There’s a series where a little dog investigates with a deerstalker hat on. And actually some of them are quite close to the originals, but with a dog! And one of them is Irene Adler! To Sherlock Holmes, she was always a bitch!

(拙訳)シャーロック・ホームズのジャック・ラッセル・シリーズって観たことある? 小犬が(ホームズのトレードマークの)鹿撃ち帽をかぶって捜査するシリーズがあるんだよ。その何作かはかなり原作に近いんだけど、演じているのは犬なんだよ! そしてその内の一人はアイリーン・アドラー。だからシャーロック・ホームズにとって、彼女は常に雌犬(ビッチ)ってわけさ。

劇場版 名探偵ホームズ [DVD]   このコメントを聞いた日本人の多くは、直感的に宮崎駿監督のアニメ「名探偵ホームズ」を連想したようで、ネットを検索するとその趣旨の発言がいくつも見つかる。実は私自身も宮崎ファンなので、最初に連想したのはやはり「名探偵ホームズ」であった。

 しかし、念のため調べてみると、もう一作品有力な候補があることがわかった。それは、アメリカの PBS で放映されていた「Wishbone」という実写ドラマのシリーズだ。

Wishbone [DVD] [Import]  これは、アニメじゃなくて生身のジャック・ラッセル・テリアが、いろんな名作文学の主人公を演じるというシリーズらしく、その中でホームズも数回取り上げられているのだ。

 実際、英語で検索してみると、マーク・ゲイティスが言及したのは「名探偵ホームズ」ではなく「Wishbone」だと思っている人の方が多いようである。 

 いずれにせよ日本人には馴染みの薄い作品なので、どちらが妥当かこれ以上追求するのは難しいかなあ、と思っていたのだが、YouTube を検索してみたら該当作品の動画を発見することができた(合法か違法かは知らないが)。 

(訂正:日本には馴染みがないとか書いてしまったが、さらに調べてみると、「夢見る子犬ウィッシュボーン」というタイトルで NHK 教育で放映されていたらしい。私が知らなかっただけだった。ごめんなさい。)

 そこで、この動画を含めてネットから入手できる範囲の情報に基づいて、マーク・ゲイティスの言及した作品が「名探偵ホームズ」と「Wishbone」のどちらである可能性が高いか、シャーロックの向こうを張って「推理」してみたいと思う。

・ジャック・ラッセル・テリアか?

 「名探偵ホームズ」の主人公は犬種がはっきりしない。現にマーク・ゲイティスの発言から「名探偵ホームズ」を連想した人の中にも、「あれってジャック・ラッセル・テリアだったっけ」みたいな発言をしている人がいる。絶対にジャック・ラッセル・テリアでないとも言えないが、絶対にジャック・ラッセル・テリアであるとも言い難い。一方、「Wishbone」の主人公はジャック・ラッセル・テリアであることが明記されている。

 もしマーク・ゲイティスが観たのが「名探偵ホームズ」だとしたら、「シャーロック・ホームズのジャック・ラッセル・シリーズ」などという言い方をするだろうか? 「シャーロック・ホームズを犬が演じるシリーズ」ぐらいの方が自然ではないだろうか?

この点に関する判定:「Wishbone」の勝ち

シリーズ物か?

 「Wishbone」はシャーロック・ホームズだけを題材にしたシリーズではない。もともとトムソーヤーだのシラノだのドン・キホーテだのファウストだの、いろんな文学作品を題材にしたシリーズで、その一部としてシャーロック・ホームズも取り上げられているにすぎない。一方、「名探偵ホームズ」は完全にシャーロック・ホームズだけを題材にしたシリーズである。

 もしマーク・ゲイティスが観たのが「Wishbone」だとしたら、「シャーロック・ホームズのジャック・ラッセル・シリーズ」などという言い方をするだろうか? 「犬がいろんな文学作品の主人公を演じるシリーズがあって、その中でシャーロック・ホームズも取り上げられている」ぐらいの方が自然ではないだろうか?

この点に関する判定:「名探偵ホームズ」の勝ち

・アニメか実写か?

 「名探偵ホームズ」はアニメであり、「Wishbone」は実写である。マーク・ゲイティスは自分が観た作品をアニメとも実写とも明言していない。だがもしアニメだったら、ここまで珍しい話のように紹介するだろうか。動物が探偵役を演じるアニメなどそれほど珍しくもないだろう。一方、実写で生身の犬が探偵を演じる作品がそれほど多くないことも想像がつく。珍しい話として紹介するのだったら、「Wishbone」の方がよりふさわしいのではないだろうか?

この点に関する判定:「Wishbone」の勝ち

・アイリーン・アドラーは登場するか?

 アイリーン・アドラーというのは、シャーロック・ホームズ全作品の中で、ホームズが唯一まんまと出し抜かれて以後一目置くようになった女性として有名だ。したがってファンの人気も高く派生作品にもよく登場する。

 だが、「名探偵ホームズ」にはどうやらアイリーン・アドラーが登場していないらしいのだ。一方、「Wishbone」の中には、「ボヘミアの醜聞」を原作とする「A Dogged Expose」というエピソードがあって(上の YouTube ビデオがそれ)、アイリーン・アドラーも登場する。

この点に関する判定:「Wishbone」の勝ち

・アイリーン・アドラーは犬か?

 マーク・ゲイティスは、自分が観た作品の中ではアイリーン・アドラーも犬だったような発言をしている。ところが、「Wishbone」に登場するアイリーン・アドラーは犬ではないのだ。「Wishbone」で犬が演じているのは基本的に主人公だけで、他の登場人物はみな人間の俳優が演じている。そのことは、上の YouTube ビデオでも確認できる。

 ただ、このマーク・ゲイティスの発言自体別の解釈も可能ではある。彼はアイリーン・アドラーが犬だと断言しているわけではなく、シャーロック・ホームズから見ればアイリーン・アドラーは雌犬(ビッチ)だと言っているにすぎない。だから、犬から見れば人間だろうと犬だろうと女性はみんな雌犬だ、とかそんな意味で言っている可能性もなきにしもあらずだろう。

この点に関する判定:「名探偵ホームズ」の勝ち

 ・結論

 結局、入手できる範囲の情報からは、マーク・ゲイティスが言及した作品が「名探偵ホームズ」か「Wishbone」か、はっきりと断定することはできなかった。単純に勝星を計算すれば、2 対 3 ということになるが、そんな機械的な方法で決められる事ではないのは言うまでもない。ただ、あのコメンタリーだけで「名探偵ホームズ」と断定するのは早計かもしれないよ、ぐらいのことは言っておきたいと思う。もちろん、そのことが両作品の質の優劣とはまったく無関係であることは言うまでもない。

(おまけ)

 ホームズファンには有名な「バリツ」の元ネタとも言われる「Bartitsu」の解説動画を発見したので、ついでに貼っておく。

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