「カイジ」456サイの確率分布
「カイジ」の「破戒録篇」に出てきた 456 サイのアイデアが面白かったので、Google Doc 上でいろんな確率を計算してみた。
Google Doc で公開しただけだと、検索にひっかかり難いみたいなので、このブログからもリンクしておくことにする。
- 「カイジ」456サイの確率表(Google Doc 版、Web 版)
ネット上で似たような計算をしてる人はたくさんいるんだけど、配当の確率分布や期待値まできっちり計算してる人は見当たらなかったので、そのへんに興味のある人はチェックする価値があるんじゃないかと思う。
(前に別の記事でも指摘したことがあるが、一般の統計好きの人は、統計分析というと期待値を計算しただけで満足してしまう傾向がある。でも、期待値というのは、確率分布の数多くの属性の一つでしかない。極めて重要な一つではあるが。だから、できれば標準偏差や確率分布そのものまで計算した方が、現象への理解も深まるということを知っておくとよい。)
このページは計算結果を羅列してあるだけなので、分り難いと感じる人も多いかもしれない。時間があれば、もっとわかりやすく整理して書き直すかもしれない。期待しないでお待ちください。
結論だけ引用しておくと、456 サイと普通のサイで勝負したときの、配当の期待値は、
0.896
確率分布は、
である。そう聞くと「なんだ元本割れかよ」と思う人もいるかもしれないが、もちろん違う。
チンチロリンというのは、博打の中では配当のルールが少し特殊で、倍払いや三倍払いといった、掛け金より損害が多い配当がある。だから、期待値を計算する際にも、他の博打のように倍率で計算すると、マイナスの倍率という見慣れない概念を導入しなければならなくなる。
ここではそれを避けるため、倍率ではなく、所持金の増減量が掛け金の何倍かで期待値を測っている。つまり、引き分けが 0、通常の勝ち負けはそれぞれ ±1、倍付け倍払いはそれぞれ ±2、3 倍付け 3 倍払いはそれぞれ ±3 と評価している。
だから、0.896 というのは、平均して掛け金の 0.896 倍を受け取れるという意味で、通常の倍率で言えば 2 倍弱に相当する。 やはり相当割りのいい博打と言える。
456 サイにはピンゾロがないから、意外と得じゃないのでは? と思った人もいるようだが、上のグラフを見ればわかるように、ピンゾロの確率が低過ぎて期待値にはほとんど影響していない。 むしろ、倍付けでもなんでもない目の大小や目無しで勝つ確率の大きさが、最も期待値に影響していることがわかる。このへんも確率分布を計算してみることの効用である。
あと、この計算では、作中には明記されていない仮定をしていることにも注意してほしい。一般的なチンチロリンのルールでは、親がゾロ目や123・456を出した場合には、子がサイを振ることなく親の総取り・総払いで勝敗が決する。したがって、親と子がゾロ目同士などで対決することはあり得ず、その場合にどちらが勝つかのルールは、特に定まっていない。
「カイジ」の「地下チンチロ」では、親の出した目に関わらず子も必ずサイを振るルールなので、この点のルールも定まっているはずだが、作中では詳細は明記されていない(ピンゾロ同士が引き分けというのは黒崎が明言しているが)。ここでは、一般に配当の多い目の方が強いと仮定している。
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