吉見と浅尾の WPA を計算してみたい
前回の記事では、記録の上では吉見の方が上で、浅尾はイメージだけみたいな書き方をしたが、先日紹介したセイバーメトリクスの WPA のような指標を使えば、おそらく吉見と浅尾はそう遜色ないのではないかという気がする。
日本には多分まだないが、アメリカには WPA をリアルタイムで計算して公開している FanGraphs というウェブサイトがある。そのサイトのデータによると、2011 年のメジャーの投手のうち、WPA 1 位は Justin Verlander という先発型の投手だが、2 位の Tyler Clippard という投手はセットアッパーである。
名前 | チーム | WPA | 勝 | 負 | SV | HLD | 投球回 | 防御率 |
Justin Verlander | Tigers | 5.14 | 24 | 5 | 0 | 0 | 251 | 2.4 |
Tyler Clippard | Nationals | 5.01 | 3 | 0 | 0 | 38 | 88.1 | 1.83 |
なぜ投球回数が 3 倍も違うのに、WPA はあまり違わないかというと、WPA の場合、同じイニングを抑えても、試合後半や得点差の少ないときのプレイの方が、試合前半や得点差の大きいときのプレイより高く評価されるからだ。
そのせいか、先発投手と救援投手の WPA は分けて考えるべき、と主張している人もいるし、その補正方法も提案されているようだ。
でも WPA というのはもともと、そういう異なる種類のプレイを統一的に評価するための指標なので、限界に留意しつつも参考のために比較してみることは悪くないと思う。
ちなみに、今日(2011.10.20)現在の吉見と浅尾の成績はこのようになっている。
名前 | チーム | WPA | 勝 | 負 | SV | HLD | 投球回 | 防御率 |
吉見 一起 | ドラゴンズ | ??? | 18 | 3 | 0 | 0 | 190.7 | 1.65 |
浅尾 拓也 | ドラゴンズ | ??? | 7 | 2 | 10 | 45 | 87.3 | 0.41 |
この 2 つの表を比べてみれば、吉見と浅尾の WPA がそれほど遜色ない可能性はおおいにあることがわかる。
もし時間ががあれば、自分でもこの 2 人の WPA の推定値をなんとか計算してみたいが、同時にこれを機会に、中継ぎ投手の評価方法に関する議論が深まることを期待したい。
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