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剣菱最強伝説の謎

 今回は同世代の人だけに向けて書く。ぼくが幼少の頃「サケブタ」というものが流行したことがあった。漢字で書くと「酒蓋」。つまり日本酒のビンの蓋のことである。

 ビンの蓋は山高帽子のような形をしていて、帽子のつばにあたる部分が金属製の円盤、山(クラウン)にあたる部分がコルクないしプラスチックでできている。この山の部分を切り落とすと、ちょうどコインのような金属の円盤だけが残る。これを収集してゲームに使うのである。

 遊び方はこんな感じだった。一対一の対戦ゲームで、まず二人の子供がそれぞれ自分のサケブタ・コレクションの中から好きなものを代表として選び、先攻・後攻を決める。後攻の子は自分のサケブタを床に置き、先攻の子は自分のサケブタの縁を相手のサケブタの縁に上から強く押し付ける。すると後攻のサケブタは「パチン」という感じで跳ね飛ばされる。それが着地したときに、裏返っていれば後攻の負けで、その子のサケブタは先攻の子に没収される。裏返っていなければ、攻守を入れ替えてもう一度プレイする。これを決着がつくまで続ける。

 今考えると「それってそんなに面白いか?」という気もするが、子供がコレクション性のあるものに弱いのは万古不変の真実のようだ。そんなわけで、一時期は毎日のように近所の酒屋に行ってサケブタを貰ったり、あまつさえ、置いてある酒瓶から勝手にサケブタをくすねたりしていた。これは順法精神の欠如した昭和という野蛮もしくは古き良き時代の話であるから、現代のよい子のみんなは決してマネしてはいけない。

 今考えると不思議なことはもう一つあって、サケブタにはなぜか序列があったのだ。かすかな記憶を頼りに書くと、確かこんなだった。

  1. 剣菱(黒)
  2. 剣菱(赤)
  3. 菊正宗(縁がギザギザ)
  4. 菊正宗(縁がツルツル)

傍証を得ようと思って検索してみたところ、菊正宗についての証言は見当たらなかったが、剣菱が最強だったという証言はいくつか見つかった。

上の写真にもあるように「大関」「白雪」というお酒は一般的な銘柄だから希少価値は低いんですが、「剣菱」とか今まで見た事も聞いた事もないような銘柄の酒蓋を持っていると、それだけでみんなに自慢できたんですね。 

当時欲しかったのは「黒松剣菱」。普通のオレンジ色のマークではなく黒でマークが書いてあり「特級」と書いてあるレア物でした。初めてゲットしたときはうれしかったな~

それでも影で暫くブームは続き、「酒蓋は背が高い程強いらしい、特に剣菱は」と聞きつければ、何を置いても欲しかった。

つまりこの「剣菱最強伝説」は、ぼくの周囲の子供だけではなく、かなり広い範囲に広まっていた伝説だったらしいのだ。

 なぜこんな伝説が広まったのだろう。理由はいくつか考えられる。

  • 剣菱の蓋は物理的に他の蓋と違っていて、実際に裏返りにくかった(実際に強い説)
  • 剣菱という酒自体が希少または高価で、蓋も入手しにくかった(希少価値説)
  • 剣菱の蓋はデザインがかっこよかった(カッコイイ説)
  • 単なる都市伝説で特に意味はない(都市伝説説)

 自分の感じだと、「実際に強い説」はちょっと怪しくて、「希少価値説」と「カッコイイ説」によりそういう思い込みが自然発生し、その結果として「都市伝説説」になったのではないかという気がするが、確証はない。

 こんなことを調べていったい何の役にたつのか、言ってる本人もまったく定かでないが、これだって一つの文化だったわけだし、何か意外な歴史秘話に結びついていないとも限らない。実は、オウム事件の原因はサケブタによる少年時代のトラウマだった、なんてことはないと思うが、どなたか物好きな方が調べて教えていただけると嬉しい。もちろんアイデア料などを請求する気はまったくないし、リンクを張ってもらえばアフィリエイト料でウヒウヒなんて下種な事はこれっぽっちも考えてませんので。そうでもないか。

 ちなみに、黒が赤より珍重されたのは、フェミニズムも知らない野蛮な昭和の時代の間違ったジェンダー意識によるものだと思われる。したがって現代のよい子はうかつにマネしてはいけない。

追記: わ、リンカーンとネタカブリしてもうた。書いたのは見る前です。でもなんかサブい。

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