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JFK:アメリカを変えた3発の銃弾

Jfk: 3 Shots That Changed America [DVD] [Import] ヒストリー・チャンネルの番組(*1)。ケネディ大統領暗殺事件について、前に紹介した「9.11~アメリカを変えた102分~」 と同じ手法で描いている。つまり、現代の視点からのナレーションや再現映像などを交えず、当時撮影されたリアルタイムの映像だけを編集して時系列に並べた作品である。この手法が、前にも書いた通り、歴史的事件の当時の空気感や臨場感を伝えるのに極めて優れた手法であることを再認識させられる。

*1 当初「製作」と書いたのだが、調べて見ると、製作は「New Animal Productions」という会社でヒストリー・チャンネルは流通担当ということになっているようだ。

 娯楽番組の途中で割り込んでくる臨時ニュースの映像、事件を報道するスタジオの混乱ぶりがそのまま映っている映像などには、時代の雰囲気が強く反映されているし、当たり前だが、犯人がわかっていない段階では、犯人は極右だという人がいるかと思えば共産主義者だと言う人もいたりして、そのこと自体が当時の政治状況を教えてくれる。

 現代の視点から意味づけされた映像を観ると、ストーリーにとって意味のある部分だけに自然と注目してしまうものだが、こういう映像を観ると、そういう見方では捨象されてしまう細部に自然と目が行く。そこからいろんな発見が得られるのは、映像という多義的なメディアならではの特性だと言えよう。

 普通のドキュメンタリーは、主題を描くことが目的で、その手段として背景を描いていく。しかしこの作品では、主題はむしろ手段化していて、その背景となっている時代の空気を描くことこそが目的になっている。つまり、普通のドキュメンタリーとこの作品はいわばポジとネガの関係になっている。そう考えると、この手法には単なる意外性以上の積極的な意味を見出せるのではないだろうか。

 ぼくらは歴史を学ぶとき、代表的な事件をピックアップして、その間の因果関係を考える。ところがそうすることにより、逆に意思決定の前提となっている時代の空気は捨象されがちだ。たとえば、なぜ日本はあんな無謀な戦争に突入したのか、なぜドイツ人はあんな声がでかくて運がいいだけの小男に熱狂したのか、ということは、時代の空気を知らない者にとっては、単に愚かな事にしか思えなかったりする。しかし、そのようにタカをくくってしまうことが、歴史から正しく教訓を得る方法では多分ないだろう。

 ちなみに、この作品では全編にわたってエレクトロニカ風の音楽が小さい音で流れているが、実はこれがいい効果になっている。これがもし、普通の劇的な映画音楽だったりしたら、そこからまた別の意味付けが発生して全然違う作品になっていたであろう。エレクトロニカという音楽にはこういう使い方があるんだ、というのも一つの発見であった。

(最近は、「クローズアップ現代」や「報道ステーション」でもエレクトロニカ風の音楽が多用されているが、これも一時期のように変に感情を煽るような音楽を使うよりはいい傾向だと思う。エレクトロニカの持つある種の距離感はやはり時代と共鳴する部分があるのだろう。)

 そう言えば、マンガ家のとり・みき氏が「愛のさかあがり」の中で書いていた。氏は大事件が起こると、いろんなテレビ局のワイドショーや報道を同時平行的に録画して、後で編集し直して楽しむんだそうだ。読んだ当時は何が面白いのか今一つピンと来なかったのだが、今はわかる。氏はたぶん、そういう後から意味づけされた映像からはこぼれ落ちてしまうディティールに当時から注目していたのだろう。

 今後もヒストリー・チャンネルには、この手法でいろんな番組を作って欲しいと思う。日本でもやったらどうか。あさま山荘事件よど号事件なんかは、当時の左翼的な時代の空気を知らないと理解しずらい事件だから、こういう手法に向いているのではないだろうか。今だったら、きっと Twitter のツイートなんかも引用されるんだろうね。テレビの報道映像に、それを観ながらつぶやいている人のツイートをオーバーラップさせたりして。あ、それだとニコニコ動画になっちゃうか。

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