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フューグどトラドスの夜

 久しぶりに英語ネイティブの方と長時間話す機会があった。話す方は、相変わらず的確な言葉がなかなか出てこなくて苦労した(なぜか発音がよくて聞き取り易い、と褒められたが、これはまあ最大限のお世辞であろう)が、聞き取りの方は、かなり趣味的な言葉まで聞き取れたので少し自信がついた。

 彼の趣味について聞いているうちにバッハの話になり、The Well-Tempered Clavier とか Goldberg Variations とか St Matthew Passion なんていう言葉がポンポン出てきたのだが、一発で聞き取れたので、「実はぼくも The Well-Tempered Clavier Book 1 の No.1 だけは弾けるんですよ」なんて話をして内心得意になっていたら、思わぬところに落とし穴があった。

  • 「バッハはフューグなんかもいいですね」
  • 「フューグ? フューグって何?」
  • 「ほら、最初に出てきたメロディの後を、同じメロディが少し違う高さで追いかけてきて…」
  • 「ああ、フーガか!」

 日本人の英語学習者にとって、英語読みでない外来語は鬼門である。ウィーンとヴィエナなんてのは結構有名だと思うが、「フューグ」が「フーガ」を意味するという事実は、検索してもあまり出てこないので(なぜかワインのページばかり出てくる)、恥をかいた記念にここに記しておくことにしよう。

 彼とは Trados に関しても意気投合した。Trados のソフトウェアとしての質の低さは、ぼくも以前から気になっていたのだが、この話は、ぼくや彼のように、ソフトウェアを開発した経験があって、なおかつ、Trados を仕事で使った経験がある人間でないと、なかなか共感してもらえないのである。

 ソフトウェアを開発した経験があっても、Trados を使った経験がなければ、Trados の質の低さがわからないのは言うまでもない。しかし、Trados を使った経験があっても、ソフトウェアを開発した経験がないと、このソフトの技術的なレベルの低さには気づきにくいのである。

 Trados というのは、CAT ツールや翻訳メモリ・ツールのデファクト・スタンダードで、この市場を事実上独占しているので、他のツールと使用感を比較される機会が少ないのである。したがって、UI の使い勝手が悪かったり処理速度が遅かったりエラーが多かったりしても、そんなものだろうと見過ごされがちなのだ。

 ところが、ぼくや彼のように、現場でソフトウェアを開発した経験があると、このようなソフトウェアを実現するにはどのようなプログラムを書けばよいか、だいたい想像できるので、「えー? なんでそんな UI なの?」とか「この程度の処理にこんな時間かかるなんてありえねー」とか「いくらなんでもエラー多すぎ」とかわかってしまうのである。

  • 「Trados ってのは、素人の学生が趣味で作ったようなソフトですね」
  • 「そうそう、その通り!」
 長年の主張に格好の賛同者を得たぼくは、これからは Trados の質の低さについて、もっと自信を持って主張していくことにしよう、と心に誓ったのであった。

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