「ハチワンダイバー」感想
話題の将棋マンガ「ハチワンダイバー」のドラマ版を鑑賞。はっきり言って、設定はムチャクチャだしストーリーもくだらない。だけど、映像なんかは比較的マジメに作ってあって、くだらないものでも、いや、くだらないものだからこそ精魂込めて作るという作り手の姿勢が伝わってきて、なかなか気持ちよく観れた。少なくとも、エメリッヒの「2012」なんていう客をナメた作品を観るよりは、ずっと快い時間を過せたと思う。
この作品最大の成功要因は、なんといっても「アキバの受け師」中静そよの人物造型に尽きるのではないだろうか。この女性は主人公の指導者兼恋人みたいな役なのだが、仕事の場ではあくまで知的かつクールに男性を導き、プライベートな場では優しく男性を甘えさせてくれる。これは現代の男性にとってある種理想の女性像なのではないだろうか。まあ、メイド萌えやツンデレを露骨に取り入れたと言ってしまえばそれまでだが。
でも、これが一昔前のジェンダーのわかりやすい時代だったら、指導者役は男性で恋人役は女性だったろうし、仮に指導者役が女性だったとしても、恋人役とは別人だったろう。その二つの役割が同一人格に共存しているところにこの作品の現代性が表れていると思う。もっとも、こんなややこしい役割を期待される現代の女性もなかなか大変だと思うが。
こういうマンガ的なドラマの演出というのは、たぶん「のだめ」あたりから流行りだした手法だと思うが、オーバーアクションで誤魔化せる分、俳優の演技力を必要としないという利点もありそうだ。まあ、この作品はこれでいいと思うが、こういう手法も諸刃の剣で、あまりこれに頼ると、俳優の演技力はますます低下して、演技力で見せるようなドラマの衰退を加速しそうな気もしないでもない。
お笑いなんかもそうだが、こういうある種「逃げ」の手法がいろんな分野で発達したおかげで、観ていられないような大駄作は減ったと思うが、その分、演技力のような裸の実力で真っ向勝負するような作品も減っているような気がする。それがなんとなく物足りなく感じ始めたのも事実。
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