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検定のパラドックス

 確率論で有名な逆説に「ベルトランのパラドックス」というのがあるが、それを真似て、統計的検定に関するパラドックスを作ってみた。

 問題: ここにコインが 1 枚ある。このコインをコイントスに使いたいが、表と裏が公平な確率で出るかどうかわからない。そこで試しに 8 回トスして結果を調べたところ、表・表・表・裏・表・表・表・表だった。このコインを使うことは不公平だと言えるか。

  • A 君: こういうのは統計的検定にかければいいんだよ。この場合、コインが不公平であることを証明したいのだから、その逆のコインが公平であることを帰無仮説にすればいい。つまり、表と裏がそれぞれ 1/2 の確率で出るというのがこの場合の帰無仮説だ。そして、その仮説の下で事象が発生する確率を計算する。その確率が危険率を下回っていれば帰無仮説は棄却される。つまり、このコインは不公平だということになる。
  • B 君: なるほど。すると、表と裏がこの順番で出る確率は、1/2^8 =  0.004 だから、1% 以下だ。つまり、危険率 1% でこのコインは不公平だと言えるってわけだな。
  • C 君: 何言ってんだよ。これは典型的な二項分布じゃないか。だから、8 回の試行で裏が 1 回出る確率は、(1/2^7) * (1/2^1) * 8 = 0.03。つまり、危険率 5% なら帰無仮説を棄却できるが、1% では棄却できないよ。
  • D 君: うーん、よくわからないけど、バクチなんだから丁と半が公平に出ることが重要じゃないかな。この場合、丁と半の出る確率は半々だからどちらも 0.5。つまり危険率 50% でも帰無仮説は棄却できないってことにならないか。
  • E 君: くだらない。表と裏なんて、たまたま違う模様が刻印されただけの話で、たいして重要じゃないよ。何回トスしても表か裏のどちらかが出るわけだから、その確率は 100%。つまり、この帰無仮説を棄却することは不可能だ。世の中に不公平なコインなど存在しないのだよ。
  • 一同: ………………。

 言うまでもないが、この説明はムチャクチャである。しかし、なぜ間違っているかを論理的に説明できるのは、統計学を相当きちんと理解した人ではないかと思う。

(なんて書くと、まるでぼく自身が統計学をきちんと理解していると言ってるみたいだが、ぼくだってまだまだ理解の怪しいところはたくさんある。)

 ちなみに、この確率の計算は、どれもある意味正しい(よね?)。また、試行回数の問題だと思うかもしれないが、実は、回数を多くしても似たような問題はいくらでも作れるのである。

 問題はそういうことではなくて、統計的検定という方法論の背後にあるある種の「思想」を正しく理解しているかどうかにある。ヒマがあったらそのうち解決編を書くかもしれないが、それまで待てない人は、身近にいる統計学に詳しい人にたずねてみてほしい。

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