"Earn this. Earn it." というのは、「プライベート・ライアン」という映画の中の有名な台詞。トム・ハンクス演じるミラー大尉が、死ぬ間際に、マット・デイモン演じるライアン二等兵の耳元でつぶやいた台詞がこれ。この映画自体に対する評価は人それぞれ違うと思うけど、英語に興味のある日本人なら、この台詞にニヤリとした人は多いだろう。
earn という動詞は、「稼ぐ」などと訳されることが多いが、この場合はもちろん、「生き残ったんだからどんどん金を稼げよ」という意味でもなければ、「命拾いして儲けたな」という意味でもない。というかむしろその逆である。
earn には、確かにお金を稼ぐという意味もあるけれど、その場合でも、運よくあぶく銭を儲けたというような意味では使えない。つまり、同じお金を得るにしても、「労働や努力の正当な対価として」得るという暗黙の前提が隠されているのだ。
こういう日本語に訳しにくい言葉の意味は、英英辞典で調べた方が把握しやすい。たとえば、LONGMAN Dictionary of Contemporary English では以下のように説明されている。
3 SOMETHING DESERVED
[transitive] a) to do something or have qualities that make you deserve something
* I think you've earned a rest.
* He soon earned the respect of the players.
* He hopes to earn a place in the Olympic team.
* The company has earned a reputation for reliability.
COBUILD English Dictionary の説明はこう。
3 earn earns earning earned
If you earn something such as praise, you get it because you deserve it.
* Companies must earn a reputation for honesty.
* I think that's earned him very high admiration.
どちらの説明にも期せずして "deserve" という言葉が使われていることでもわかるように、この言葉の意味の核になっているのは、「何かに値する何かをする」ということである。そこで、目的の方の「何か」に重点を置くと「稼ぐ」というニュアンスになるし、手段の方の「何か」に重点をおくと、「報いる」というようなニュアンスが出てくる。
"Earn this. Earn it." の this や it は、もちろん、ミラー大尉や仲間たちの犠牲によって救われた、ライアンの命を指している。これが目的の方の「何か」に当たるわけだから、この発言の時点で、earn の目的はすでに実現されているわけだ。実現されていることをわざわざ命令形で言っているということは、それに値する手段の方の「何か」を実行しろ、という意味に他ならない。だから、言い換えれば、"Be a man who deserves it." という感じになるわけ。
この台詞に応えたのが、最後の墓地のシーンにおけるマット・デイモンの次の台詞。
I hope that, at least in your eyes, I've earned what all of you have done for me.
これも訳しにくいけれど、「あなたから見て、あなた方が私のためにしくれたことを無駄にしない(値する、ふさわしい)人間に、私がなれていればよいのだけれど」、というような意味になる。
えっと、"You earned it." なんて褒められ方したのは生まれて初めてだったんで、つい嬉しくてこんな記事を書いてしまいました。自分ではまだまだ欠点だらけだと思ってますけど、これからももっとがんばります。ありがと。