« 野球の短期決戦におけるリスクとリターンのトレードオフ | トップページ | CNN は当確出したよん »

再分配は悪

 アメリカの大統領選まであとわずかとなり、両陣営の論戦というか過激な中傷合戦が続いている。ぼくもヒマさえあれば CNN などでチェックしているのだが、特にマケイン陣営の演説を聞いていてつくづく思うのは、アメリカ人ってのは心底「社会主義」や「再分配」が嫌いなんだなあということ。

 最近、マケイン陣営はオバマは社会主義者だというレッテル貼り攻撃をしているのだが、その中では、socialism とか redistribution とかいう言葉は完全に「悪」を表す言葉として使われているのだ。たとえば、

McCain: And that's the problem with Senator Obama's approach to our economy -- he's more interested in controlling wealth than creating it, with redistributing money instead of spreading opportunity.

マケイン: それがオバマ議員の経済に対するアプローチの問題点なのです。彼は富を生み出すことよりも富を規制することに、機会を増やすことよりお金を再分配することに興味があるのです。

McCain: Senator Obama is running to be redistributionist-in- chief. I'm running to be commander-in-chief.

マケイン: 私は最高司令官(=大統領)になるために立候補していますが、オバマ議員は最高再分配官になるために立候補しています。

Palin: And you have to really listen to our opponent's words. You have to hear what he is saying, because he's hiding his real agenda of redistributing your hard-earned money.

ペイリン: みなさんは対立候補の言葉をよくきかなくてはいけません。なぜなら、彼は、あなたが一生懸命稼いだお金を再分配するという真の政治目標を隠しているからです。

Palin: Now is not the time to experiment with socialism.

ペイリン: 今は社会主義の実験をしているときではありません。

Palin: I'm not going to call him a socialist, but as "Joe the Plumber" has suggested -- in fact, he came right out and said it -- it sounds like socialism to him. And he speaks for so many Americans, who are quite concerned now, after hearing, finally, what Barack Obama's true intentions are with his tax and economic plan. And that is to take more from small businesses, more from our families and then redistribute that according to his priorities.

ペイリン: 私はオバマ議員を社会主義者と呼ぶつもりはありませんが、「配管工のジョー」さん(ある番組の中でオバマの税制案について質問して有名になった人物)が指摘したように、ジョーさんには社会主義のように聞こえたことは事実です。ジョーさんは、オバマ議員の税制案や経済政策の真の意図について心配している多くのアメリカ人を代表しています。それは、中小企業やわたしたちの家族からより多くのお金をとって、それを彼の優先順位に従って再分配することなのです。

 もし日本人がこのような演説を聞けば、多くの人が違和感を感じることと思う。「オバマは再分配をしようとしていると。それはわかった。で?」って。つまり、再分配を批判するにしても、その方法や額の多少を問題にしようとするはずだ。

 しかし、アメリカ人にはこの「で?」がないのである。少なくともこの演説が受けるような共和党支持のアメリカ人にとっては、再分配そのものが「悪」なのだ。ここだけは、日本人とアメリカ人の感覚が決定的に違っていることを認めないわけにはいかない。

 ぼくも、アメリカ人が基本的に自由を好み政府の介入を嫌う人たちであるということぐらい、知識としては知っていたが、今回の大統領選の議論を聞いていて、それが改めて感覚的に身にしみた。もちろん、アメリカ人にも(特にインテリには)リベラルな人はたくさんいるが、庶民レベルでの社会主義や再分配に対する感覚的な反発は根強いのである。

(もちろん、日本人にだって、モノづくりが「善」でお金を動かすだけで儲けるのは「悪」だとかなんとか、いろんな固定観念があるわけで、アメリカ人だけがおかしいと言いたいわけではまったくない。為念。)

 オバマ氏が大統領に選ばれることは、アメリカ人の人種に対する意識、宗教に対する意識、社会主義や再分配に対する意識、いろんなものが変わり始めた証として捉えられるのかもしれない。大統領選の結果だけでなく、アメリカがこれからどこに向かおうとしているのかということから、しばらく目が離せそうにない。

追記: しまった、分配と配分を間違えた。ということで訂正しました(^^)。 お恥ずかしい。あと、オバマ氏の大統領としての資質については、必ずしも手放しで認めてるわけではないです。というか、まだよくわからないというのが正直なところ。確かに演説がうまい人だなとは思いますが、政策のすべてに必ずしも賛成なわけではありません。ただ、大統領選挙にとって政策がそれほど決定的かというと、必ずしもそうとも思ってないので(^^)。

|

« 野球の短期決戦におけるリスクとリターンのトレードオフ | トップページ | CNN は当確出したよん »

ニュース」カテゴリの記事

政治」カテゴリの記事

経済」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/67762/42950898

この記事へのトラックバック一覧です: 再分配は悪:

« 野球の短期決戦におけるリスクとリターンのトレードオフ | トップページ | CNN は当確出したよん »