菊地成孔にはまり中
「cure jazz」が気に入ったので、菊地成孔氏の作品を(iTunesで)立て続けに購入。購入したのは現在のところ「大停電の夜に オリジナル・サウンドトラック」、「パビリオン山椒魚 オリジナル・サウンドトラック」、「南米のエリザベス・テーラー」の 3 枚。 「大停電の…」だけはワリと普通で今一つ物足りなかったが、「山椒魚」と「南米」はどちらもかなり気に入った。
とにかく引き出しの多い人で、ジャズっぽい作品、細野晴臣的とも言えるエスニックなエキゾティシズムを感じさせる作品、フレンチポップス風の作品など、どれもそれなりによいのだが、個人的に特に気に入ったのは、ジャズと現代音楽の中間的な手法を使った作品群。
たとえば、「南米」収録の「ホルヘ・ルイス・ボルヘス」は、初期の武満徹みたいな作風で、途中で入ってくるリズムセクションがなかったら、武満徹の作品ですよと言ってもバレないんじゃないかと思うぐらい(^^)。と言っても、決して猿マネではなく、きちんと手法として咀嚼した上で独自の作品として成立させている。
(Enigma がオルフの「カルミナ・ブラーナ」をネタにしたとき、日本でも誰か武満徹リミックスとかやればいいのに、とか思ったんだけど、ようやくそういう人が出てきたとも言えますね(^^))
また、「山椒魚」収録の「映画女優は体操服の夢を見る」は、新ウィーン楽派のアルバン・ベルク、あるいは、その遠い継承者である(とぼくが勝手に思っている(^^))半野喜弘を彷彿とさせるような作風で、これもかなり完成度が高い。
ちなみに、「山椒魚」には、エレクトロニカ風の音作りをした作品も何作かあるので、そういう意味でも半野氏と共通点があるなと思って調べてみたら、菊地氏と半野氏は実際に競演したこともあるらしい。さもあらんという感じである。
ぼくは正直、ジャズという音楽ジャンルはもう袋小路なんではないかと思っていたのですが、こんな人がいるんだったら、認識を改めねばならないと思いました(^^)。 この人はたぶん、ジャズをスタイルとしてではなく、あくまで手法として捉えているんでしょう。だから、純粋にジャズをやる場合でも、惰性でやってる感じがしないように新鮮に響かせることもできるし、ジャズ的な手法を自由に他の手法と組み合わせることもできるんでしょう。そういう知的な距離感があるところがいいですね。
菊池さんといい半野さんといい、こういう現代音楽的な手法をポップス的な手法と組み合わせて使いこなせる人がどんどん出てきたようで、頼もしい限りです。しかも彼ら新世代のアーティストには、これはゲンダイオンガク的な手法なんだぜぇ~すごいだろ~控えおろう、というようなカッコつけや権威主義がなく、単にこの手法が自分の表現に必要だから使うんだ、という率直さを保っているところがいい。今後の音楽シーンがますます楽しみになってきました。
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