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ABC がエタノール懐疑論を放送

 ABC の「20/20」という番組で、エタノール懐疑論を放送していたらしい。その内容が、ABC のウェブサイトにまとめられていたので、和訳して紹介しよう。


「トウモロコシの神」に子供たちを捧げよ

エタノールはそれほどの奇跡ではないかもしれない

2007年5月2日

ジョン・ストッセル、アンドリュー・G・サリヴァン

ガソリン価格は、需要の大きい夏場が近づくにつれて急上昇しており、一部のガソリンスタンドでは1ガロン当たり4ドルに達するだろうと、ブルームバーグのニュースでは予測している。

このガソリン価格の高騰とともに、アメリカは、エネルギー源を分散して、外国産の石油に対する依存を減らすべきであるという声も高まっている。しかし、エタノールはクリーンであり、エネルギー危機すらきれいに燃やしてしまう解決策であると吹聴する政治家の言うことを、あまり信じ込まないほうがいい。

ガソリン価格が「過去最高」に達した? これについて、メディアが言っていることを信じていてはいけません。 ほとんどの記者は、インフレ調整を忘れています。ガソリン価格は、1920年代や1980年代の方が高かったのです。 この続きは、「Myths, Lies, and Downright Stupidity(神話、嘘、ただのバカ)」でお読みください。この本はこちらでお買い求めください。

奇跡的な解決策?

その答えがエタノールだという説は、一つの神話である。エタノールは、今度の選挙戦において、共和党と民主党の両方候補の主張が一致している論点の一つだ。ジョン・マケイン上院議員(共和党・アリゾナ州)、および、前ニューヨーク市長ルディ・ジュリアーニ氏は、ともにトウモロコシを原料とする燃料に対する支持を表明しているし、ヒラリー・クリントン上院議員(民主党・ニューヨーク州)、バラク・オバマ上院議員(民主党・イリノイ州)、および、ジョン・エドワーズ前上院議員も、エタノールの生産に対し、政府から補助金を出したいと考えている。前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー氏は、「エタノールの経済的重要性は、今後ますます高まります」と言っている。

このような政治家にとってエタノールが重要なのは、彼ら自身の言によれば、エタノールが、地球温暖化を遅らせ、環境を保護し、アメリカの外国産の石油に対する依存を低下させる、クリーンで再生可能なエネルギー源だからだ。 しかも、エタノールはトウモロコシから作られ、そのトウモロコシはわれわれが育てているのだから、きわめて自然だというわけで、なんだかよさそうな話に聞こえる。

だが、もしエタノールがそんなにいいのならば、それに補助金を出したり、消費を義務化したりする必要はないはずだ。ケイトー研究所のジェリー・テイラー氏は、「現代の経済において、何かを市場に出すことによって利益をあげられるならば、政府が頭に銃を突き付ける必要はないはずだ」と言っている。

にもかかわらず、エタノール生産者は、自分たちの製品を売るために、政府の補助金を必要とする。と言うのも、補助金がなければ、エタノールはガソリンより高くついてしまうからだ。さらに、評論家は、エネルギー価格や外交政策や環境の観点からエタノールがアメリカの利益になる、という説も神話にすぎないと指摘している。

エタノールの生産過程

ジェリー・テイラー氏は、「20/20」(ABCの番組)のインタビューにおいて、「エタノールの生産時には、肥料を作り、トラクターを走らせ、サイロを建て、トウモロコシを処理工場に運び、処理工場を動かために、大量の化石燃料を必要とする」ということを思い出させてくれた。さらに、エタノールを運ぶのにもエネルギーが必要だ。エタノールは劣化するので、石油のようにパイプラインで輸送することはできない。したがって、エタノールを使うということは、その供給のために、汚染を撒き散らすトラックを今まで以上に走らせなくてはならないということを意味する。

このような理由で、最近の研究の多くでは、エタノールを生産するには、エタノールを燃やしたときに得られるのと同じくらいのエネルギーが必要だと言われている。「エタノールの純エネルギー収支はほとんどゼロです」とテイラー氏は言う。

その上、エタノール車からの排気は、環境に対してもクリーンではない。スタンフォード大学の大気科学者であるマーク・Z・ジェーコブソン氏によると、エタノールへの切り替えは、気候変動の問題をなんら解決しないばかりか、公衆衛生にとっても、エタノール車の排気ガスはガソリン車の排気ガスよりも悪い可能性があるという。

エタノール車の排気の方が、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの発癌性の化学物質を多く含んでいるし、エタノール車は、人々の免疫系を弱めて肺損傷を引き起こす大気中のオゾン濃度(スモッグの主成分)を高める、とジェーコブソン氏は言っている。

さらに、エタノールを作るためのトウモロコシ生産の増加は、さらなる肥料や農薬の使用につながるので、これがさらなる温室効果ガスを発生させるだろう。

政治家はなぜエタノールが好きなのか?

では、エタノールがちっとも安くなく、環境にもよくないとすれば、なぜ政治家にそれほど人気があるのだろうか。

「大統領になりたい人たちが、トウモロコシ・エタノール政策を支持することになんの不思議もありません」とテイラー氏は言う。「最初の党員集会が行われたのは、アイオワ州です。このアイオワ州の予備選挙では、トウモロコシの神に子供たちを捧げる気がなければ、得票数の1パーセント以上を獲得することはできないのです。」

中西部の有権者とうまくやりたいと思ったら、トウモロコシの生産者と仲良くする必要があるということを、大統領候補は知っているのだ。大統領候補は、エタノールに対する補助金の支給を推進することにより、中西部州の重要な選挙区の有権者を喜ばせながら、いかにも環境に優しい人のような顔ができるし、アメリカが「エネルギー自給」という聖地に向かっていると、有権者に信じこませることもできる。

インディアナ州のエバン・バイ上院議員は、ABCのインタビューに対し、「わが国は、輸入石油への依存度を、どんどんどんどん増やしてきました。これは健全ではありません」とぼやいた。

「でも、エタノール政策は、パウロに金を払うためにペテロから金を盗む(訳注:「無意味なやりくりをする」という意味の慣用句)のと同じことではありませんか? 私たちみんながペテロで、トウモロコシ生産者がパウロなんですよ」と尋ると、バイ氏は「現状では、中東のシャイフに金を払うために、わたしたちの金が盗まれているんです」と言った。「アメリカ中西部の農場にアメリカの燃料を生産してもらう方が、理にかなっていると思いませんか?」

エタノールは何の役に立つのか?

だが、エタノールは、アメリカの外国産石油に対する依存症を治してはくれない。米国科学アカデミーの会報に発表された調査によれば、アメリカのトウモロコシのすべてをエタノールに変えても、アメリカのガソリン需要の12パーセントしか満たさないと言う。

中東諸国が、アメリカへの石油供給を止めただけで、アメリカは人質をとられたも同然だ、というような議論は無意味であるとテイラー氏は言う。「アメリカが中東諸国に人質をとられているですって? 中東諸国の歳入の80~90パーセントは石油の売り上げから来てるんですよ。彼らは石油を売らずにはいられないんです。他に売る物がないんだから。」

テイラー氏は正しい。たとえOPECがアメリカに石油を売ることを拒否したとても、世界中の石油は最終的には同じプールに流れ込むのだ。アメリカの敵も、別の誰かには石油を売るだろうし、その誰かはまた別の誰かにその石油を売るだろうし、結局そのまた別の誰かがアメリカに石油を売るだろう。

ある燃料源が、高価で、環境に優しくなく、アメリカの外交政策の役にも立たないのならば、それを生産するための費用を払うことを納税者に強制する理由はない。

テイラー氏は言う。「これは、トウモロコシを買う人からお金をとって、そのお金を、トウモロコシを育てたりエタノールを作ったりして生計をたてている人にあげることを目的とした、露骨な所得移転政策なんですよ。それだけのことです。」


ちなみに、ジョン・ストッセルというのはこういう人で、ケイトー研究所というのはこういう研究所であるということは、言っておいたほうがいいかも知れませんね(^^)。ただし、この内容が3大ネットワークで放送されたということもお忘れないように。あとは、読んだ人の判断におまかせします(^^)。

ぼく的には、こういう意見がもっと出てこない方が不思議ですけどね。ここに挙げられていない論点も、まだたくさんあると思うのですが。

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