伸長、展開、復元、解凍…
翻訳をしていると、何度訳してもなかなかしっくりと日本語に訳せない言葉というのがいろいろとあって、IT 分野で頻出する decompression という単語もその一つ。この言葉はもちろん、compression の逆を意味するわけだが、compression の方は「圧縮」がほぼ定訳になっているのに対し、decompression の方は、「伸長」「復元」「展開」「解凍」などさまざまな訳語があって、かなり恣意的に使い分けられている。
なぜこんなにいろんな訳語が使われているのか、自分なりに考えてみると、どうやら、もともと decompression という単語には、
- 小さくなっていたものを大きくする。
- 変換されていたものを元に戻す。
- 書庫ファイルから複数のファイルを取り出す。
という微妙に異なるニュアンスが含まれており、文脈によって、どの意味に重点が置かれるかが変わってくるかららしい。
たとえば、動画や音声のmpeg 圧縮などを decompression する場合には、1 のニュアンスが強いので「伸長」という訳語が似合うが、 ZIP などの圧縮ファイルを decompression するという場合には、2 や 3 のニュアンスが強いのでむしろ「展開」や「解凍」という訳語が似合う、といった具合だ。
整理してみるとこんな感じだろうか。
|
1 の意味 |
2 の意味 |
3 の意味 |
|
| 伸長 |
○ |
× |
× |
|
復元 |
△ |
○ |
△ |
|
展開 |
△ |
△ |
○ |
|
解凍 |
× |
○ |
○ |
これを見れば、どれをとっても帯に短し襷に長しで、どんな文脈でも安心して使える訳がない感じがわかっていただけると思う。
参考までに、インターネット上にはどんな意見があるかも、少し検索してみた。
-
ちなみに
圧縮 の反対語でテクニカルタームとして用いられるのは伸張という語が一般的です。(AOLブログトーク) - 「解凍」とは直感的には分かりやすい言葉だが,これは本来「冷凍」したものを常温に復元する事を意味し,圧縮したものを元に戻すのは「膨張,伸長,展開」などの言葉を使うべきであろう。(聖泉大学情報社会学科・田中三千彦氏の公開講義)
-
英語だと、
圧縮 は「compression 」、解凍は「extractionかdecompression」ですから、「解凍」ではなく「展開」、「伸張」と言うべきだという意見もあります(Microsoftは「展開」という表現を使っています)。(ひとりで使うPC)
うーん、さっきも書いたけど、確かに純粋なデータ圧縮の場合には「伸長(もしくは伸張)」でもいいと思うんですけど、複数のファイルを圧縮してアーカイブ化したものを decompression する場合に、「伸長」と言ってしまうと、そのままでは読めないファイルが元のファイルに復元されると言うニュアンスや、一つのファイルから複数のファイルが生成されるというニュアンスは、ほとんどなくなってしまうんですよね。だから、必ずしも手放しで褒められる訳ではないと思うんです (^^)。
- 解凍は圧縮の反対語として使われているが,これは LHA のマニュアルに使われたのが最初だと言われている。(オンライン・コンピューター用語辞書)
そーか、そうだったんですか。でも、圧縮ファイルの decompression を指す言葉としては、イメージが沸くいい訳だと思うんですよね。ただ、逆に純粋なデータ圧縮にあてはめると、縮んでいたものが大きくなると言うニュアンスがまったくないので、なんかピンとこないわけです。(水だったら、解凍すると体積は減っちゃうわけだし (^^))
ちなみに、JIS を見てみると、
やっぱりバラバラやんけ!
というわけで、私の結論: decompression の訳は、文脈によって使い分けるべし (^^)。
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» 「decompression」「extraction」を「解凍」とするな!! [ギターのある生活]
ちょっとした事情があり、データ圧縮にかかわる文脈で登場する「decompression」「extraction」の訳語についてメモ書きを作った。せっかくなので、 [続きを読む]
受信: 2008.05.19 18:35
