« 谷川俊太郎の残り 23 の質問 | トップページ | 「人に好かれる人」はなぜえらいか »

ロボットは子供を産まない機械

 「PLUTO 4」を読みながら、もしこのマンガの世界に、「女性は子供を産む機械」という発言をする政治家が現れたらどうなるかを考えてみた。

 この世界では、ロボットの人権が確立されているから、人間を機械に例えることが即ネガティブな価値をもつ主張したら、逆にロボットに対する差別になるだろう。「なぜ機械に例えられるのがそんなにイヤなんです? それは、あなたの中にあるロボットに対する差別心の現われじゃないですか?」などと、「ロボット権」運動家に抗議されるかもしれない。だから、せいぜい事実と違う、というような主張しかできないはずだが、もともと例え話なのだから、事実とは違うに決まっている。

 ひょっとしたら、逆に、人間の女性だけが子供を産めると暗に主張しているととられて、ロボットの女性から「ロボットが子供を産めない機械だからと言って差別するんですか?」と言って抗議されることも考えられる。現に作中では、ロボットであるはずのゲジヒトやイプシロンは、自分の身体を創った人間の科学者に対して、深い愛情を持つ存在として描かれている。

 まあ、そんなことはどうでもいいのだが、この 4 巻では御茶ノ水博士の性格が掘り下げられていて、ほとんど虫愛ずる姫君みたいに、人間とロボットとを同等に扱う博愛主義者として描かれているのが面白かった。また、科学省長官であるはずの御茶ノ水博士でも、部品を入手できないので旧式のロボットは修理できない、という描写はなかなかリアルである。これが昔の SF だったら、こんな旧式のロボットを修理するのはお茶の子さいさい、みたいな話になっただろう。(ところで、御茶ノ水博士が修理する犬型ロボットはアイボそっくりだがアイボなんだろうか)

 ちょっとネタバレになりますが、この巻ではアトムがあっさり「死」んでしまいます。でも、手塚さんの原作では、ゲジヒトやヘラクレスの方が先にやられるんですよね。それで、アトムは天馬博士に 100 万馬力に改造されるんだけど、エネルギー過剰で暴走して海底に沈んじゃう。それを、プルートゥとイプシロンが協力して助ける、という展開になるのですが、この原作をどこまで尊重し、どこからはずしていくのか。浦沢さんの腕の見せ所ですね。

|

« 谷川俊太郎の残り 23 の質問 | トップページ | 「人に好かれる人」はなぜえらいか »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

ニュース」カテゴリの記事

政治」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/67762/13795370

この記事へのトラックバック一覧です: ロボットは子供を産まない機械:

« 谷川俊太郎の残り 23 の質問 | トップページ | 「人に好かれる人」はなぜえらいか »