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うっすい音の気持ちよさ

こんにちは またあした  コトリンゴさんのデビューCD「こんにちは またあした」がようやく届きまして、早速はまっております。いや~、こんなに音楽にはまったのは久しぶりかも。

 そもそも曲のセンスがすっごくいいのですが、アレンジもけっこう新しいのではないかと思います。なんていうか、音圧の大きい音がほとんど入ってなくて、その分、すっごくうすい音がいっぱい入ってるのね。そこが面白い。

 間奏のところで入ってくるフワフワしたシンセの音とかも、それ自体はありがちなパターンなんだけど、その音量が聴こえるか聴こえないかみたいな微妙なバランスになってるところがいいんだね。それが曲調にもコトリンゴさんのつぶやくような声にもすごく合ってる。他にも、ちっちゃな鈴がころがるような音とか、てんぷら油がはじけるような音とか、よーく聴かないと聴こえないようなノイズがいっぱい入っていて、それもすごく気持ちいい。

 普通、こういう音を入れる場合には、「うるさくて他の音を邪魔するほどじゃないけど、はっきりと聴こえる」というバランスを目指すものなんだと思うんだけど、この CD の場合、どの音も「聴こうと思えば聴こえるけど、決してはっきりは聴こえない」というバランスになってるんですよね。その感覚が結構新しいと思うし、たぶん現代的な感覚なんだと思う。

 もう一つ気づいたのは、どの音も残響のないデッドな音だということ。サンプリング音なんかは、残響があったほうが現実感があるのですが、そういうサンプリング音までデッドに録音されている。だから、おそらく、最初から他の音と分離して聴こえるのではなく、他の音と混ざり合って溶け込んで聴こえるような音響を意図してるんでしょうね。 (ただ、ときどき星がまたたくみたいに一瞬だけ足の長いリバーブがかかることがあって、それがまた美しいんだよね。)

 ミキシングは教授と Fernando Aponte 氏ですが、「こんにちは またあしたのミキシングがいかにデッドかは、同じコンビが担当している教授の「CASA」と聞き比べると一目瞭然ですね。このアルバムも、アコースティック楽器中心のアルバムにしてはデッドですが、ちゃんとリバーブがかかっています。「こんにちは またあしたのデッドさが意図的であることは間違いないでしょう。

 つまり、この曲は、スタイルだけ見ると、アコースティックなピアノの弾き語りみたいに見えるんだけど、音作りは自体はエレクトロニカなんかの音作りに近いんですね。80 年代に、ネオアコという、テクノを通過した耳で改めてアコースティックな音楽をやるという感じのムーブメントがあったんだけど、ちょっとそれに似た感じかも。

 そう言えば、ネオアコのアーティストの一人と言われることもあった遊佐未森さんが最近作った「ブーゲンビリア」というアルバムでは、遊佐さんのブレーンである外間隆史氏がカリントロニカというスローガンを掲げていましたね。あれは必ずしも成功したとはいいがたいけど、ひょっとしたら外間さんもこういう音楽がやりたかったのかもしれないとちょっと思いました。音楽のスタイル的にはエレクトロニカとは言えないけど、音作りの精神としてはエレクトロニカ的なものを継承していると思う。

 だから、ちょっと聴いただけだと、なんか声量のない女の子がピアノの弾き語りをしてるだけに聴こえるかもしれないけど、実はかなり現代的で新しい音なのではないかと思います。

 考えてみると、こういうアレンジが成立するのも、おそらくデジタル時代なればこそなんでしょうね。だって、こんなノイズ、アナログ・レコードだったらダストノイズに埋もれてしまうでしょうからね。デジタル音源からヘッドホンで音楽を聴くというスタイルに合ったアレンジなんですよね。

 そう言えば、90 年代になって、妙ににバスドラやベースの低音を強調したポップスが流行ったけど、考えてみると、あれもおそらくデジタル化が原因の一つなんでしょうね。アナログレコードでああいうふうに低音を強調しても、すぐ共振してしまうから、よっぽど高級なステレオを持ってる人じゃないと、音像のぼやけたもわっとした音になってしまう。それが、デジタル時代になって誰でも簡単に音像のかっちりした音を聴けるようになったこととパラレルなんでしょう。

 う~ん、なんか話がそれてしまったけど、なんか久しぶりに新鮮な音楽を聴いたという感じがしました。ぼくはしばらくこのCDにはまりそうです (^^)。

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