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西洋音楽史―「クラシック」の黄昏

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 「西洋音楽史―「クラシック」の黄昏」岡田暁生著

 この本の特長は、著者自身が前書きで書いている通りです。つまり、バロックから印象派、バッハからドビュッシーまでが「クラシック」だと思っている、いわゆる「ふつーのクラシックファン」を対象として、「クラシック」の歴史については時代性や地域性によって相対化し、その前後の歴史については、「クラシック」との関連付けによって語った本です。そのもくろみは完全に成功していて、私程度の「ふつーのクラシックファン」にとって、極めて読みやすい本になっています。

 たとえば、バロック時代の音楽界をカトリック文化圏とプロテスタント文化圏に分けることによってバッハを反主流派に位置づけたり、古典派とロマン派の違いをフランス革命以後の社会の大衆化と結びつけたり、印象派とマーラー・シェーンベルクとの違いをフランス音楽とドイツ音楽の違いとして整理したりするところなんかは、音楽史を音楽だけの歴史としてとらえてきた人にとっては新鮮なんじゃないでしょうか。

 バロック以前の音楽についても、当初はグレゴリオ聖歌をアレンジするための副旋律にすぎなかったものが、だんだん副旋律の方がメインになっていって、グレゴリオ聖歌の方は単なる「口実」として申し訳程度になっていく、という過程の説明などはたいへん興味深いです。

 現代音楽については、いわゆる「ゲンダイオンガク」だけを西洋音楽の正統な継承者としてとらえるのではなく、前衛的なゲンダイオンガク、古典的なクラッシック、アングロサクソン系のポップスという 3 つの流れをまとめて西洋音楽の末裔ととらえるべきであると主張していて、これもうなずけます。

 もちろん、この本のアプローチはあくまで一つの方法にすぎず、特に細かい楽理のことなんかについては柴田南雄さんの「西洋音楽史―印象派以後」ような音楽家の方が書かれた本の方が面白いと思いますが、西洋音楽史の入門書としては、多くの方に勧められる本じゃないでしょうか。

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