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ヨーロッパ人を救ったわれわれが、なぜアフリカ人を救わないのか?

 ダルフール問題に関するワシントン・ポスト紙の社説を部分訳。

We Saved Europeans. Why Not Africans?

The Washington Post
02 Oct 2006

 この外交的なドタバタの中で見失われているのは現実性だ。第一に、アメリカが仲介したダルフールとの和平協定は、調印される可能性はほとんどなく、もはや無効であるということ。第二に、スーダンはダルフールでの殺人を止めるという公使との約束を、すべて破っているということ。第三に、スーダンに対する国連決議は、中国が同意しそうにないということ。中国は、原油の 7 パーセントはスーダンに負っており、また中国には、アメリカは、スーダンの問題より、イランや北朝鮮の問題で中国の協力を得ることを優先するだろう、という読みがあるはず。第四に、もはや制裁では間に合わないということ。もし中国が奇跡的に妥協したとしても、制裁の効果が現れるまでには数ヶ月はかかるだろう。そしてその頃には、スーダンはダルフールでの二度目の大量虐殺を終えているだろう。

 けれども、ハルツーム(スーダンの首都)が理解できる言葉が一つだけあることを、歴史が証明している。それは、確実な脅威、すなわち実力行使である。 2001 年 9 月 11 日の直後、ブッシュ大統領がテロリストをかくまう国に対して警告を行ったとき、スーダンは、1998 年のアメリカによるハルツーム空爆を思い出したのか、突然テロ対策に協力し始めたではないか。今こそ、スーダンに対してふたたび強硬に出るときである。

 アメリカは、すみやかな外交的協議の後、1 週間以内に無条件で国連軍の配備を受け入れなければ軍事的解決策をとる、という国連決議を強く求め、スーダンに最後通牒を突きつけるべきである。この決議は、国連加盟国による単独もしくは集団での強制を正統化するものとなり、国際社会は、スーダンが態度を軟化するまで軍事的圧力を加え続けることになる。

 アメリカは、できれば NATO の協力とアフリカの政治的な支持のもとに、スーダンの飛行場、飛行機などの軍備を叩く。この攻撃により、スーダンが原油を輸出するポートスーダンを封鎖することができるだろう。その後、アメリカおよび NATO の支援のもと、必要があれば強制的に国連軍を配備する。

 もし国連の支持を得ることに失敗したら、アメリカは国連の支持なしでも行動するべきである。不可能だと思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。1999 年のコソボでは、アメリカは国連の承認を受けることなく、より小規模な人道的な危機(約一万人が殺害)とより手ごわい敵と闘うために行動したではないか。あのときアメリカは、NATO の支援をうけつつ、スロボダン・ミロシェビッチが不本意ながらも同意するまで、セルビアの軍事目標を空爆した。この戦闘で死亡したアメリカ人は、ただの一人もいなかった。多くの国はアメリカが国際法に違反したといって抗議したが、その後国連はコソボを統治するために監視団を配備し、事実上 NATO の武力行使を遡って正統化した。

 そんなことは、現在の世界情勢では考えられないと思う人もいるかもしれない。確かに、国際世論は 1999 年ほど寛大ではなくなった。イラク戦争や捕虜虐待のスキャンダルは、他国に対し、アメリカの動機や正当性に対する疑念を植えつけた。その中には、今後、特にイスラム政権に対する、アメリカのいかなる武力行使にも反対しようとする者もいる。たとえそれが、純粋に一般市民のイスラム教徒に対する大量虐殺を止めさせるためであってもである。また、スーダンは、ダルフールにアフリカ人以外の軍隊が来れば、アルカイダの攻撃を受けるだろうと脅している。スーダンは、長期間にわたってウサマ・ビンラディンやその会社を受けいれてきたので、これもありえないことではない。しかし、この上アメリカが他の国からのテロリズムによる抑止を許せば、とんでもない前例をつくることになる。大量虐殺を目の前にしてそんなことを許せば、単に臆病だというだけでなく、人道に反する。

 また、米軍にはこれ以上の任務は無理だ、と主張する者もいるだろう。確かに、アメリカの地上軍は、戦線を広げすぎている。けれども、空爆作戦や海上封鎖の負担がかかるのは、比較的余力のある空軍や海軍であるし、近くのジブチにいる 1,500 人のアメリカ兵を活用することも可能だ。

 また、国連や関係する地域団体の同意がなければ、アメリカは国際法に違反することになると主張する者もいるだろう。そうかもしれない。しかし、安全保障理事会は最近、「保護する責任」を定める新しい国際基準を成文化した。この基準では、大量虐殺や人道に反する罪を平和的な手段で止めさせることに失敗したときに、国連加盟国に対し、強制を含む断固たる行動をとることを求めている。

 この大量虐殺は、もう 3 年も続いており、平和的な手段はすでに失敗している。スーダン政府は、二回目の虐殺を始めようと手薬煉をひいている。真の問題は、アメリカは、ヨーロッパ人を救うためにコソボでやったように、アフリカ人を救うためにダルフールで軍事力を行使するべきか、ということなのである。


 アフリカ関連のニュースは情報量が少ないので、たまに調べるといろいろ勉強になります。恥ずかしながら、中国が原油の 7% をスーダンに負っているなんてことも知らなかったですね。「保護する責任」なんて言葉も知らなかった。これは今後の国際社会の重要なキーワードになるかもしれませんね。

 しかし、もしこの記事にあるとおり、中国が国連決議を拒否し、アメリカや NATO が単独で行動したら、日本は、あるいは、われわれ個人は、それを支持すべきなのか。悩ましい問題ですね。もしこれを支持すれば、イラク戦争は国連決議を経ていないからダメだ、という主張をしていた人は論理整合性を失い、単なるご都合主義になりかねない。かと言って支持しなければ、どうやって大虐殺を止めるのかという深刻な問題をつきつけられる。少なくとも、その現実から目を背けるべきではないと思います。

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受信: 2006.10.07 00:01

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