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宗教からよむ「アメリカ」

宗教からよむ「アメリカ」  森孝一氏の「宗教からよむ「アメリカ」」、ずっと積ん読だったけど、やっと読めました。よい本です。

 この本は、題名が示すとおり、アメリカの宗教について論じた本で、「アメリカの見えない国教」という概念を軸にして、アメリカの宗教を読み解くという構成になっています。そのため、モルモン教やアーミッシュから福音派や原理主義までさまざまな教派が出てきますが、単なる教派のカタログ的な説明に堕することなく、アメリカ全体の宗教的構造のようなものを描き出すことに成功しています。

 アメリカのことをよく知らない私達日本人が抱く素朴な疑問、たとえば、

  • アメリカは政教分離の国なのに、なぜキリスト教の影響力が強いのか
  • アメリカは自由を標榜する国なのに、なぜ他の国に対してはあんなにおせっかいなのか
  • アメリカは高度な科学力を持つ文明国なのに、なぜ進化論を教えるかどうかでもめたりするのか
  • アメリカは民主主義の先進国のはずなのに、なぜあんな○○っぽい人が大統領になれるのか

に対する答えは、半分ぐらいこの本に書いてあると言っても過言ではありません。 特に、第 3 章の「アメリカのファンダメンタリズム」は、9.11 以降のアメリカを読み解くためには必読といえるでしょう。

 この本を読むと、帝国とか覇権国家とか言って揶揄されるアメリカを動かしているのも、当たり前ですが、夢もあれば悩みもある普通の人々であることがよくわかります。 池内恵氏の「現代アラブの社会思想」が、イスラム原理主義者が実はそれほど素朴な人たちではないということを書いた本だとするなら、この本は、覇権国家アメリカの市民も、実は結構素朴な人たちであるということを書いた本だと言ってもよいかもしれません。

 もちろん、だからと言って、(宗教がテロリズムを免罪しないのと同じように)彼らの罪が免罪されるわけではないでしょう。しかし、彼らを批判するにしても、少なくともこの本に書いてあるぐらいのことを知った上で批判しなければ、その批判の矢が、彼らの心の底まで届くことはないでしょう。そういう意味で、対話による問題解決を信じる人なら、なおのこと、この本の内容ぐらいはおさえておくべきだと思います。

 なお、この本の初版は 1996 年ですが、著者が 2003 年に出した「「ジョージ・ブッシュ」のアタマの中身―アメリカ「超保守派」の世界観」では、この本の問題意識を敷衍して現ブッシュ政権を論じています。題名も装丁も軽薄な本ですが、他のブッシュ本とは一味違う出来になっていて、こちらもお勧めです。

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