時価総額を目標にするということについて
まあ、これはあくまで結果論ですが、ライブドアの「時価総額世界一を目指す」という目標自体が危うさをはらんでいる、ということは言えなくもないと思います。と言っても、「株主だけじゃなくて社会全体に貢献することが大事だ」とか「ステークホルダーは株主だけじゃない」とかいう話ではなくて、仮に、資本市場の役割が、資本の利用効率を最適化することにある、という前提だけに立っても、やはり危ういと言えるというお話です。
というのも、本当に資本効率を表す指標として相応しいのは、ROA とか ROE であって、時価総額というのは、その将来についての予想を時間について積分し、なおかつ、資本規模について積分した値にすぎないのね。ただ、微分値が大きければ、それを積分した値も大きい、という意味では、間接的に資本効率がいいことを示す指標にならないこともないんだけど、微分値が小さくても、積分区間を大きくすれば積分値は大きくできるので、そういう意味では、資本効率がいいための十分条件には決してならないのです。
具体的に言うと、単に時価総額を大きくするだけなら、投資家を騙して、やったらお金を集めただけでもできないことはないのね。でも、ROA や ROE は、ちゃんと事業(金融事業も含めて)で収益を上げなくちゃ高くできないのです。そういう意味で、時価総額だけを目標にするのは、危ういといえば危うい (^^)。
ただ、資本の規模が大きくなれば、ROA や ROE は下がるのが普通なので、ROA や ROE を維持したまま資本の規模を大きくできるのであれば、それはそれでやっぱり偉い、ということは言えるんですね。だから、そう単純ではないんだけど (^^)。
まあ、知ってる人にとっては、説明するまでもない話なんですけど、こういう状況になると、半可通の大雑把な話が流行るので一応書いてみました。よく知らないけどちゃんと厳密に考えたいという人は、このへんのキーワードから調べていくといいんじゃないでしょうか。
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