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「萌える男」と「脱オタクファッションガイド」

萌える男」本田透著

 この本は、一言で言えば、「萌える男」は恋愛資本主義社会の崩壊が必然的に生み出したものであり、萌えは正しい、という主張をあの手この手で述べたもので、その情熱的な口調にはつい引き込まれますが、全体に萌えを正当化しようとするあまりの強引な論法が目立つように思います。

 そもそも、著者は十把一絡げに恋愛資本主義と言っていますが、受験産業と裏口入学が違うように、恋愛や性そのものを商品化することと、その手段を商品化することとは同じではありません。たとえ、受験産業発展のために学歴を持ち上げるような動きがあったり、塾や予備校に金をかければかけるほど合格率が上がるという事実があったとしても、それだけで受験が無意味になったとは言えないように、恋愛の手段がいくら商品化されても、それだけで世の恋愛のすべてが功利主義的になったとは言えないでしょう。著者は、男性が「萌える男」と「萌えない男」に二極分化したと主張していますが、ひょっとすると、恋愛市場からドロップアウトした著者には、その中間の普通の男女の存在が見えていないのではないかと危惧します。

 また本書では、萌えの意義を、1.恋愛資本主義社会から締め出された人々を個人的・精神的に救済する、2.萌えから生み出された思想を恋愛資本主義社会にフィードバックする、という 2 点において評価しているようですが、この両者は必ずしも両立しないはずです。著者は萌えをストライキのようなものだと言っていますが、たとえストライキだったとしても、本人がそれで精神的に自足できるのであれば、それほど社会に影響を与えるとは思えません。そもそも、萌えの対象となる商品だって、市場から供給されているのですから、そういう意味では、「萌える男」だってしっかり資本主義社会に組み込まれているのであって、そんな奴は丁重にほっとかれるだけでしょう。逆に、ストライキのせいで本人が餓死しそうになれば、社会から救済の手がのびるかもしれませんが、その場合、萌えによって個人的救済が果たされるという1の主張には当てはまらないことになります。著者は、このどちらをよしとしているのでしょうか。

 実は、一夫一婦制の崩壊や性の商品化が社会を不安定化するという著者の認識自体は私も共有するところなのですが、「萌える男」がそのような状況に影響を与えうるとすれば、それは、萌えに自閉することよりも、萌えの志を持ったまま現実社会の中で闘うことによってではないでしょうか。もちろん、本書自体をそのような試みとして見ることもできるでしょうが、このような書き方だと、むしろ、より多くの若者を自閉の方向に導いてしまうことが危惧されます。そういう意味では、本書より、「脱オタクファッションガイド」に見られるような「健全オタク路線」の方が評価できると私は思います。

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