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身も蓋もない話

 一連の IT 企業によるテレビ局の買収騒動について、「まず価値観を共有して」とか「もっと相手が喜ぶような提案ができないのか」みたいな意見をよく見ますけど、ぼくは正直、(何度か遠まわしに指摘しましたけど) そんな甘い話ではないんじゃないかなー、と思っています。

 だって、IT 企業とテレビ局は、最終的には広告料のパイを奪い合う関係なのであって、堀江さんがいみじくも漏らしたように、やっぱり、IT 業界は最終的にはテレビを殺してそのパイを奪いたいんだと思います (そういう意味では、堀江さんは正直な人なのだと思う。もっとも、それが戦略的にいいことなのかどうかは知らないけど (^^))。

 たとえば、インターネットにコンテンツを提供するといっても、それが、テレビで放映してから再放送するのか、最初から両方同時に流すのかでは全然意味合いが違いますよね。前者だったら、テレビ界も、(映画産業と同じように) それなりの影響力を維持しながら、ずるずると生きながらえることになるでしょうし、後者だったら、一時的には儲かったとしても、長い目で見れば広告料のシフトを加速することになるでしょう。

 したがって、前者なら通常の業務提携で可能であっても、テレビ界が後者まで許すかどうかはかなり怪しいですよね。でも、IT 業界が本当に求めているのは、たぶん後者なんです。だからこそ、話し合いだけで簡単に価値観を共有することなんてできないし、逆に、ふところがいっしょになって運命共同体になれば、比較的容易に価値観の共有もできるんだと思います。だからこそ、ある程度強引な手段も必要になってくるんでしょう。

 つまり、買収によって相手にも利益を与えるといっても、それは、「これから我々はテレビを殺しますけれども、それに協力すれば、あなただけは助けてあげます」、みたいな話で、いわば関が原の小早川秀昭 (もっといい例があると思うけど思いつかない) みたいな役回りを求めているんだと思うんですよね。だから、いくらがんばっても最終的に西軍は負けると自分で思わない限り、簡単には折れないでしょう。(もっとも、一社裏切れば、たちまち各社追従するでしょうから、いつまで優位性が維持できるかは保証の限りではありませんが (^^))

 ぼくのような第三者のインターネット・ユーザーの利便性から考えれば、早くインターネットで地上波のテレビ番組が観れるようになって、テレビセットの不要な社会になって欲しいわけですから、そういう意味でもつい IT 側を応援してしまうわけです。でも、そんな社会になる必要はないと思う人だっているだろうし、テレビ局の人にだって自分の生活を守る権利はあると思うから、最終的にどのように資本や人材などのリソースを割り振るかは、市場の論理によって決めるしかないと思うんですね。だからぼくも、市場ルールの範囲内での企業防衛は認めるし、そういう意味で、今回の TBS なんかは、過半数の株主を納得させたのだから、それはそれで文句は言えないと思っています。

 ただ、もともと IT 企業はなかなかテレビに進出できないのに、テレビ局はいつでもインターネットに進出できるという不公平があるのだから、企業を買収すること自体が不道徳であるみたいなキャンペーンだけはやめてほしいんだよね (^^)。もう一つ心配なのは、IT 企業にコンテンツを提供すると、取り引きを打ち切るぞとかいって、テレビ局がコンテンツ製作会社に圧力をかけること (^^)。こういうことさえやらなければ、あとはルールの範囲内で正々堂々とぶつかりあえばいいんじゃないかな、と今のところは思っています。

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