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知識人の役割

 知識人や文化人と呼ばれる方々が、一般庶民の無知や頭の悪さにいらだちを見せる、ということがしばしばあります。またこれが、自分は頭がいいと任じる読者の共感を誘うというような効果を発揮することもあり、それはそれで一つの職業技術かとも思うのですが、あまりムキになってこれをやられると、少々見苦しく感じます。

 もともと、知識人とか文化人という言葉自体が、一般庶民より知識がある人たちのことを指す言葉なのですから、知識人と一般庶民との間に知識の差があるのは当たり前なのです。こういうことを言うと、また庶民を馬鹿した発言だと思う人もいるかもしれませんが、人々の知識量に統計的なばらつきがある限り、知識の多い人と少ない人というのは歴然として存在するのですから、統計的な偏差がゼロという超均質集団 (それこそファシズムでもなければ実現できないような) にならない限り、知識人と一般庶民との間の知識の差は決してなくならないというのは、ほとんどトートロジーといってもよいぐらいで、単なる事実を言っているにすぎません。

 つまり、知識人から見れば、一般庶民というのは常に (程度の差こそあれ) バカなのであって、だからこそ知識人という職業も成り立っているわけですから、その事実にあまりムキになるのは滑稽だと思うのです。もちろん、知識人の方々の努力によって、集団の知識量の平均値が上がるということはおおいにありえるし、それこそが知識人の役割だとも思うのですが、それは、知識人と一般庶民の差がなくなるということとは、まったく別の話なわけです。

 これは、政治家などについても言えることであって、民主主義社会において、政治家は市民の代理人にすぎない、というのは一つの理想ではありますが、実際には、政治家と一般庶民との政治意識のギャップが完全になくなることはないと思うのです。

 最近、政治における「宣伝」のあり方が問題になっているようですが、そういう意味で、政治「宣伝」の必要性がまったくなくなることなどあり得ない、と私は思います。

 もちろん、だからと言って、どんな宣伝でもいいというわけではありません。たとえば、まったく事実に反するウソの宣伝はもちろんダメだろうし、いろいろ項目を決めて情報公開を義務付けるとか、タバコの箱みたいに、「一党独裁はファシズムをもたらす危険があります」と書いて、小泉さんのとなりにヒトラーの写真を貼ることを義務付けるとか、金融商品の宣伝みたいに、「小泉政権になると、アジア諸国との関係がなおさら悪化する危険があります」「小泉政権になると、憲法が改悪されて軍国主義国家になる危険があります」「小泉政権になると、弱肉強食の市場原理主義社会になる危険があります」などというふうに潜在的なリスクを箇条書きすることを義務付ける、みたいなことしてもいいかもしれません。でも、そういう努力を重ねれば、「宣伝」的な要素を完全に排除できるかといったら、そんなこともあり得ないと思うのです。

 asahi.com で斉藤美奈子氏が「政治宣伝がなべて「劇場」に近づくのだとすれば、識者と呼ばれる人々の役目は「民主党も自民党に学べ」とあおることではなく『人々よ、宣伝に踊らされるな』と説くことじゃねーの?」とおっしゃっているのですが、そんなわけで、ぼくはこの意見には半分しか賛成できないのです。もちろん、「宣伝に騙されるな」と言うことも必要でしょうが、と同時に、「民主党、もっとうまく宣伝しろよ」と言うこともやっぱり必要なのです。そうやって、現実的な政治力だけではなく、宣伝力でも競い合っていくことにより、それを見る有権者の政治リテラシーも高まっていくはずです。

 思えば、商業広告だって、昔はもっとわざとらしい売り文句だったものが、それこそ糸井さん川崎さん仲畑さんなどの努力により、宣伝の要素を残しつつも、ある種の自己批判を取り入れることによって、ウソくささを消していく、みたいな手法が一般化してきたわけで、そういう意味での表現の洗練が進んでいけば、政治家と有権者との間のギャップはなくならないとしても、平均値としての政治リテラシーは向上して、有権者はより真実に近づきやすくなっていくのではないでしょうか。むしろそういうところに可能性を見出したほうがよいと、私は思います。

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