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ファイナンスのじょーしき

 さっきたまたま WBS を見ていたら、楽天が TBS 株を買うために受けた融資の金利より、TBS 株の配当の方が多いので、楽天は儲かっているという話をしていて、まるでそれが濡れ手に粟のぼろ儲け (というのはちょっと大袈裟だけど(^^)) みたいに説明しているので呆れてしまいました。

 前にも書いたけど、基本的に、融資というのはローリスク・ローリターン、株というのはハイリスク・ハイリターンなファイナンス方法です。まず、楽天は基本的に何があっても融資の金利を払わなくてはなりませんが、TBS 株の配当は TBS の業績によっていかようにも変わりえるわけで、ほとんどなんの保証もないわけです。また、銀行が楽天に融資している金額の額面は、よほどのことがなければ変わりませんが、TBS の株価は毎日のように変動しますから、楽天にはキャピタルロスの危険もあります。さらに、会社が潰れたときも、楽天に融資している銀行は、優先的に債権を回収できますが、TBS 株を持っている楽天の資金は、有限責任ですから、ほとんどすべてぱーになってしまうのです。

 つまり、TBS 株と楽天への融資との間にはリスクの差があって、その間のリスク差を吸収しているのが楽天なのだから、その分プレミアムを受け取るのはむしろ当たり前であって、何の不思議もないのです。でなかったら、銀行からの融資を元に起業するなんてことは、そもそもナンセンスだということになってしまうではないですか。

 もちろん、TBS の配当が高すぎるとか、楽天への融資の金利がリスクと比べても安すぎるという意見はあると思いますけど、リスク差のあるところにプレミアムが発生するということ自体は、ファイナンスの基本原則にすぎないはずで、今さら大騒ぎするようなことじゃないでしょう。

 WBS は経済には強いはずなんだから、あんまりドキッとするようなこと言わないでくださいね~。

 どうも、ファイナンスというものをあまり理解せずにいろいろ言ってる人が多いようなので、ついでに説明しますが、TBS の時価総額は今大体 6000 億円くらいで、そのうち株主資本は 3000 億円くらいですから (ちなみに、楽天の時価総額は 9000 億円ぐらいで、株主資本は 500 億円ぐらいですから、楽天が潰れれば、単純計算では株の価値は 1 割以下になる)、もし TBS がつぶれれば、TBS 株の価値は、最低でも半額になってしまうということになります。つまり、その分の差額が、「人的資本」をはじめとするさまざまな無形の資産の価値だということです。(もちろん、それは現在の市場がそう評価しているというだけで、本当はもっと価値のある可能性もありますが)

 ですから、仮に TBS が乗っ取られたとして、その乗っ取った資本家がヘマをして TBS の人的資本を毀損すれば、彼の持っている株の価値は、約半分になってしまう可能性があるわけで、少なくとも主観的には、彼はわざわざそんなことはしないはずなのです。つまり、現状の資本市場の制度でも、そのような形である程度は人的資本の価値を守るインセンティブが存在しているわけです。

 ここで注意して欲しいのは、このような人的資本を守るインセンティブが機能するのは、資本家が金以外のことも考える「いい人」だからではなくて、むしろ、とことん金にガメツイ人であるからだこそだ、ということです。

 もちろん、私の現在の資本市場にまったく問題がないと言っているわけではありませんが、その多くは、前にも書いたように、市場価値と企業価値の乖離からくるものなので、改善をはかるなら、むしろこの点でありましょう。

 私が一つ考えているのは、今の配当制度をなんとかできないだろうか、ということです。配当というのは、本来、一定期間株を所有するという行為のリスクに比例した額であるべきなのですが、今の制度だと、権利確定日近辺に株を所有していれば配当がもらえてしまうので、これが株価が企業価値と無関係に乱高下する一因になっていると思うのです。

 だから、日垣隆氏も示唆するように、いっそ配当なんぞやめて内部留保一本槍にするというのも一つの手だと思うのですが、私はむしろ、一年間株を所有し続けなければ配当がもらえないとか、配当額を実際に株を所有していた日数に比例した額にするとかしてもよいと思うのです。

 今までそういう制度になっていなかったのは、おそらく、事務手続きがあまりに煩雑で現実的ではないという理由からじゃないかと思うのですが、現在のようにコンピュータ化されれば、必ずしも非現実的とも言えないような気がするのですが。

 もっとも、理論上は、配当によるインカムゲインの変化は、株価によるキャピタルゲインの変化によって相殺されるはずだから、あんまり関係ないはずなんですけどね。でも、実際の市場を見ると、あんまりそうなってるように見えないから(^^)。まあ、このへんは私の勝手な思いつきなので、あまり本気にしないで、話半分で読んでくださいね(^^)。

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