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わかんねえならわかんねえって言え~!

 最近の子、とか言ってひとくくりにするには失礼だとはわかっているが、最近の子と仕事をしていてどうにも我慢ならないのは、実際にはわかっていないことを、なんかわかったフリをしてごまかそうとする子が多い、ということだ。

 たとえば、先日ある翻訳エージェントが原稿を送るのに、「FAX ならすぐ送れますが、どうしますか。」と言ってきたので、「FAX だと画質が悪くて OCR をかけてもエラーが多いので、できたら電子化したものが欲しいのですか。」と返事をした。ところが、送ってきたファイルを見てびっくり。原稿をスキャナでスキャンしたものを、イメージのまま PDF 化して送ってきたのである。さらによくよく見ると、画像のヘッダ部分に日付やファックス番号まで入っている。つまりこの人、もともと FAX で受け取った原稿を、そのままスキャナでスキャンして送ってきたらしいのである。それだったら、そのまま FAX で送ってもいっしょじゃねえか!

 確かに、「電子化」とだけ言って、それ以上具体的な内容を書かなかったという点では、こちらも舌足らずだったかも知れない。しかし、わざわざ「OCR をかけてもエラーが多いので」と書いているのだから、何のために電子化してほしいかはわかるはずである(実は、さらに「失礼ですが御社には OCR の設備はありますか?」とまで念押ししているのである。もちろん、こちらとすれば、いちいし先回りして、「あなたは OCR という言葉をご存知ですか?」などということを聞くわけにもいかないのだ)。

 このことからわかるのは、

  • この人は、翻訳者がなぜ電子化された原稿を望むのかという理由をわかっていない。
  • さらに、OCR という言葉の意味もわかっていない。
  • そのくせ、そういう疑問点を、相手にも周囲にも聞こうとする気がない。

ということである。

 この中で、無知であるということは、実はたいした問題ではない。今のような情報化し多様化した時代に、なんでもかんでも知っているなどということはありえないのだから、誰だってなんかの分野では無知なのである。もっとも、翻訳エージェントにつとめているくせに電子化の意義も OCR という言葉の意味も知らないのはプロとしてどうか、という意見はあるだろうが、ぼくはもともとそのへんには甘いのである。

 ただ、ぼくがどーしても我慢ならないのは、わかってないくせに、なぜ人に聞こうとしないのか、ということだ。もちろん、ぼくに直接聞いてくれたっていいのだが、それが恥ずかしいのなら、周囲の先輩とかに聞いたっていいじゃないか。なぜそんな簡単なことすらせず、てきとーに誤魔化そうとするのか。それで一時的に守られる君のプライドと、周囲にかける迷惑と、どっちが大事なのか。

 こういうことは、他の翻訳者の翻訳をレビューしている際にも感じることがある。やっぱり、わからないのになんとなく誤魔化している人が多いのである。はっきり言うが、レビューする立場からすれば、わからないで誤魔化しているところを発見するより、正直に「ここはわかりませんでした」と書いてあるのを直すほうが、何倍も楽なのである。それぐらいは、下訳をする人だってわかっているはずだ。

 もちろん、プロとして働いている以上、自分の能力のなさをさらけだすようなことをするのはつらい。そのぐらいはぼくだってわかる。でも、仕事というのは、自分だけのためにするもんじゃないのだから、相手にかける迷惑はどっちが大きいのか、ということを考えるのを忘れないでもらいたい。ぼくのようなオヤジだって、毎日恥をかきながらがんばっているんだぞ。恥になるようなことをしても許してもらえるというのは、若者の特権なのだから、もっと恥をかきなさい。

 …てゆーか、君たち自身が思ってるほど、周囲の人は、君が無知かどうかなんて気にしてないと思うよ。ぼくだって、別にわざわざ人のあげあしをとりたいわけでもなんでもなくて、円滑に仕事を進めたいだけなんだから、聞かれれば教えますよ。もちろん、これだって程度問題で、あんまり何も知らなかったら仕事にも影響するだろうけどさ。もともとそんなたいした問題じゃないことを、気にしすぎなんですよ。それがイライラするの。わかった?

(ほんとは、こんなとこにグチみたいに書くよりも、直接相手に言うほうがぼくの性にあっているのだが、そうしたらしたで、つまんなく逆切れされたりするので、そんなんで取り引きを切られたりしてもバカバカしいので、こういうところに陰湿に書いておくことにする。まあ、名前は伏せてあるからいいでしょ。)

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