« 辞書にない英語 | トップページ | はあ? »

ハードウェアとソフトウェア

 ハードウェアとかソフトウェアとかいう言葉は、ぼくが子供の頃は、少なくとも一般庶民とは縁遠い言葉だったのですが、最近では、日常用語として使われるようになってきて、「XX にはハードウェアはあってもソフトがない」みたいな比喩的な使い方もされるようになっていますよね。

 でも、普段はあまり意識させられることはありませんが、この両者の違いというのは、実は程度の差であって、それほど絶対的な区別があるわけではありません。

 たとえば、ソフトウェアとハードウェアの中間的な存在として扱われる「ファームウェア」というものを考えてみましょう。ハードウェアを直接制御するような低水準のプログラムを書いたことのある人ならわかると思いますが、実際にそういうプログラムを書く立場から見ると、ハードウェアとファームウェアというのは、呼び出し手続きが違うだけで、大きな差は感じられません。唯一差を感じるのは、実際にファームウェアを書き換えて焼き直すときだけ、と言っても過言ではないでしょう。

 けれども、最近では、インターネットからファームウェアをダウンロードして更新するということが、一般ユーザーにも可能になってきて、そういう立場から見ると、やっぱりファームウェアはソフトウェアの一種だ、と感じられることも多いでしょう。

 つまり、ソフトウェアとハードウェアの違いというのは、最終的には、物理的な作用ではなく、情報のみの入力によって、容易に変更できるかどうかということになるので、これは、利用できる「変更の手段」によって変わってくるわけです。

 昔、星新一さんのショート・ショートの中に描かれていた未来都市に、ちょっと面白い技術が出てました(あくまで小ネタですけど)。その都市では、各家庭に流体材料を送り届けるパイプラインがひかれていて、そのパイプラインから流れてきた材料を、これまた各家庭に設置された万能工作機械で加工すると、どんな製品でもできてしまうので、手間をかけて完成品を輸送する必要がないというのです。

(これが星さん独自のアイデアなのか、他に先例があるのかはわかりません。ぼくの知る限りでは、他の作品にでてきた憶えはないのですが。)

 このような技術は、必ずしも夢物語ではなくて、たとえば、現在の機械加工の現場では、NC 旋盤とかマシニング・センタとか呼ばれる機械が利用されるようになってきています。このような機械を使うと、プログラムや数値データを入力するだけで、材料の加工ができてしまうので、加工品がソフトウェアなのかハードウェアなのか、だいぶあいまいになってきます。

 すでに、音楽とかグラフィック・デザインとかが、コンピュータ上でソフトウェアを操作するだけで作れるようになっているのは、もはや常識でしょうが、機械加工の分野でも、CAD ソフトで設計したデータをそのままこのような工作機械に入力できるようになってきているので、だんだん、それと同じような感じになってきているわけです。

 IC の生産なんかもそうで、設計は Verilog などの一種のプログラミング言語を使って行い、そのデータを工場に持っていけば、ロボットが勝手に注文どおりの IC を作ってくれるというふうになってきていますよね。

 まあ、星新一さんの描いたような世界が、5 年 10 年のスパンで実現するとはさすがに思いませんが、家庭用超小型 NC 旋盤とかマシニングセンタみたいなものができたら、料理を家庭で作るのが当たり前なように、あるいは、本棚などを家庭で組み立てるのが当たり前なように、もっといろんなものを家庭で作るのが当たり前になるかもしれませんよね。そうなれば、デザインという「ソフトウェア」だけを売るという産業も当然成立するでしょうし。こういうのを一つの未来像として考えてみるのも面白いかもしれません。

|

« 辞書にない英語 | トップページ | はあ? »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/67762/5976561

この記事へのトラックバック一覧です: ハードウェアとソフトウェア:

« 辞書にない英語 | トップページ | はあ? »