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いんちきトライアル

 暴露ついでにもう一つ、翻訳のいわゆるトライアルに関係して、最近あった出来事を暴露してしまおう。

 トライアルというのは、翻訳者の能力を試すために、対象となる文書の一部だけを試訳することなのだが、最近ある翻訳エージェントからトライアルの依頼を受けた。どうやら、そのエージェント自体がクライアントからトライアルを要求されたらしく、それをそのままこっちに回してきたらしい。そして、このトライアルに合格すれば、こっちにもたくさん(○万ワードの)仕事をまわせるとかいう。しかし、先約があって、とてもそんな大量の仕事は引き受けられそうになかったので、断ろうとすると、トライアルだけでいいからやってくれ、と言い出した。

 しかし、トライアルというのは、翻訳者の質を確認するためにやるのだから、仮にフリーランスにアウトソースするにしても、トライアルと実際の翻訳は、同じ人間がやるのでなければ筋が通らない。そのエージェントにそう言うと、仕事は大量にあるから、どうせ一人の翻訳者ではこなしきれない。だから、できる分だけでいいからやってくれ、とかなんとかいう返事。結局、それ以上強く断るのも面倒になって、トライアルの訳を送ったが、結局、その後の仕事とやらは来なかった。

 ぼくの想像では、どうも、このエージェントは、トライアルだけ単価は高いが能力の高い翻訳者(自分のことです。ごめんなさい(^^))に依頼し、実際の仕事は安かろう悪かろうの二流の翻訳者に依頼することによって、コストを削減しているらしいのである。

 翻訳者の質に関する情報は、供給側だけが持っていて、需要側にはわかりにくい。つまり、翻訳市場には、情報の非対称性がある。したがって、初級のミクロ経済学の教科書にあるような、アカロフの「レモン市場」とか「グレシャムの法則」みたいなことが起こりやすく、一物一価で価格競争をしてしまっては、悪貨が良貨を駆逐することになってしまう。翻訳業界にいる人は、ここのところをもっとよく考えるべきであろう。

 だから、同業者のみなさん。そういう仕事は、決して引き受けないようにしましょうね。少なくとも、ぼくは二度と受けません。はい。

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