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TS にして AGF (Anti-Gender-Free)

 面白い HP を見つけました。神名龍子さんという、MTF (Male-To-Female) の TS (Transsexual) でありながらアンチ・ジェンダー・フリー論者であるという方の HP

 意外に思う人もいるかもしれませんが、本人もおっしゃっているように、論理的に考えればちっともおかしくないんですよね。だって、TS っていうのは、男性でも女性でもないものになりたい、とか思っているわけじゃなくて、はっきりと女性になりたい、という欲望を持っているわけだし、女装とかをしたがることを考えれば、その性というのは、明らかにフィジカルな性よりもむしろジェンダーなわけです。だから、ジェンダーがなくなってしまったら、彼らの欲望の対象自体が消滅してしまうことになるわけですよね。

 この人の主張はぼくとすごく似てて、たとえば、

 このことから「男女平等」というのは一般に、「あらゆる意味で男女が同じであるべきだ」という意味ではなく、「ある分野においては同じであるべきだが同じでなくてもよい分野もある」と考えられていることがわかる。ほとんどの人は、「男女平等」をそういう意味で理解していて、だからしぐさの違いを「男女不平等」だとは思わない(男女が同じであるべきだと思わない)のである。

 では、私達はどういう分野において「男女は同じであるべきだ」と考えているのだろうか。これは大雑把にいえば「経済の領域」と「政治の領域」についてである。これを人間同士の関係という側面で見れば、経済の領域は「契約によって成立する関係」であり、政治の領域は「ルールによって成立する関係」である。これは近代社会に共通するルールであって、このルールがなかったら近代社会とはいえない。

(中略)

 しかし「平等」というのはそういう意味ではなくて、「違い(差異)があるにも関わらず」平等であるという事が要点である。例えば西欧であれば、カトリックであってもプロテスタントであっても市民(国民)として同等の権利を持つ。人種が違っても同等、性別が違っても同等。だが、江原の(つまりラジカルフェミニズムの)主張を敷衍するならば、差別をなくすためには、性差の否定だけではなく、人間は宗教的にも、人種としても統一されなくてはならないということになる。これは、とても「危険な思想」になるのだ。

(以上、「でたらめてジェンダーフリー」より)

 また、人間は自分の「あり得る」の大部分を、既に存在しているモデルを参考にして思い描く。だが、それを「自分らしさ」の放棄とは考える必要はない。そうでなければ、自分のあらゆる「あり得る」を、すべて自分で完全なオリジナルとして創出しなければならないという話になってしまう。そうしたい人はそれでもよいが、ほとんど何もできない内に人生を終えるだろう。たとえば、火を起こすことを考えてみよう。火を起こすにも、先例を参照することなしに、その方法を考えつくのは、大変な困難が伴う。そして、このような困難が、生活のありとあらゆる場面に伴うものだとしたら、「自分らしさ」どころか、事実上、人間らしい暮らしが不可能になることは明らかである。

 つまり、自分が何かをしようと思ったら、既存のモデルの中から良さそうなものを選ぶというのは、効率がよくて合理的な方法なのだ。そして私達は、長い歴史の中で多くの人々がさまざまなモデルを蓄積してきた。もちろんその中には、時代遅れで使えなくなったものもある。しかし私達が、多様なモデルの蓄積の恩恵に預かって生きているということは、疑い得ない事実である。そして多くの場合、私達はそのことを、誰かに支配されているとか抑圧されているとは感じない。むしろ私達は、過去の幾多のモデルを活用することによって、内容豊かな生を送ることを可能にしているのである。

(「『自分らしさ』とジェンダー」より)

 私の考えを総論的に述べれば、ジェンダーは決してなくなることはない。ジェンダーがなくならないということは、一定以上の男女がジェンダーを維持し続けるということである。ただし、ジェンダーの中身は時代と共に変化する。これはフェミニストやジェンダーフリー論者が何も言わなくても(また、そういう人たちが存在しなくても)、必ず変化する。これは言語と同じこと。古典と現代文を見比べればわかる通り、言語というのは、改革論者がいなくても、日本語なら日本語という基本骨格を残しつつ、しかし固定不可能なものとして変化する。

(「ジェンダーフリーは性差否定である」より)

というあたりは、ぼくが前にこのブログで書いた主張とほとんど同じ。もっとも、神名さんの文章の方がはるかにうまくて説得力があるのは言うまでもありません(^^)。

 この人、そのへんの三流フェミニストよりも(もちろん、単に頭が固いだけの保守派よりも)はるかに性について深く考えていると思うので、性の問題に興味のある人はぜひ読んでみませう。

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