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おもしろくて、ためになる

仁義なき英国タブロイド伝説」山本浩著

 題名の通り、イギリスのタブロイド紙事情について書かれた本です。筆致は基本的にクールで、ときどき皮肉なツッコミは入るものの、大上段に振りかぶったジャーナリズム論などはほとんどなく、淡々と事実を記したという感じ。でも、その事実自体が、イギリスのタブロイド紙事情に詳さほど詳しくない私のような者にとっては滅法面白くて、あっと言う間に読み終えてしまいました。もちろん、私もタブロイド紙の悪名についてはいろいろと聞きかじってはいたのですが、このように真正面から取り組んだ和書は、あまりなかったような気がします。

 王室潜入ルポ、ダイアナ妃をめぐる報道合戦、ベッカム夫人ビクトリアの誘拐未遂報道、ブレアとメディア王ルパート・マードックの微妙な関係、ブレア政権のスポークスマンとして辣腕をふるったアレスター・キャンベルの権勢と転落の物語、そして、イラク戦争をめぐる報道合戦と誤報騒ぎなど、硬軟織り交ぜたネタは、ゴシップ的な興味で読んでももちろん面白いし、ジャーナリズムやイギリスの文化について真面目に考えたい人にも、興味深い材料を提供してくれるでしょう。中ほどに挿入されている「タブロイド小史」の登場人物も、実に傑物ぞろいで楽しめます。

 特に印象的だったのは、ある保守系のタブロイド紙が、警察の人種差別捜査を批判するキャンペーンを張ったときのエピソードです。その新聞は、「真犯人」を名指しで記事にするなど、かなりアンフェアすれすれのことをやりながら、ついに政府や警察を動かして、責任者に謝罪させたということです。つまり、イギリスの読者には、タブロイド紙に対するシニカルな態度があるので、タブロイド紙はかえって自由な取材活動ができ、そのおかげで、ときに大きな成果を挙げることができる、という逆説があるようなのです。もちろん、それを全面的に肯定できるかどうかは微妙な問題ですが、ジャーナリズムと読者の関係を考える上で面白い材料を提供してくれているのは確かでしょう。

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