« Server Down | トップページ | 坂本龍一登場 »

お金は大事だよ

 お金というのは不思議なもので、ほとんどの人がお金を欲しがっているのは間違いないのですが、その一方で、金目当てで行動する人が蔑まれたり、金銭欲がなくて質素な生活をしている人が尊敬されたりします。つまり、人間は明らかにお金に対してアンビバレンツな感情を持っています。これはなぜなのでしょう。

 そもそも、人がお金を払うのは、自分にとって価値のある財やサービスを得るためですから、お金というのが何らかの価値を体現しているのは間違いないわけです。ところが、その価値の元になる価値観は、人によって違うし、同じ人の中でも、場合によって違っています。だから、ノーベルさんみたいに、ダイナマイトを作って儲けたお金を世界平和のために使ったりすることもできるわけです。

 つまり、お金というのは、人間にとってある種の価値を体現しているものであると同時に、ある種没価値的でもある(むしろ汎価値的と言った方がいいのかもしれませんが)わけで、これが、多くの人がお金に対してアンビバレンツな感情を抱く理由なのだと思います。

 けれども、実はこれこそがまさにお金の強みでもあって、この没価値性が価値観の変換装置として働くことにより、異なる価値観や技術を持つ人たちが、互いに協力し合うことが可能になっているのです。特に、近代民主主義の掲げる「自由」という価値は、市場とお金がなければ、絵に描いた餅でしかなくなることでしょう。

 前にも紹介しましたが、「帰って来たウルトラマン」の中に「怪獣使いと少年」という伝説的なエピソードがあります。その中で、村八分にされている少年がパン屋に門前払いを喰うのですが、後からパン屋の娘がパンを持って追いかけてきます。 そこで少年が「同情なんてしてもらいたくないな」と言うと、「同情なんかしてないわ。売ってあげるだけよ。だってうちパン屋だもん」 と答える有名なシーンがありますが、これなんかも、市場と自由の関係を象徴的に示しているシーンだと思います。

 そのように考えれば、社会の総生産が増えるということは、人間にとってなんらかの意味で価値のある財やサービスが増えるということとイコールなのですから、基本的にはよいことだというしかありません。もちろん、囚人のジレンマによる市場の失敗などが示すように、個々人にとっての効用の増加が社会全体の不効用の増加に結びつびついてしまうとか、一部の人の利益が他の人の不利益に結びつくとかいうこともありますが、すべての交換が正当な等価交換になっていないというシステムの問題なのであって、お金自体が本質的に悪いものだからではありません。

 したがって、そういうシステムの欠陥をすべて除去してもなお、お金が「悪いこと」に使われるとすれば、それは、そういうお金の使い方をする人間の価値観の方が間違っているのだというしかないはずです。もっとも、世の中の大多数の人が価値があると思っているものを、誰がどういう権利で間違っていると言えるのか、というのはかなり難しい問題ですが(^^)。

 金儲けに汲々とする人が蔑まれてきたのも、その中に必ずしも社会全体の富を豊かにしないような人や、一部の人に不当に不利益を与える人が含まれていたからでしょう。しかし、繰り返しますが、それはシステムの問題であって、市場経済のシステムというのは、もともと、自分が豊かになりたいという欲望をインセンティブにして社会全体を豊かにするするという戦略なのですから、金を儲けたいと思うこと自体を責めるのは、矛盾しているというしかありません。

 たとえば、たくさんお金を稼いで、自分に必要な分だけ残して全部寄付をするという人と、最初から自分に必要な分しか稼がないで質素な生活をするという人の、どちらが社会により貢献しているかと言ったら、明らかに前者です。(特に、日本のように累進課税の国ならなおさらです。)

 実は、ぼく自身はどちらかというと後者で、自分さえ喰っていければ、それ以上無理して稼ぐより、好きなことして気楽に暮らしたほうがいいやと思ってしまうタイプなんです。だからこそ、自分に対する戒めもこめて、自分一人では使い切れないくらいたくさんお金をかせぎ、たくさん財やサービスを生産し、たくさん税金を払ってくれている人たちに対する尊敬の気持ちを忘れたくないと思うのです。

 こんなに豊かな社会なのに、それ以上豊かな生活を求めてどうする、みたいな意見もありますが、現在、豊かさを求めなくていいと思えるほど豊かなのは、まだまだ日本を含めた先進国の一部でしかありません。したがって、そんなに豊かなのがいやなら、質素な生活などせず、金を稼ぎまくった上で、余分な金を全部最貧国に寄付なり投資なりすりゃいいのです。もちろん、ぼくだってそんなことできないけど(^^)、理屈の上ではそういうことになるはずです。

 そういうわけで、豊かさの追求をやめるのは、少なくとも、南北格差がなくなってからでも遅くないと思うのです。斎藤貴男さん風に言うなら、「そのせいで最貧国の人がより豊かになる可能性がなくなるんだったら、質素な生活なんてしたかないですよ。」と言ったところか。ちょっと挑発的すぎますかね(^^)。もちろん、最終的には個人の自由ではありますが、まっとうにお金を稼いでる人は、もっと社会的に評価されていいと思うのです。

 そして、そのようにして生産された財やサービスがくだらないものばかりであるとすれば、それは、生産する側よりも、むしろ、消費する側の責任なのであって、そのような消費文化の貧困を解消するためにこそ、山崎正和さんや糸井重里さんの言うような、「消費のクリエイティブ」が考えられなければならないと思うのです。ちょっと強引なまとめですが(^^)。

|

« Server Down | トップページ | 坂本龍一登場 »

社会」カテゴリの記事

経済」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/67762/4406365

この記事へのトラックバック一覧です: お金は大事だよ:

« Server Down | トップページ | 坂本龍一登場 »