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尼崎の事故について本当に知りたいこと

 尼崎の事故報道については、第一報からちょっと嫌な感じがしていて、このブログでも軽く苦言を呈しておいたのですが、その後ますます変な方向へ行っているような気がします。特に、運転手2人が救助に参加しなかったという件と、ボウリング大会の件についてはいろいろと疑問があります。

 まず、前者については、その時点での救助の状況はどのようになっていたのか、運転手が手伝えるような作業があったのか、その作業は通常の職務を放棄しても行うべき緊急性のあるものだったか、その運転手が救助に参加した場合に代わりに運転を代行するバックアップ要員はいたのか、バックアップ要員に切り替えた場合通常業務に支障は生じなかったのか、ぐらいの情報がないと論じられないと思うのですが、このへんについては、マスコミの報道を見てもさっぱりわかりません。

 また、後者についても、現実的に問題なのは、事故対策用の待機要員は十分に確保されていたのかということのはずですが、これもよくわからない。そのくせ、ボウリングの後に二次会に行ったとかいうことはみょーに細かく調べていたりします。

 確かに、こういう事例だって、組織の体質を示す傍証にはなるかもしれませんが、あくまで傍証にすぎないのですから、その取材には一定の節度が合ってしかるべきで、節度のない取材は、正直、ただの揚げ足取りにしか感じられません。

 また、事故原因については、そんなことより他に知りたいことがたくさんあるのですが、いっこうに伝わってこないように思います。たとえば、ダイヤが過密だというなら、ダイヤ変更の事故発生率への影響の見積もりは行われたのか、その見積もり方法は正しかったのか、見積もりの結果はどうだったのか、その結果に合わせてどんな対策がとられたのか、というようなことも知りたいし、最近化学プラントなどで一般化していると言われる、FMEA とか HAZOP とか FTA とか ETA とかの安全管理手法は使われていなかったのか、使われていたとすれば、その運用に問題はなかったか、というようなことも知りたいのです。(まあ、こういう情報は一般受けしないので、業界の人しか読まないような専門誌に掲載されて終わりなのかもしれませんが。)

(ちなみに、時刻の正確さと安全をトレードオフのように言うのは間違いだと思います。確かに、他の条件をすべて同一と仮定すれば、トレードオフの要素もあるでしょうが、それは他の条件を変更すればカバーできるはずですし、この両者はおそらく、リニアな関係ではないはずですから、リスクをあまり増やさずに精度を高めることのできるバランスのよいポイントというものがあるはずです。)

 少なくとも、このぐらいの情報がないと、本当に問題外のどうしようもない組織だったのか、それとも、多少のミスにいろんな不運が重なったのか、あるいは、その中間か、ということは判断できないと思うのです。もちろん、安全対策になんらかの問題があったには違いないんでしょうが。

 被害者や遺族の方がお怒りになられるのはもちろん当然としても、マスコミまでが、感情的な印象操作を繰り返して、そういう冷静な事故究明が行われないうちに、JR 西日本に悪者イメージをべったり貼り付けようとしているのはいかがなものか。あるいは、ちらっと映ったけど、取材記者のまるで総会屋みたいな偉そうな態度はいかがなものか。もっと重要な事実に焦点をしぼって、冷静に淡々と報道してほしいと思うのは私だけでしょうか。

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