職業に貴賎はないって、教わらなかった?
どうして、「M&A 業者」というのを、あからさまに蔑みの目で見る人が多いのか、今ひとつ理解できないんですけど、合理的な理由がないんだったら、これも一種の職業差別ですよねえ(^^)。
前にも書いたけど、M&A って、社会的になんら価値を生み出さない虚業でもないし、ただ金さえあれば誰にでもできるような、濡れ手に粟の大儲けでもないですよ。市場が過小評価している企業の隠された価値を発見するとか、企業同士を組み合わせることによって新たな価値を生み出すとかするのだって、いろんな「技術」が必要だし、それは、基本的には社会全体を豊かにする行為でもあるのです。
それでなかったら、金のある奴はみな M&A しまくってるはずですし、やった奴はみな成功して大儲けしてるはずですが、別にアメリカだってそんなことにはなってないですよね。資本があっても M&A をしない会社はいくらでもありますし、やって失敗する会社もたくさんある。
かつてアメリカで M&A が流行ったのは、企業価値を評価する方法論が未発達で、市場で過小評価されている企業が多かったことや、独占に対する規制が甘かったので、買収により容易に独占利益が得られたりしたことが理由にあると言われています(ちなみに、コングロマリットというのは、水平統合でも垂直統合でもない、異業種同士が集まった企業集団を指す言葉で、トラストみたいな独占指向の企業集団とは区別して使われます。これも勘違いしている人がいるようですが)。
でもそれは、他の商売だって同じ事であって、ダイエーの中内さんだって、松下幸之助さんだって、紀伊国屋文左衛門さんだって、みんな今から見れば当たり前みたいなことで大儲けしているわけで、そういう先駆者が大儲けするのを見て、みんながマネする。みんながマネすると、だんだんうまみがなくなって当たり前になる。という過程の繰り返しによって、ビジネスの世界は進歩してきたわけですから。
それでも、こういう仕事に価値がないと言い張るのであれば、隠れた天然資源を発見するような仕事とか、骨董品の中から掘り出し物を見つけたり、中古品をリニューアルして売り出したりという仕事には、どうして価値があると言えるのか。あるいは、そういう人は、お百姓さんは自分でお米を育ててるから偉いけど、漁師さんは自分で勝手に育った魚をとってるだけだからダメだ、みたいなことを言うのか。そんなこと言うなら、お米だって、実際に育ててるのは太陽であって、お百姓さんは太陽さんが一生懸命育てたお米を横取りしているだけだ、みたいなことだって言えるじゃないか(^^)。
もちろん、世の中には、何の価値も生み出さない M&A とか、かえって、世の中に害を与える M&A とかもあると思いますよ。でも、そんなのはどんな職業に対しても言えることなんだから、 M&A 業者という職業自体に対する評価とは分けて考えないとね(^^)。
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