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「金で買えないもの」はあるか

 まず、そもそもマーケットを設定することができないもの、つまり、法律とか倫理の面から、売買することの許されていないものがありますね。人身売買とか、売春とか。また、そもそも所有権自体が設定できないものも売買できないわけだけど、何に所有権を設定できるかというもの、結局、社会の合意によって決まるわけだから、ある種の倫理の問題だと言えます。

 たとえば、よく「人の心は金で買えない」と言うけれど、サービス業なんかでは、心のこもってないサービスより心のこもっているサービスの方が高く評価されますし、支払われる対価も一般に後者の方が多いですよね。つまり、サービス業のとっては、ある意味、心を金で売ることの方が美徳とされているわけです。だから、これはあくまで社会倫理の問題なんです。

(企業買収なんかでもそうで、株式を公開するということは、「どうぞうちの会社を金で買ってください」と言っているのと同じことなんですね。だから、公開企業の従業員は、「だれが株主になっても、その株主の利益のために働きます」という倫理観を持つことが前提とされているし、だからこそ、金を集めやすくなるとか、そういういろんな恩恵も受けられる。そうでなければ、客を選ぶ店とかと同じになってしまうわけで、それだったらわざわざ公開したり上場したりしないで、プライベート・カンパニーでやればいいじゃない? ということになってしまうわけです。(岩井さんの言うような、「法人資本主義的」な会社についてもちょっと異論があるのですが、それはまたいずれ。))

 つまり、「金で買えないもの」以前に、「金で売り買いすべきではないもの」というのがあるわけ。

 では、それ以外の「金で売り買いしてよいもの」は何でも買えるのか、というと、これも必ずしもそうではない。なぜかというと、たとえマーケットがあったとしても、実際に売買するかどうかは、所有者の自由だからです。

 特に、天然資源や大量生産品のように、誰から買っても大差ないものなら、特定の人が売りたくないと思っても、マーケット全体を探せば、誰か売ってくれる人が見つかる可能性が高いと言えますが、商品一つ一つに個別性のあるような芸術品とかになると、話は違ってきます。こういうものは、理論的にはマーケットが存在するといえますが、実際には、その所有者以外に売り手はいないわけだから、その人が合意しなければ買うことはできません。

 そういう意味では、「金で売り買いしてよいもの」の中にも、現実問題としては「金で買えないもの」も存在すると言えます。

 あ、これはあくまで一般論で、誰かを批判したいとかそういう意図はありませんので、念のため。(^^)

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