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日本語は進化する…かな?

日本語は進化する」加賀野井秀一

 この本は、前半と後半ではかなり出来が違うように思います。

 本書の前半では、標準語や言文一致体の成立の過程を、歴史的な資料をふんだんに使って実証的に示していて、こっちが無知なせいもあるんでしょうけど、極めて面白かったです。

 標準語成立以前の国語分裂状態も、正直、この本を読んではじめて具体的なイメージが沸きましたし、言文一致体というのが、単に口語体で文章を書いたというような安易な話ではなく、話し言葉と書き言葉のイイトコドリをしようという苦労の末に生まれたものである、という事実も初めて知りました。また、当時の翻訳者は、日本語を豊かにするために、あえて直訳体で翻訳をしていた、と言う話も、翻訳を業とする者としては考えさせられるものがありました。

 ところが、後半の、日本語の外国語と比べての特性とか、将来の進化の方向性を論じる段になると、強引な論法が増えてきて、加速度的につまらなくなっていきます。

 たとえば、「蠱惑的」な日本語という話は、言霊理論をちょっとひねっただけとしか思えないし、現代の若者批判の部分は、それこそ陳腐な「クリシェ」そのもので、生理的な嫌悪感という以上の説明になっていないし、日本語と英語の論理性を比較している部分は、英語の例文が恣意的で、副詞や前置詞を挿入すればもっとわかりやすくなるはずと思ってしまうし、女性言葉の話は、欧米のフェミニストに比べて議論のレベルが低いとか言うわりには、自分の主張は情意表現を残しつつニュートラルにする、というような折衷案みたいなものでしかないし…。

 唯一素直に納得したのは、敬語が、上下関係を示すものから、距離感を示すものになるという話ですが、これだって橋本治氏をはじめ多くの人が言っていることだし、英語の敬意表現を見ればだいたい想像がつくことです。

 そんなわけで、正直、前半だけでやめときゃいいのに、と思いましたが、少なくとも前半は滅法面白かったので、星4つにします。

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